ホラー

森山東『お見世出し』あらすじとネタバレ感想!京都を舞台にした怪談のような短編集

お見世出しとは、京都の花街で修業を積んできた少女が舞妓としてデビューする晴れ舞台のこと。お見世出しの日を夢見て稽古に励む綾乃だったが、舞の稽古の時、師匠に「幸恵」という少女と問違われる。三十年前に死んだ舞妓見習いの少女・幸恵と自分が瓜二つだと知り、綾乃は愕然とするが―。千二百年の都・京都を舞台に繰り広げられる、雅びな恐怖譚。第十一回日本ホラー小説大賞短編賞受賞の表題作に二編を加えた珠玉の短編集。

「BOOK」データベースより

第11回日本ホラー小説大賞短編章受賞作である本書。

三つの短編から構成されていて、舞妓さんの京都弁による語りが怖さを一層引き立てています。

怪談に近いものがあり、京都独特の雰囲気が作品に非常にマッチしています。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

お見世出し

主人公の私は京都に出張に行った際、同僚と共に舞妓遊びが出来る宮川町に繰り出します。

同僚の勧めで来た店の舞妓・小梅は、宮川町では知らない者はいないというお見世出しの話をしてくれます。

小梅の本名は綾乃といい、小学校卒業と同時に京都に来て舞妓の修行を始めました。

厳しい修行を経て少しずつ上達する中、綾乃はかつて自分によく似た幸恵という少女がいたことを知ります。

幸恵は、舞妓になる前にすでに亡くなっていました。

綾乃は幸恵と自分を重ねて見られることに不満を抱きつつも、ついに舞妓になることが決まり、そのデビューとなりお見世出しの日が決まります。

ところが、ここで綾乃は驚くお願いをされます。

綾乃のお見世出しの日に幸恵の霊を呼び出し、一緒に小梅という舞妓になってくれないかと。

最初は渋っていた綾乃も根負けして了承しますが、これが想像も出来ない事態を生み出すことになりました。

お化け

藤井はOLを辞め、二十三歳の時に芸妓を目指すために伝乃家に入ります。

芸妓同士の敵意むき出しのやりとりがありつつも、藤井は弥千華という名前で芸妓になることが決まりました。

しかし、本当に大変なのはこれからでした。

呪扇

この話には呪扇という言葉が登場します。

呪扇とは言葉の通り、呪いの扇子のことをいいます。

凶があるからこそ吉の力が生きるという考えから、百年に一回作られる扇子で、そこに凶が込められています。

通常であれば供養して燃やしてしまうものですが、相手を呪うという使い方も出来ます。

この話ではロシアという大国に勝つために大呪扇を作ることになりますが、その方法が想像を絶する残酷で、どす黒いものでした。

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感想

様々な怖さが味わえる

三つの短編はそれぞれ違った怖さがあり、人によって好みが分かれると思います。

表題作である『お見世出し』は一番怪談っぽく、特にラストの意味深な終わり方が秀逸です。

冗談のような話で終わったかと思いきや、実は冗談では済んでいなかったみたいな。

次に『お化け』ですが、こちらは舞妓同士の恐怖すら覚える苛烈なやりとりがメインかと思いきや、異形のものが登場して分かりやすくホラーです。

そして、最後に『呪扇』。

こちらは怖い以上に直接的なグロがあり、苦手な人は流し読み程度が良いかもしれません。

僕ははじめじっくり読んでいましたが、だんだんじっとしていられないほど体中がムズムズしてきて、途中から流し読みしてしまいました。

三者三様の楽しみ方があると思いますので、好みの一作が見つかりやすいようになっています。

馴染みがないと読みにくい

岩井志麻子さんの『ぼっけえ、きょうてえ』でも思いましたが、方言のみで書かれた小説は人によってかなり読みにくいです。

京都弁といえばテレビ等でも比較的耳にする機会がある方ですが、それでもまとまった文章となると内容を理解するのに必死になってしまい、楽しみきれない自分がいました。

関西圏に在住、もしくは親しみのある人はもしかしたら問題なく読めるのかもしれません。

本書の雰囲気を出す上で京都弁は大事な要素であることは間違いありませんが、人によって合う合わないがありますので、これから読む人はくれぐれもご注意ください。

おわりに

怪談を聞いているかのような語りは自然と読者を引き込み、背筋がゾッとするような恐怖を与えてくれます。

表紙でピンときたという人は、まず間違いなく本書の虜になると思います。