『天獄と地国』小林泰三の名作短編が長編となってかえってきた
頭上に地面、足下に星空が広がる世界。人々は僅かな資源を分け合い村に暮らしていた。村に住めない者たちは「空賊(パイレーツ)」となり村々から資源を掠め取るか、空賊の取りこぼしを目当てに彷徨う「落ち穂拾い」になるしかない。世界の果てにもっと人間の暮らしやすい別天地があると確信した、落ち穂拾い四人組のリーダー・カムロギは、多くの敵と生き残りを賭けた戦いを繰り返し、楽園をめざす旅を続ける――。傑作短篇の長篇化完全版!天地が逆転した困窮の宇宙空間における生き残りを賭けた戦いと冒険を描く長篇宇宙SF。
Amazon商品ページより
小林泰三さんの『海を見る人』に収録されていた同名作品を長編化した本書。
本書は設定が先行して制作されていて、短編ではとても収まらないほどの膨大な設定を有していました。
そのため、長編化にあたって無理をして設定を加えたわけではないため、一切の違和感なく読むことができます。
短編時にはなかった広がりや密度が加わり、短編で気に入ったという人にもオススメの一冊です。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
世界観
この世界は天井が生活の拠点であり、天井にへばりつくようにして生活しています。
物語の途中でこれは重力ではなく、遠心力が働いていることが原因であることが判明します。
そう、この世界は巨大な円筒の外側に作られているのです。
特徴は他にもあり、資源が極端に乏しいという点です。
水な酸素も貴重であり、水であれば尿を清浄化して永久的に使わなければならないほど少ないです。
そのためシャワーを浴びるなどありえなく、誰もが垢だらけ。
他の資源も乏しいため、本書では『落穂拾い』という人たちが登場して、彼らは落ちている資源を拾うことでなんとか生きているような、ギリギリの生活を送っていました。
地国
カムロギたちは落穂拾いとして生活をしていました。
仲間の一人にカリティという女性がいて、彼女は地国と呼ばれる伝説を信じていました。
落穂拾いは生活が保証されていない苦しい生き方であり、良い場所を見付ければ当然定住も視野に入ってきます。
しかし、カリティは地国を探すことが第一目的になっていて、仲間の中でも異質な存在でした。
カリティにはかつて娘がいて、今も地国で生きていると信じていました。
選択
旅の中で仲間が失われていき、カムロギはカリティの遺志をついで地国を目指すことを決めます。
その中で、カムロギは巨大なドックに組み込まれた巨大なメカを見付けます。
それは爬虫類にも昆虫にも、そして巨人にも見えます。
後に邪神などと呼ばれる存在で、この世界には三機あるといわれていました。
カムロギが見つけたのはその四機目にあたり、世界のパワーバランスが大きく崩れることになります。
感想
壮大な物語
短編の時点では物語の壮大さを想像させるものの、その大きさがいまいちピンときませんでした。
しかし、長編化されたことで、本書の持つスケールがSFの中でも極めて壮大であることが分かりました。
そして、伝説の地国を探したり、巨大なロボットのようなもので戦ったり、ロマンにも溢れています。
短編時にはなかった魅力が追加されて、それが元々の世界観を壊すことなく融合しているので、一つの作品として十分成立するだけの完成度を有しています。
何でもあり
SFということで、作品の根底には様々な設定があり、現代科学でも理解できるような解説がなされています。
一方で、科学で説明しているとはいえ、はっきり言ってなんでもありです。
特に邪神が登場して以降はその傾向が強く、どうやっても死なないのでは?と思うほどご都合主義的な設定が提示されます。
まあ、邪神という作り方も目的もよく分からない超兵器が登場した時点で、この設定にはそこまで驚きませんでした。
本書は緻密な部分を楽しむというよりも、これらの大雑把な部分も受け入れてただ派手さを楽しむ方が良いのではと感じました。
結末の評価
本書の結末について、賛否両論が出ています。
僕は小林さんの作品に対してあまりハッピーエンドを期待していないので、ありえるだろうなというのが正直なところです。
ただ、それでも結末は何を示しているのか、そこに対して読者はどう捉えればいいのか、その辺りが曖昧だったため、僕としては良いとも悪いともいえないです。
楽園を探して本当の楽園に巡り会えることの方が少ないので、この結末で良かったかなと今では思っています。
おわりに
名作としての魅力をそのままに長編化してくれたので、その辺りはさすが小林さんです。
『海を見る人』を既読の方は重複して買ってしまったと思うかもしれませんが、短編とは別物に仕上がっているので、安心してお楽しみください。
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