北村薫『六の宮の姫君』あらすじとネタバレ感想!卒論で芥川龍之介を追いかけたシリーズ第四弾
最終学年を迎えた〈私〉は、卒論のテーマ「芥川龍之介」を掘り下げていくかたわら、出版社で初めてのアルバイトを経験する。その縁あって、図らずも文壇の長老から芥川の謎めいた言葉を聞くことに。王朝物の短編「六の宮の姫君」に寄せられた言辞を巡って、円紫師匠の教えを乞いつつ、浩瀚な書物を旅する〈私〉なりの探偵行が始まった。
Amazon商品紹介より
確か『米澤屋書店』で紹介されていて、手に取った気がします。

読み始めて本書がシリーズの第四弾であることを知りがっかりしましたが、すぐに途中からでも気にならないほど面白いことに驚きました。
日常を舞台とした探偵と、芥川の作品に対する緻密な考察。
それが主人公である私の成長に繋がっていて、平成初期の作品ならではの雰囲気というか、懐かしさも含めて楽しむことができました。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
アルバイト
大学四年生の私は、近世文学の加茂先生からアルバイトを紹介されます。
アルバイト先はみさき書房というところで、私は興味があったからだけでなく、加茂先生の推薦ということも後押しになってこの申し出を受けることにします。
編集の天城をはじめ、みさき書房の面々は私を受け入れてくれ、はじめてのアルバイトを始めます。
卒論
私は卒論で芥川龍之介を取り上げる予定でした。
今回のアルバイトでは田崎先生の全集を出版するための手伝いが含まれていて、彼は生前の芥川と会ったことがあるのだといいます。
さらに国会図書館などで入手が難しい作品をコピーすることが仕事に入っていて、私はアルバイトを通じて様々な作品に触れます。
これが私の卒論に関係することはもちろんのこと、知的好奇心を刺激することになります。
六の宮の姫君
田崎と話す機会があり、そこで『六の宮の姫君』という作品名があがります。
タイトルにある通り、王朝物で、芥川が執筆しました。
そして彼は『六の宮の姫君』に対して『玉突き』や『キャッチボール』という言葉を使います。
当時、一般的でない『キャッチボール』が何を意味するのか。
『羅生門』や『鼻』と同じく、『今昔物語』が素材となっているので、私は元があって新しいものが出来上がったことを『玉突き』と表現したのではないかと推理しますが、それであれば今更改まって口にしたことに疑問が出ます。
この謎が次第に膨らみ、芥川の真意を明らかにするために私の奮闘が始まります。
感想
愛しい日常
僕が本書を読んで一番感じたことは、私の日常が愛おしいということです。
大学生活を残り一年として、アルバイトすらしたこともない恵まれた環境にいます。
私は甘えられる環境にいることを理解しつつも、のんびりとその時間を享受しています。
ところが、知的好奇心に火がつくと普段のマイペースさは姿を消し、一気にエンジンがかかるから面白い。
そうなるといつもとは違い、周囲を巻き込むほどのエネルギーを発して、周囲の人もそれに応えてくれる優しさを有しています。
なんて輝いた時代だろうか。
まさに最後の青春という感じで、ここまでの三巻分も読むと、その印象はさらに強まりそうです。
文学としての豊かさ
僕は芥川の作品をいくつか読んだことがありますが、記憶にくっきりと残っているのは『羅生門』くらいで、その他はおぼろげです。
本書に出てくる彼に関する知識もあまりピンとこなく、そこまで面白いとは感じられませんでした。
しかし、私や円紫さんなどがそれを語ると、魔法にかかったように面白くなり、自分にも文学を楽しむような素養があるのではと錯覚しそうになりました。
もちろん本当の文学がそんなとっつきやすいはずがありませんが、面白さがあることが分かるようになります。
とっつきにくいテーマを読者に届くようアジャストしてくれるのが本書で、その手法は鮮やかで、本書というか本シリーズの虜になるまでに時間はかかりませんでした。
おわりに
絶対に一巻から読んで、もう一度本書を読みます。
それくらい面白かったし、これから先長くに渡って記憶に残る名作であることは疑いようがありません。
ぜひ未読の方には読んでほしい一冊、というかシリーズです。
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