『夏と花火と私の死体』あらすじとネタバレ感想!斬新な語り手が描く夏のホラー
九歳の夏休み、少女は殺された。あまりに無邪気な殺人者によって、あっけなく―。こうして、ひとつの死体をめぐる、幼い兄妹の悪夢のような四日間の冒険が始まった。次々に訪れる危機。彼らは大人たちの追及から逃れることができるのか?死体をどこへ隠せばいいのか?恐るべき子供たちを描き、斬新な語り口でホラー界を驚愕させた、早熟な才能・乙一のデビュー作、文庫化なる。第六回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞受賞作。
「BOOK」データベースより
乙一さんのデビュー作である本書。
当時十七歳とは思えない観察力、発想力が発揮された作品で、第6回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞しています。
本書には表題作の他に『優子』という短編も収録されていて、こちらでは表題作とはまた違った和テイストのホラーを味わうことが出来ます。
本書に関する乙一さんへのインタビューはこちら。
元々好きだったのはホラーではなくファンタジー!?いかにして名作『夏と花火と私の死体』が生まれたのか?
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
夏と花火と私の死体
衝動
五月と橘弥生は友だちで、二人とも弥生の兄・健のことが好きでした。
しかし、弥生は健と兄妹のためその思いが叶うことはありません。
また、健は従姉の緑に好意を寄せていたため、五月に分があるとはいえませんでした。
ある日、五月は意図せず弥生の健への思いを聞いてしまい、平等にするために自分の気持ちも打ち明けます。
すると弥生の心は乱れ、衝動で五月を木の上から突き落としてしまいます。
結果、五月は死亡。
その後に現れた健に対して、弥生は五月が滑って落ちたと嘘の説明をします。
事情を知った健は、五月の母親たちが悲しまないよう五月の死体を隠すことを決めました。
隠蔽
はじめ、五月の死体は森の土の下にある溝に隠されます。
しかし、捜査隊によって危うく見つかりそうになり、すぐに別の場所に移す必要がありました。
一度死体を自宅に持ち帰ると、二人は隠し場所を考えます。
そして思いついたのが、お宮の敷地にある石垣の穴でした。
井戸のようにぽっかり空いた空間で、子どもたちのゴミ箱のような扱いの場所。
そこであればまず見つかることはありません。
健と弥生はピンチを何度もくぐり抜け、花火大会の日の夜、ついに五月の死体を石垣まで持っていくことに成功します。
後は死体を落とすだけ。
しかし、石垣にはなぜか緑が待っていました。
優子
もう一つの短編。
清音は父親を結核で亡くし、身寄りがないところを鳥越家に引き取られます。
主人の政義は優しい男性で、妻の優子と共に暮らしていました。
清音は感謝の気持ちを抱きながら二人のお世話をしますが、気になることが一つだけありました。
それは、一度も優子の姿を見たことがないことです。
政義が優子と話す声を聞いたことはあります。
二人分の食事を出せば、ちゃんと食事はなくなっています。
しかし、清音が不安に思うのには理由がありました。
政義は二人の食事をどちらも半分でいいと清音に言いますが、これは政義が二人分を食べているからではないか。
二人の食事で全く同じ料理が残されているのも、二人の嫌いなものが一致したからではなく、政義が一人で食べているからではないか。
清音の不安は抑えられなくなり、政義に無断で政義の部屋に入ります。
政義が外出中の今、この部屋にいるのは優子のはず。
ところがそこに優子の姿はなく、あるのは不思議な妖しさを放つ人形でした。
清音はついに真実を知ってしまいますが、この物語には仕掛けが施されていました。
感想
とにかく斬新
『夏と花火と私の死体』について。
本書の最大の魅力は、最初から最後まで五月の視点で語られることです。
序盤で五月が命を落としてからも、一貫して五月が物語の視点になります。
この発想はとにかく斬新だと思いました。
他のレビューを見ていると死体目線だという人もいますが、僕は違うと考えています。
死体目線であれば、地面に埋められた時や、死体のない場所の描写を描くことはできません。
考えられることとして、五月は死後、霊などの精神だけの存在になり、いわゆる神視点に立ったのではないでしょうか。
この五月の視点がすでに死んでいるせいかいつでも冷静で達観していて、本来あるはずの恐怖を和らげる働きをしています。
一方で、死んだ彼女の視点だからこそ描ける恐怖があり、夏や花火といったシチュエーションと合わさって絶妙なホラーに仕上がっています。
平易な言葉だけれど無駄がない
本書は決して難しい言葉で書かれていません。
五月の年齢を考えれば、年齢相応の表現になって当然です。
しかし、その文章に無駄はなく、分かりやすい言葉で分かりやすく恐怖や焦りを伝えてくれます。
そうすることによって難しい表現では生まれることのない根源的な恐怖があり、短い話にも関わらず非常に読み応えがありました。
テイストは違いますが、『向日葵の咲かない夏』をなんとなく思い出しました。
オチは弱め
これはどちらの話にも共通していますが、オチがやや弱めです。
意外性はそれほどなく、途中で読めてしまうことが原因かもしれません。
物語の結末として順当ではあるのですが、せっかく盛り上がった展開を見せてくれただけに、もう一つパンチがあっても良かったのではとつい思ってしまいました。
ただより良い代案が思い浮かぶわけでもありませんので、結局、これが最良だったのかもしれません。
おわりに
よく目にしていたタイトルだったので何となく敬遠していましたが、読んで本当に良かったです。
夏を舞台にしたホラー小説は本当に例外なく魅力にあふれていて、本書は斬新な設定も合わさって特に強烈な印象を残してくれました。
これが乙一さんのはじめての作品になるので、このことをきっかけに乙一さんの他の作品にも挑戦してみたいと思います。
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