『さまよう刃』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!
長峰の一人娘・絵摩の死体が荒川から発見された。花火大会の帰りに、未成年の少年グループによって蹂躪された末の遺棄だった。謎の密告電話によって犯人を知った長峰は、突き動かされるように娘の復讐に乗り出した。犯人の一人を殺害し、さらに逃走する父親を、警察とマスコミが追う。正義とは何か。誰が犯人を裁くのか。世論を巻き込み、事件は予想外の結末を迎える―。重く哀しいテーマに挑んだ、心を揺さぶる傑作長編。
「BOOK」データベースより
少年犯罪とその裁きについて書かれた本書。
終始目を逸らしたくなるような光景を見せつけられ、子どもを持たない人でも現行の法律、そして正義とは何かについて考えさせられると思います。
正直、僕は自分の子どもをこんな目に合わせられたとしたら、犯人を目の前にして自制できる自信がありません。
正しいかどうかの問題ではなく、そうしたいと思ってしまうでしょう。
また本書は2009年に映画化されていますが、12年ぶりとなる2021年にドラマ化もされます。
主人公の長峰役を演じる竹野内豊さんは2009年の映画の時に長峰を追う刑事役を演じていて、同じ作品を原作にした同名作品で違う役を演じることから話題になっています。
ドラマの公式サイトはこちら。
この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
卑劣な犯行
長峰重樹は早くに妻を亡くし、男手一つで娘の絵摩を育て、彼女は今年、高校生になりました。
絵摩は友達と花火大会に行き、長峰は彼女の帰りを待ちますが、一向に帰って来ません。
絵摩の友達に連絡をとっても行方は分からず、長峰は警察に通報。誘拐も視野に捜索が始まります。
本書では同時に、彼女の身に何があったのかが描かれます。
菅野快児、伴崎敦也、中井誠は花火大会帰りの若い女性を狙っていて、標的となったのが絵摩でした。
彼らは彼女を車に連れ込み、クロロホルムで意識を失わせると、一人暮らしの敦也の部屋に連れ込みます。
そしてクスリを注射し、言葉にできない卑劣な方法で絵摩を凌辱、しかもそのシーンを録画していました。
誠は嫌々付き合わされていましたが、父親の車を返す必要ができたため先に帰り、クスリ以降のことは知りません。
翌日、絵摩が行方不明だというニュースが流れると同時に、敦也から車を貸すよう言われます。
それから少しして、絵摩の死体が荒川から見つかり、誠はようやくあの二人が絵摩を誤って殺害してしまったことを確信します。
警察は死体の状況から、クスリの扱いになれていない少年の犯行であることを確信していました。
そして犯行に使われた車の目撃情報からある程度特定します。
その後、誠の父親は息子が事件に関与していたことを知り、警察に通報。誠に口裏を合わせるよう指示し、車を貸したことを認めつつも、自分も脅されていたと証言しました。
復讐
最愛の娘を亡くし、失意に暮れる長峰。
そんな彼の元に、絵摩を殺害した犯人が快児と敦也であると密告する匿名の電話が届きます。
これは後で判明しますが、電話の主は刑事の久塚です。
彼は警察署に届いた誠からの情報を得て、以後は自分のプリペイド携帯に電話させ、その情報を長峰に流していたのでした。
長峰は疑いつつも、指定された住所に行くと、そこには本当に敦也が一人暮らしするアパートがありました。
さらに電話の主は鍵が郵便受けの裏に隠されていることも教えてくれていて、長峰は敦也が留守の間に不法侵入します。
部屋にはいくつものビデオテープがあり、そのうちの一つを再生すると、そこには二人の男に凌辱される正気を失った絵摩の姿が映っていました。
ベッドの下には花火大会の日、絵摩が着ていた浴衣が隠されていて、密告の内容が正しいことを長峰は確信。
殺してやりたいという怒りに駆られ、帰ってきた敦也をまずは脅し、快児が長野のペンションにいることを聞き出します。
それからナイフで刺し殺し、男性器も切り取ります。
それで気持ちが晴れることはありませんでしたが、長峰は復讐をやめません。
やがて警察は敦也殺害事件の捜査を始め、絵摩をレイプしたのが彼らであることを突き止めます。
さらに他の映像には元のテープとダビング用がありましたが、絵摩のものだけダビング用がなくなっていることに気が付きます。
確認しようと長峰のところを訪れますが、彼はすでに旅支度を終えて姿を消していました。
さらに長峰は趣味で以前に猟銃を取り扱っていましたが、その猟銃も一緒になくなっていました。
攪乱
長峰は警察宛てに手紙を送ります。
そこには単独犯であり、復讐を終えたら自首するから邪魔しないでほしいということが書かれていました。
消印は愛知県になっています。
警察は手紙の内容ではなく、消印に注目しています。
長峰は快児の潜伏場所を知っていて、わざと違う都道府県から手紙を出したのでは?
これが全国放送で流れれば、快児は居場所がバレていないと安心し、そこを離れない可能性が高くなります。
警察は消印について公表せず、快児の母親などから彼の居場所を聞きますが、誰も心当たりがなく捜査は行き詰ります。
意外な協力者
一方、長峰は長野にある『クレセント』というペンションに泊まり、そこを拠点にして手当たり次第にペンションを探し歩きます。
もちろん、偽名を使って変装もしています。
ところが、宿主の娘である丹沢和佳子は宿泊客が長峰であることに気が付きます。
最初は疑いでしたが、後に彼の宿泊する部屋に無断で入り、絵摩の映るビデオテープを見たことで確信に至ります。
警察に通報しなければと思うものの、彼女は自分の不注意から愛する息子を失っていて、長峰の気持ちが痛いほどよく分かりました。
そこで和佳子は、自分が長峰の正体に気が付いていることを彼に伝えた上で、快児を探す手伝いをさせてほしいと申し出ます。
長峰はその熱意に負け、彼女の所有するマンションに一室に匿ってもらい、今度はそこを拠点にして快児を探します。
もう一人の被害者遺族
本書では長峰の他に、被害者遺族として鮎村という男性が登場します。
彼の娘の千秋は絵摩と同様、快児たちに辱められ、それを苦にして自殺していました。
鮎村は娘の無念を思うと、怒りで気が狂いそうでした。
そんな時、週刊アイズという雑誌の記者から話を持ち掛けられ、インタビューに応じます。
記者は誠にも接触し、プライバシーを守ると約束した上で記事にしますが、それは仮名を使っただけで、知っている人が読めば誰でも分かる内容でした。
鮎村は抗議しますが、記者はそれには取り合わず、協力してほしいとある話を持ちかけます。
それは、被害者遺族としてのテレビ出演でした。
鮎村は自分の他に取材した人間を紹介してもらうことを条件に出演します。
しかし、その番組はあくまで決められた台本の中だけで進行するものであり、鮎村の訴えなど誰にも届きません。
それでも鮎村は記者から誠の情報を入手。
誠の動向を追うことで、事件の核心に近づきます。
一方、誠のもとに快児から電話が入り、目的は情報収集でした。
後に警察に快児と連絡をとっていたことがバレ、誠は警察の監視下に置かれます。
警察からは、快児が長野のペンションに潜伏していると教えられますが、この時点ではどこのことかピンときませんでした。
ところが後になって、快児が長野で偶然見つけた潰れたペンションのことを思い出します。
誠はそのことを伝えようと思いますが、警察に言うと自分も共犯だと思われる可能性がある。
そこで前回の密告と同様、教えられた携帯番号にこの情報を流し、それを受け取った刑事の久塚が長峰に情報を流しました。
潜伏先
長峰がクレセントに宿泊していたことが警察の知るところとなり、大勢のマスコミが押し寄せます。
捕まるのも時間の問題です。
しかし、長峰は密告をもとに、潰れたペンションを視野に入れて調査を開始します。
同時期、警察は快児たちのレイプ映像を確認していたところ、あることに気が付きます。
映像は基本的に敦也の部屋で撮影されていましたが、中には違う部屋もあり、映像からその部屋は信州にあることが分かります
さらに装飾品、電気が通っていないことから現在使われていないペンションであることに気が付き、そこを重点的に捜査します。
すると、両者は同じタイミングで高峰高原にある廃ペンションに目をつけそこに向かいますが、先に着いたのは警察でした。
しかし、ペンションにいたのはユウカという少女でした。彼女は逃亡中の快児と一緒に生活していたのです。
ユウカは警察の取り調べに黙秘を貫きますが、刑事の一人が思い出します。
彼女は、このペンションで快児たちにレイプされていた少女でした。
ユウカは快児にその時の映像をバラまくと脅されてここまで連れてこられましたが、暴力を振るわれなかったことから彼の言うことに大人しく従っていたのでした。
ユウカのもとに快児から連絡がきますが、彼女は警察が追っていることを伝え、快児がペンションに戻ってくることはありませんでした。
一方、長峰と和佳子の行動は、彼女の父親・隆明にはお見通しでした。
隆明は和佳子が共犯者になることを恐れて警察に通報しませんが、長峰に自首をすすめます。
長峰も警察がいる状況で復讐を果たすことはできず、ここでの復讐を諦めて和佳子とも別れます。
ラストチャンス
誠のもとに、快児から連絡がきます。金の無心でした。
誠は警察の指示で金があると嘘をつき、上野駅で待ち合わせることにします。
鮎村は誠の家を張っていて、警察車両を追いかけて上野に向かいます。
その頃、思うところがあった和佳子は長峰と再会。
長峰のもとにはまたしても密告者から電話があり、上野駅に快児が現れること、これがラストチャンスであることが告げられます。
和佳子は自首をすすめ、長峰もそれに了承。荷物をとってくると席を外しますが、和佳子が気が付いた時には長峰はいなくなっていました。
もう彼を止める手段は他になく、和佳子は警察に通報し、長峰が快児を狙っていることを打ち明けます。
時間になると、誠の前に快児が現れます。
快児は金を受け取ろうとしますが、そこに今度は包丁を持った鮎村が現れます。
鮎村は快児に切りかかりますが、彼はそれを躱し、はめられたことに気が付いて逃げ出します。
途中で快児は近くにいた少女を人質にとり、周囲を威嚇します。
その様子を見ていた長峰は、快児が救いようのない男であることを再確認し、猟銃を構えて大衆の前に姿を現します。
警察は発砲されないよう慎重に説得しますが、長峰にその声は届きません。
重苦しい空気の中、快児は恐怖から逃げ出し、長峰は猟銃に手をかけます。
その時、和佳子が彼の名前を呼び、少しだけ長峰の動きが止まります。
この瞬間が命取りになり、刑事の織部が先に発砲、銃弾は長峰の背中に当たり、彼は亡くなるのでした。
結末
事件後、織部は発砲の責任をとって部署異動、さらに班長だった久塚は警察を退職しました。
警察は密告者について調べていました。
最初は誠だと思っていましたが、上野駅に関する情報が密告された時、誠は警察と一緒でそんなことはできません。
そうすると残るは警察関係者となり、ようやく久塚だったことが判明します。
彼は過去の事件から被害者遺族の無念を誰よりも理解していて、長峰の復讐に加担したのです。
それが正解とはいえませんが、だからといって被害者遺族に法律で決まっているから我慢しろ、というのも納得いきません。
結局、一生をかけて向き合うしかない問題であることを再確認するのでした。
おわりに
非常に重く悲しいテーマを、東野さんは見事に書き切りました。
気軽な読書に向く本でないことは確かですが、読み終わった後に、読者の心に考えさせる何かを与えてくれる作品であることは確かです。
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