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『最後の医者は桜を見上げて君を想う』あらすじとネタバレ感想!患者と向き合う医師が織りなす医療ドラマ

harutoautumn
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あなたの余命は半年です―ある病院で、医者・桐子は患者にそう告げた。死神と呼ばれる彼は、「死」を受け入れ、残りの日々を大切に生きる道もあると説く。だが、副医院長・福原は奇跡を信じ最後まで「生」を諦めない。対立する二人が限られた時間の中で挑む戦いの結末とは?究極の選択を前に、患者たちは何を決断できるのか?それぞれの生き様を通して描かれる、眩いほどの人生の光。息を呑む衝撃と感動の医療ドラマ誕生!

「BOOK」データベースより

医療系小説は鉄板のネタの一つですが、本書はその中でも群を抜いてエンタメ性に優れています。

医師を目指して共に青春を駆け抜けた三人の医師が今では別々の方向を向いていて、何人もの患者の生と死に向き合う中で医師としての本質を見つけていくというものです。

一応映像化企画も進行しているようですが、発表されてからずいぶん新しい情報が出ていないので、そのあたりが気になっていたりします。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

三人の医師

物語の舞台は、地域の基幹病院である武蔵野七十字病院。

ここには、特に話題となっている二人の医師がいます。

一人は天才外科医の福原雅和で、若くして父親の経営するこの病院の副院長にまで上り詰めています。

どんな病気でも最善を尽くして奇跡を起こすことに心血を注ぎ、そのカリスマ性から多くの医師の信頼を獲得してきました。

もう一人は、皮膚科の桐子修司。

彼は患者には死を選ぶ権利があるという考えがあり、自分の受け持ちでない患者と面談することもしばしば。

それによって治療方針を変えた患者は多く、死神と呼ばれています。

行動が問題視されると予備倉庫を第二医局としてあてがわれ、厄介者扱いされていますが、当の本人は全く気にしていません。

そんな正反対の二人をフォローするのが、二人の学生時代の友人である内科医・音山晴夫ですが、彼の努力も虚しく、福原も桐子も別々の道を歩んでいました。

患者と向き合う

そんな状況で、三人は多くの患者を己の理念に従って診察します。

時にぶつかり合い、時にうまくいかなくて悔しい思いをすることもあります。

音山が仲裁することで良い方向に共に向かっていける兆しが出ますが、それは三人の医師としてのスタンスを揺るがす大きな出来事に繋がってしまいます。

感想

溢れ出る感動

医療を題材にした場合、避けて通れないのが人の死です。

生き物であれば生まれたらいつか必ず死ぬわけで、いくら病気を治す医師であってもこの大原則を覆すことはできません。

エンタメ系で死が扱われる場合、どうしてもここが感動ポイントです、というような押しつけがましい描写を見かけることがしばしばあり、それによって興ざめしてしまうことも少なくありません。

しかし、本書においてそんな不自然な部分はなく、主に三人の医師がそれぞれの信念に基づいて戦い、時に敗北から学んでより大きな姿に成長する姿が見られます。

三人のキャラクター、闘病生活の現実、そこから辿り着く答え。

このあたりがとてもバランス良く合わさっていて、著者である二宮敦人さんの力量を知ることができました。

理想の医師の形は一つじゃない

本書では様々な医師の形が提示されます。

死は敗北であり、医師が率先して徹底的に抗って奇跡を起こしてみせるという医師。

死はいつか訪れるものであり、残された時間を人間らしく生きる選択肢を与える医師。

患者と共に悩み、迷いながらも寄り添って背中を押してあげる医師。

どれが正解とは描かれていないし、時と場合によって正解は異なります。

たとえ圧倒的な技術、情熱を持っていたとしても、時に理想が現実に敗北してしまうこともあります。

では、理想の医師とは何なのか。

この究極の問いに対して、三人が常に追い求める姿は尊く、読んでいて気持ちの良いものがありました。

三人の可能性

上記で書いたように、理想の医師の姿というものは、本当はないのかもしれません。

しかし、この三人や他の医師が一つの目標に向かって一緒に歩み始めた時、これほどに心強いものはありません。

昨今、医療はチームで行うという考えが浸透していて、それは決して医師だけというわけではありません。

看護師、技士、薬剤師、栄養士など様々なプロフェッショナルが揃っていて、それぞれにしかできないことがあります。

もちろん理念は人それぞれなので足並みを揃えることは簡単ではありませんが、その先にこそ誰もが望む未来が待っている。

そんな予感を本書は描いていて、悲しみや苦しみがありつつも、さわやかな光が差し込むような読了感は他ではなかなか味わえないと思います。

おわりに

医療というオーソドックスな題材をベースにしつつも、本書にしかない魅力がふんだんに詰め込まれています。

普段、あまり読書の習慣のない人でも読みやすい構成になっていますので、ぜひ一人でも多くの人に挑戦してみてほしいと思います。

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