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『桜の森の満開の下』あらすじとネタバレ感想!坂口安吾の代表作

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昭和初期に活躍した「無頼派」の代表的作家である坂口安吾の小説。初出は「肉体」[1947(昭和22)年]。通る人々が皆「気が変になる」鈴鹿峠の桜の森。その秘密を探ろうとする荒ぶる山賊は、ある日美しい女と出会い無理やり妻とする。しかし、それが恐ろしくも哀しい顛末の始まりだった。奥野建男から「生涯に数少なくしか創造し得ぬ作品の一つ」と激賞された、安吾の代表的小説作品。

Amazon商品ページより

本書を読むきっかけになったのは、森見登美彦さんの『新釈 走れメロス 他四篇』を読んだことです。

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そこで本書の森見さんによる解釈、再構築された作品が収録されていて、ぜひ原作も読みたいと思い挑戦してみました。

桜という日本人に馴染み深い花が、人を狂わせる恐ろしいものだと思われていた時代のことを描いた作品で、美しさと怖さの紙一重なところが自分にはしっくりきました。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

江戸時代より昔は、桜の花の下は怖いと思われていて、決して絶景などとは誰も思いませんでした。

昔、鈴鹿峠は桜の森の花の下を通らなければならない道があり、旅人を狂わせることからいつしか誰も通らないまま取り残されていました。

その数年後、その山に一人の山賊が住み始め、通りすがりの人の着物をはいでは命を奪っていました。

それから十数年経ち、男は通りすがりの夫婦を襲い、夫は殺害して妻を八人目の女房として迎え入れますが、その女の美しすぎる様に男は気持ちが乱れていきます。

女は昔の女房を殺すよう男にいい、男は片足が不自由な女房以外全員殺害し、それからハッとします。

女の美しさに吸い寄せられながらも不安な気持ちは、桜の森の満開の下を通る時に似ていると。

その後も女のワガママは続き、男は女の欲しがるものを全て用意し、やがて三人は都に移り住みます。

男は女の命令で指定させた家の住人を殺害すると、その首を女に渡します。

女は首遊びが好きで、必要な首があれば男に命令して手に入れさせるなど、もはや正気とは思えません。

そんな暮らしが続く中で、男は人がたくさん暮らす都での生活に退屈し、女の欲望にキリがないことにも退屈していました。

やがて男は山へ帰ることを決意。

そのことを女に伝えると、女も男について山へ帰るといいます。

男は新たな希望に満たされ、片足の不自由な女を都に残して山に帰ります。

男は女をおんぶして山を登る中、満開の桜の下を通り、ふと女の手が冷たくなっていることに気が付きます。

男の背中にしがみついているのは全身が紫色の顔の大きな、鬼のような老婆でした。

必死に抵抗して鬼の首を絞めますが、気が付くと男は女の首を絞めていて、女は息絶えていました。

男ははじめて泣き、女の姿は消え、降りつもった花びらだけがありました。

男はその花びらを掻き分けようとしますが、その手も身体も消え、最後に残ったのは花びらと、冷たい虚空が張りつめるばかりでした。

感想

妖しい美しさ

桜といえば春の訪れを教えてくれる日本人にとって特別な花ですが、一方で死体が埋まっているなど何らかの秘密が桜の木の下に埋まっているというエピソードもよく聞きますので、本書はまさに後者に焦点を当てた話になります。

途中までは桜ではなく、女こそが恐ろしい存在だと思い、最後の二人一緒に山に帰るシーンは感動的でした。

もちろん女には打算があるわけですが、男が幸福なのであれば問題ないのではないか、というのが個人的な意見です。

ところが、晴れ晴れした気持ちで桜の森の満開の下を通ることでやはり狂わされ、忘れていた桜の恐ろしい一面が披露される。

短い文章の中で、現実と幻想が綺麗に入り乱れ、この終わり方は素晴らしいの一言です。

『新釈 走れメロス 他四篇』との違い

森見登美彦さんの描く『桜の森の満開の下』との違いについて、ちょっとだけ言及します。

男が女に惚れ、彼女の言う通りにすることで新たな世界を知り、一緒に都(東京)に移り住む。

そこでも女のワガママはキリがなく、やがて充実した生活の中に退屈、虚しさを感じ、元の生活に戻る。

この辺りの設定は共通していて、改めて両者を比べると森見さんの作品がしっかり原作を踏襲していることが分かります。

一方で、男女の結末の違いに味わい深さを感じました。

違いこそありますが、どちらも美しく幻想的で、原作を知っていると森見さんの『桜の森の満開の下』が何倍にも楽しめます。

おわりに

桜の美しさと怖さを語りつつも、終盤になるまでそれを忘れさせて最後に持ってくる。

非常に鮮やかで、幻想的な美しさと恐怖を味わうことが出来ました。

これから桜の木の下を通る時、なるべく一人で通ろうかな、とちょっとだけ考えたりもしました。

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