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『スワロウテイル序章/人工処女受胎』あらすじとネタバレ感想!シリーズ第三弾は前日譚となる連作中編集

男女別の自治区で性別の違う人間と共に暮らす人工妖精たち。その一体である揚羽は、全寮制の看護学園で同室の連理や義妹の雪柳らと学園生活を謳歌していた。人間に害をなす人工妖精を密かに殺処分する“青色機関”の一員という裏の顔を持つ揚羽は、学園内の連続事件に死んだはずの科学者・不言志津江の陰謀を見出す。それは揚羽の人生に今後降りかかる過酷な運命の予兆でもあった。人気シリーズの前日譚たる連作中篇集。

「BOOK」データベースより

シリーズ第三弾にして前日譚となる本書。

前の話はこちら。

連作中編ということで、それなりのボリュームのエピソードが独立して存在し、やがて絡み合うような構成になっています。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

蝶と果実とアフターノエルのポインセチア

全寮制の扶桑看護学園。

敷地全体を俯瞰すると五角形に見えることから、『五稜郭』とも呼ばれています。

峨東一族によって創立されたここは格式高く伝統のある学園で、二年で純粋培養された温室育ちのお嬢様を社会に戻すことで定評がありました。

人工妖精である揚羽は五稜郭で学生生活を送る傍ら、青色機関としてルールから逸脱した人工妖精を排除する仕事をしていました。

この頃、揚羽は首を切っても死なない人工妖精を三人も相手にし、しかも相手は全員五稜郭の生徒でした。

人工妖精を狂わせた原因は五稜郭にあるのではと考える揚羽。

五稜郭創立を主導したのは不言という一族で、風気質(マカライト)を発見した不言志津江もここに所属します。

揚羽はこの一件をきっかけに、ことあるごとに不言志津江の影を見つけることになります。

蝶と金貨とビフォアレントの雪割草

揚羽は人工生命倫理委員会(人倫)から依頼を受けます。

それは、壱輪という風気質の人工妖精が治療のために入院していた工房を抜け出して五稜郭に入ったため、見つけてほしいというものでした。

ヒントとなるのは、人倫から受け取った紙に書かれた謎の符号。

揚羽には理解できませんでしたが、彼女が学園で面倒を見る後輩で義妹(エル・フロ)の雪柳は、謎の符号が地図であることを見抜きます。

さらに図書館では揚羽の金色の左目にだけ見える情報があり、壱輪について調べます。

すると出てきたのは、空蝉計画と呼ばれるものと、またしても不言志津江でした。

蝶と夕桜とラウダーテのセミラミス

人工妖精が殺人に手を染める事件が三件も立て続けに起き、しかも加害者は別の人工妖精によってみな始末されていました。

問題は加害者を始末する人工妖精の方で、これは組み込まれている倫理三原則を破ったことに他なりません。

揚羽はその人工妖精を探すことにしますが、問題はそれだけではありませんでした。

五稜郭では学園祭において、今年度の代表生徒を決めるNF(ノーブル・フローレンス)選挙が行われますが、なんと揚羽が候補者になってしまったのです。

一見、何の関係もない二つの事柄ですが、揚羽はNF選挙を通じて問題の人工妖精と対峙することとなります。

蝶と鉄の華と聖体拝受のハイドレインジア

突然、学生証と区民証を失効させられてしまった揚羽。

つまり、彼女は学校にも自治区にも存在しないことになります。

行くあてのない揚羽は逃げるようにして町をさまよいますが、ある日、東京自治総督の意思を伝えるメッセンジャーと会います。

世間では五稜郭の卒業生が自殺する事件が連続し、揚羽は自分がしたことに責任を感じていました。

また揚羽は自分の置かれた状況を理解し、その上でわずかな猶予をもらいます。

揚羽はこの時間を使って事件に関係する黒の五等級を探すことにしますが、そこには一連の出来事の黒幕が隠れていました。

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感想

設定の理解がより深まる

揚羽は通常の人工妖精ではありえない五等級で、妹の真白は世界で二人目となる一等級。

なぜ双子の個体なのに、評価がここまで正反対なのか。

そういったことも含めて、揚羽がどのようにして第一巻の状況になったのかが分かる内容になっています。

鏡子や連理などシリーズでお馴染みのキャラクターが登場し、揚羽がどのようにして学生生活を謳歌し、その日々に別れを告げたのかが描かれています。

連作中編ということで、一つ一つがそれなりのボリュームで収まっているので、これまでのシリーズと比べると冗長な文章は減り、かなり読みやすいと思います。

前日譚とは思えないハードさ

『揚羽の人生に今後降りかかる過酷な運命の予兆であった』

そんな風に本書は説明されていますが、予兆と呼ぶには過酷すぎる出来事が揚羽を襲います。

あまりに理不尽すぎるし、それでも真っすぐ生きようとする揚羽の健気さに胸を撃たれました。

本書を読んでから再び一巻を読み直すと、これまでとは違った発見ができそうなので、時間を見つけて挑戦してみたいと思います。

おわりに

前日譚というとおまけ要素が強いイメージでしたが、本書はシリーズを語る上で欠かせない一冊だと断言できます。

シリーズの順番通りに読むのもよし。

前日譚から一巻に戻って読むのも面白いので、個人のお好みで選ぶのも良いでしょう。

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