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『竜が最後に帰る場所』あらすじとネタバレ感想!日常と幻想の境界を往還する短編集

harutoautumn
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しんと静まった真夜中を旅する怪しい集団。降りしきる雪の中、その集団に加わったぼくは、過去と現在を取り換えることになった―(「夜行の冬」)。古く湿った漁村から大都市の片隅、古代の南の島へと予想外の展開を繰り広げながら飛翔する五つの物語。日常と幻想の境界を往還し続ける鬼才による最重要短編集。

「BOOK」データベースより

垣川光太郎さんの短編小説で、五つの短編によって構成されています。

現実が舞台の話や時代・世界の違いを思わせる話など一見、統一性のない物語の集まりに思えますが、どの物語にも一般常識では理解できない不思議が描かれています。

楽しいのか、面白いのか、悲しいのか、怖いのか。

読んで沸き起こる感情に名前をつけるのは難しいですが、その世界観にたちまちのうちに引き込まれてしまうことだけは間違いありません。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

風を放つ

田村は学生時代、アルバイト先の印刷会社で社員の高尾英治と出会います。

心を許せる相手のいない田村にとって唯一の話し相手で、アルバイトを辞めた後も交流は続きました。

ある日、高尾の携帯から電話がかかってきますが、相手はマミという高尾のガールフレンドでした。

マミは田村を飲みに誘いますが、高尾に悪いと考えた田村はこのことを高尾に報告。

後日、マミからお怒りの電話がきますが、彼女は奇妙な話を始めます。

マミは風を閉じ込めた小瓶を持っていて、それによって恨んだ相手を殺せるのだといいます。

田村は本気で信じたわけではありませんが、この話はいつまでも彼の心に残り続け、やがて時が経って心境に変化が訪れます。

迷走のオルネラ

クニミツが十歳の時、母親は宗岡というデザイナーの男を連れてきます。

交通事故によって夫とは死別していて、母親の恋人ということになります。

宗岡は普段は温厚ですが、何か気に入らないことがあると人が変わったようにクニミツや母親に暴力をふるい、母親が何度別れてほしいといっても聞き入れません。

宗岡と出会って一年後、宗岡と母親の間に口論が起きて、宗岡は母親を包丁で刺し殺します。

この件で宗岡は逮捕され、クニミツは引き取ってくれた伯父夫妻から宗岡は死刑になったと聞かされます。

クニミツはそれを信じて疑いませんでしたが、中学二年生の時にそれが嘘であることが判明。

宗岡は懲役二十年を課せられていて、それが終われば何もなかったかのように社会復帰します。

無念のうちに亡くなった母親のことを思うと理不尽に対する憎しみが沸き起こり、クニミツは宗岡に復讐することを誓います。

序盤にオルネラ、マスター・ヴラフなどファンタジーに登場しそうな人物の名前が並び、クニミツの描写との繋がりがよく分からないと思いますが、後半になると思いがけない形でリンクするように構成されています。

夜行の冬

個人的に一番おすすめの作品。

タイトルは夜行(やぎょう)と読みます。

ぼくは少年時代の冬の真夜中、町はずれの闇の中をシャン、と鳴る鈴の音や人の話し声を聞いたことがあります。

祖母からそれは『夜行様』だと教えられ、夜行様の歩く夜は外に出てはいけないといわれていました。

ぼくはその教えを守ってきましたが、二十七歳の時にこの町に戻り、再び夜行様のやって来る音を聞きます。

音の正体を確かめるべく外に出ると、そこには真っ赤なコートと赤い帽子を被った異様な雰囲気の女と、そのガイトに従って歩く複数の人たちがいました。

女は何も答えてくれず、ぼくはそれに従う人たちに話を聞いて少しずつ夜行様について理解します。

一行は冬の間だけ通れる道を朝まで歩き、次の町にたどり着きますが、そこは昨日までとは違う世界です。

歩く誰もが今とは違う世界を求めて夜行様についていき、ぼくもまた何かを求めて夜な夜な次の町に向かいます。

鸚鵡幻想曲

宏は電子ピアノを買った日、アサノという青年に声を掛けられます。

何かの勧誘かと思いきや、アサノの目的は宏の買った電子ピアノそのものにありました。

アサノは擬装集合体なるものが見えるのだといいます。

この世界には本物に紛れて何かが本物のように擬装したものが存在して、アサノはそれを見極める力を持っていました。

郵便ポストに偽装した無数のナナホシテントウなどがその例で、宏の購入した電子ピアノもまた偽装集合体なのだといいます。

宏は半信半疑ながらもアサノを自宅に招き入れますが、そこではじめてアサノの本当の目的を知ります。

ゴロンド

ゴロンドという池に住む謎の生き物を題材にした物語。

彼や彼の仲間は生まれてすぐは弱い存在でしたが、成長すると池を出て地上で暮らすようになりました。

そこで同族を見つけ、シンという翼の生えた巨獣の治めるコロニーで生活するようになります。

シンはゴロンドにゴロンドという名前を与え、ゴロンドは知性の高まりと共に言葉を覚えます。

やがて翼が生えると、ゴロンド含めた九人の同族はシンのもとを巣立ち、それぞれの場所に向かいます。

その場所は『竜が最後に帰る場所』と呼ばれていました。

ゴロンドたちはどんな存在で、そこに向かうのか。

短編集を締めくくるにふさわしい壮大な内容になっています。

感想

ファンタジー色の強い短編集

短編集というと分かりやすくジャンル、テーマが決められ、その中で様々なテイストの作品があるというイメージでしたが、本書は一見、あまりまとまりがないように感じました。

しかし、読み進めると時代・世界観の設定に多少の違いこそあれど、どれも理解の及ばない不思議なものを扱っていることが分かります。

本書の内容紹介では『日常と幻想の境界を往還』という表現を使っています。

『迷走のオルネラ』はまさにこの表現がぴったりな内容で、読んでいて日常と幻想の境界があいまいになっていくのを感じました。

不思議な余韻

本書を読んで得られる感情は、一言で表現するのはかなり困難です。

恐怖、不気味さを感じさせるものが多いですが、最後の『ゴロンド』ではどこか懐かしい気分にしてもらい、短編集として感情のベクトルがあらゆる方向に向いていることが分かります。

読み終わると、日常と幻想の境界が曖昧な世界から抜け出した感覚がはっきりと感じられ、この没入感はまさに恒川作品だと納得いきました。

おわりに

どういった人に薦めればいいのか。

読み終わった後もはっきりしませんが、ただ一つだけ、読んで損はさせない作品です。

特に恒川作品に通ずる没入感に読書の喜びを見出した人であれば、読む以外の選択はあり得ません。

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