サスペンス

『魔女は甦る』あらすじとネタバレ感想!戦闘本能を高める麻薬の生み出す恐怖とは?

元薬物研究員が勤務地の近くで肉と骨の姿で発見された。埼玉県警の槇畑は捜査を開始。だが会社は二ヶ月前に閉鎖され、社員も行方が知れない。同時に嬰児誘拐と、繁華街での日本刀による無差別殺人が起こった。真面目な研究員は何故、無惨な姿に成り果てたのか。それぞれの事件は繋がりを見せながら、恐怖と驚愕のラストへなだれ込んでいく…。

「BOOK」データベースより

中山七里さんの初期作品である本書。

中山作品ではお馴染みの渡瀬や古手川も登場しますが、今回はメインではありません。

本書では攻撃本能を強くする新しい麻薬『ヒート』が登場し、その出どころや研究について調べているうちはミステリです。

ところが、事実が明らかになるにつれてサスペンス色が強まり、最終的にはホラーといっても過言ではない恐ろしい展開が待っています。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

凄惨な死体

埼玉県警の槙畑啓介が現場で見たのは、もはや年齢も性別も分からないほど分断され、ほとんどの皮膚や死亡がはぎ取られた死体でした。

死体付近にあった社員証や歯形から、被害者がスタンバーグというドイツの製薬会社の研究員・桐生隆であることが判明します。

事件現場は彼の勤め先である研究所の近くですが、研究所は二か月前に閉鎖されていました。

彼の恋人である毬村美里などの証言から、桐生は穏やかで事件に巻き込まれる人間には思えません。

一方で、桐生は災害で家族は失って四億円以上の資産を持ちつつも慎ましく暮らしていたこと、化学者としてやや偏った思想を持っていたこと、自分のことを『魔女の末裔』だと話していたという証言もあり、桐生のことを知ることが事件解決に繋がっているように思えました。

ヒート

捜査の途中から、警察庁生活安全局の宮條貢平が加わります。

彼は渋谷の街で問題になっている麻薬『ヒート』を追っていて、ヒートにはスタンバーグが関係していることが分かっています。

ひたすら攻撃本能を増大させ、人を野獣のように仕立ててしまう麻薬。

宮條は槙畑に同行してヒートを追いますが、そこで宮條の異常なほどの捜査を目の当たりにします。

一方、ヒートの解析が進む中で、巷には二種類のヒートが出回っていることが判明します。

違いは体外への排出量にあり、ヒートBと名付けられた方は体外にほとんど排出されません。

ヒートAが体に優しい麻薬とすると、ヒートBは人間を変貌させてしまう究極の麻薬です。

本書では犯人を追うだけでなく、このヒートの出どころ、効果なども見所の一つになっています。

別の事件

桐生の事件と同じ町で、今度は嬰児誘拐事件が発生します。

捜査を進めると、現場から桐生の肉体の一部が見つかりました。

つまり、犯人は桐生を殺害後、誘拐事件の現場にも現れていたことになります。

一見、関連性の見られない二つの事件。

犯人の目的は何なのか?

槙畑が捜査を進める中で二つの事件は思わぬところでリンクし、予想もつかない事件の全容が明らかになるのでした。

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感想

ホラー色の強いミステリ・サスペンス

目を覆いたくなるほど凄惨な様子の死体から始まる本書。

被害者は製薬会社の研究員をしていて、巷で問題になっている麻薬に関係しているかもしれない。

これだけ見ると立派なミステリですが、本書はそれだけに留まりません。

問題となっている麻薬『ヒート』は攻撃本能を強める作用を有していて、読者はそのすさまじさを目の当たりにすることになります。

もはや理屈の通じない、本能だけの生物としての戦い。

ここまでくるとサスペンス、あるいはホラーと呼ぶべき内容で、序盤で受ける印象と終盤で受ける印象はがらりと違います。

この展開についていくのがやや大変ですが、しっかりついていければ本書は様々なテイストの緊迫感、恐怖を味わえる素晴らしいエンタメ小説といえます。

やや粗削り

初期作品ということもあり、中山さんの作品の中ではやや粗削りな印象を受けました。

登場人物の行動やセリフ、心理描写が妙に芝居がかっていたり、悲劇のヒロインのように自己陶酔に浸っていたりと、ふいに醒めてしまうことが何度かありました。

それから本書における問題は解決を迎えず、続編ともいうべき存在の『ヒートアップ』まで読まないとすっきりしない部分もあります。

すっきりしない部分もあるのですが、本書で終わらせるよりは幾分か良いと思います。

正直、『ヒートアップ』は同じ世界観を共有しているとはいえ別作品に仕上がっているので、同じテイストの物語を期待すると痛い目を見ます。

そういった観点を踏まえ、行く末を見届けたいという人は『ヒートアップ』とセットで本書を楽しむのがベターだと思います。

グロテスクな描写に注意

中山さんの作品でいうと『連続殺人鬼カエル男』などがそうですが、刺激の強いグロテスクな描写がふんだんに盛り込まれています。

特に終盤は言葉を失うほどの展開が待っていて、暴力的なシーンが苦手という人にはかなり厳しい内容になっています。

ミステリが読みたいけれど、過激すぎる描写には耐えられない。

そう思う人は、中山さんの『岬洋介』シリーズや『御子柴礼司』シリーズなど別作品をオススメします。

ミステリなので残酷なシーンはもちろんありますが、普段からミステリを読んでいる人であれば十分許容範囲だと思います。

おわりに

僕は比較的新しい作品を読んでから本書に入ったので、古手川の未熟すぎる姿が初々しくも読んでいるのがなかなかしんどかったです。

渡瀬も登場しますが決してメインというわけではありませんので、彼らの登場する作品とは切り離して楽しむのが一番だと思います。

ヒートの行方の知りたい人はこちら。

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