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『すみせごの贄』あらすじとネタバレ感想!比嘉姉妹シリーズ第七弾かつ短編集第三弾

harutoautumn
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本物の“贄”は誰かーーいきなり文庫の比嘉姉妹シリーズ短編集第3弾!

怖いのにおもしろい! 大人気比嘉姉妹シリーズ、短編集第3弾!

Amazon商品ページより

比嘉姉妹シリーズ第七弾となる本書。

前の話はこちら。

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短編集ということで読みやすいのはもちろんですが、どれも読みやすさに反して読み応え抜群です。

どれも違った見どころ、怖さがあるので、シリーズを通して読んできた人であれば楽しめること間違いありません。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

たなわれしょうき

稲葉翔太は中学生になって同級生にいじめられるようになり、不登校になっていました。

父親は不登校を許し、彼が外の世界の面白さに気が付けるよう、色々な所に連れていきます。

その一つが職場である蒼龍書房で、そこで翔太をライターである野崎に紹介します。

野崎は『たなわれしょうき』の習俗を調べるために滋賀県に出張しようというところでした。

稲葉は翔太を同行させてほしいと依頼し、野崎はそれを了承。

こうして二人はたなわれしょうきを調べるために滋賀に向かうわけですが、そこで二人は恐ろしいものを目にします。

戸栗魅姫の仕事

戸栗魅姫はYouTubeで占い、霊視による助言に関する動画をあげていて、それなりに知名度がありました。

そんな彼女は現在、今里珠美という小学生の少女と、旅館で迷子になっていました。

旅館から出ることもできなければ、自分の部屋に戻ることもできない。

このままでは旅館の中で息絶えることは免れません。

不安の中進んでいくと、フリーライターの鈴木華子と出会い、三人は脱出するべく先に進みます。

それでも先が見えない中で、華子はこの現象の驚くべき正体を口にします。

火曜夕方の客

真琴が勤務するバーで、新高円寺で間借りカレーを経営している幾原が不思議な体験を話します。

彼のお店にはある時から、酷く瘦せた女性が来るようになりました。

女性は買ったカレーを食べると、持ち帰りでもう一人前購入して、帰っていきます。

ここまでは普通の話ですが、女性はそれから毎週火曜の夕方にお店を訪れ、いつも同じものを注文するようになります。

ある日、女性が気になった幾原は後を追いかけ、彼女を見失った先に墓地があることを知ります。

こうして不思議で怖い体験をした幾原ですが、このことが世間に知れ渡るようになり、それが厄介ごとの引き金になります。

くろがねのわざ

一九九三年に公開された『惑乱の夏~愛、ほとばしる頃~』は、低予算ながら多くの人の心を掴み、今でも語り継がれる名作となりました。

ところが、谷村は仕事で知り合った厚田、峰がこの映画を酷評していることを知ります。

その原因は、鉄成男という特殊メイクなどを手掛ける男性にありました。

鉄は世界的に見ても引けを取らない腕の持ち主で、特撮業界には熱烈なファンが数多くいました。

その鉄がさきほどの映画に関わっていますが、その仕事が彼のプロ魂に反するものとして、ファンから反感を買っていたのでした。

谷村はこの件について詳しく調べることにしますが、そこでこの件に関わる恐怖があることを知ります。

とこよだけ

冒頭の描写から、野崎は真琴、ライターの築井と共に床代島(とこしろじま)に来ていることが分かります。

八〇年代に完全な無人島になり、それから数年して怪談のような噂が流れるようになりました。

野崎たちは、その怪談を目当てに島を訪れたわけですが、どういうわけか体調不良になってしまいます。

それでも調査を続ける一行ですが、恐怖はすでに始まっていました。

すみせごの贄

料理教室を営む羽仁孝夫が亡くなります。

娘の鈴菜が彼の後を引き継ぐには足りない部分もあり、急遽、料理研究家の辻村ゆかりを招き、料理教室を開きます。

生徒は三人。

三人のゆかりに対する反応は様々ですが、彼女の料理の腕を知ってからは和やかな空気が流れます。

しかし、その空気は続かず、話は孝夫のことになります。

感想

親しみやすさが怖い

本書に限らず、澤村さんの作品はリーダビリティが異常に高く、読者は気が付くと作品に惹きつけられています。

はじめは読者フレンドリーな仕様かと思っていましたが、もしかしたらこれもホラー的な狙いなのでは?と思うようになりました。

物語に心を委ねているので、無防備でむき出しです。

そこにソフトタッチで恐怖が訪れると、あまりに突然のことに反応できず、最高の恐怖が生まれます。

親しみやすい文章が、逆に怖い。

そんな感覚を覚えました。

新たな一面

本書はシリーズを通して登場する野崎や真琴、琴子が出てきますが、新たな一面を見ることが出来ます。

特に琴子はイメージとのギャップがある一面が見られ、本人の他を寄せ付けないオーラとは裏腹に、親近感を持つようになりました。

またシリーズで数多く登場する彼女も出てきますが、この人も良い味を出しています。

魅力的な人物が多いことで、誰がメインを張っても、澤村さんのホラー的な魅力を最大限に発揮してくれます。

本書では、その魅力が円熟してきたことが感じられ、安心して最後まで楽しむことができました。

おわりに

ここまで多大なる期待を背負って、それに応えてしまう本シリーズはもう流石の一言です。

このままの路線でいくもよし。

あるいは、何か転機となるような事件が起こるもよし。

どんな展開でも楽しめること間違いなしなので、引き続き安心して追いかけたいと思います。

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