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『ぼぎわんが、来る』あらすじとネタバレ感想!ぼぎわんの魔の手から逃れる術はあるのか?

harutoautumn
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“あれ”が来たら、絶対に答えたり、入れたりしてはいかん―。幸せな新婚生活を送る田原秀樹の会社に、とある来訪者があった。それ以降、秀樹の周囲で起こる部下の原因不明の怪我や不気味な電話などの怪異。一連の事象は亡き祖父が恐れた“ぼぎわん”という化け物の仕業なのか。愛する家族を守るため、秀樹は比嘉真琴という女性霊能者を頼るが…!?全選考委員が大絶賛!第22回日本ホラー小説大賞“大賞”受賞作。

「BOOK」データベースより

約二年に一度程度のペースでしか大賞作の出ない日本ホラー小説大賞ですが、本書は文句なしで第22回日本ホラー小説大賞〈大賞〉受賞作に選ばれました。

2018年に『来る』というタイトルで映画化もされています。

https://www.youtube.com/watch?v=oHK9zj8cNd0&t=1s

澤村さんへのインタビューはこちら。

第二十二回日本ホラー小説大賞・大賞 澤村伊智『ぼぎわんが、来る』刊行記念インタビュー

ぼぎわんという一見ユニークな名前ですが、これがとんでもなく恐ろしい化け物で、後半に進むにつれてさらに狡猾になっていくのだから手に負えません。

ぼぎわんが近づいてくる恐怖、そして退治するために正体を突き止める推理が面白く、ホラー小説好きであれば読んでおいて損はありません。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

正体不明の化け物

田原秀樹は小学六年の夏休みの時、大阪にある母方の祖父母の家で認知症を患った祖父と二人で留守番をしていると、不審な来訪者が現れます。

秀樹はだんだん怖くなって戸を開けることはなく、その場は何もなく済みました。

祖父はその時だけ意識がはっきりとしていて、あれがとても恐ろしいものであることを教えてくれます。

後に祖母の話の中で、あの化け物がぼぎわんと呼ばれていることを知ります。

しかしその後、秀樹の前にぼぎわんが現れることはなく、三十歳を過ぎた時に香奈と結婚。

娘の知紗が生まれ幸せでしたが、頭の片隅にはいつもぼぎわんのことがありました。

恐怖は終わらない

会社に秀樹の客が来ますが、秀樹が見に行くとその姿はなく、応対した後輩の高梨は突如、右腕から大量の血を流し始めます。

病院での診断の結果、犬でも猫でもない謎の生き物に噛まれたことが判明し、それから秀樹の周囲でおかしなことが起こり始めます。

そう、ぼぎわんが二十五年以上の歳月をかけ、秀樹を見つけ出したのです。

怖くなった秀樹は中学時代の友人で民俗学を専攻していた唐草に相談し、ぼぎわんとは元々室町時代に宣教師が『ブギーマン』と名付け、それが日本人の発言でなまって『ぼぎわん』になったことを知ります。

唐草は力になってくれる人を知っているとして、オカルトライターの野崎を紹介します。

野崎は彼女で霊能力者の比嘉真琴を紹介。

二人はぼぎわんから田原家を守るために最善を尽くしますが、ぼぎわんは近づく回数が増えるごとにどんどん狡猾になり、真琴では手に負えない状況でした。

ぼぎわんの正体とは

本書は秀樹の視点の他に香奈、野崎の三つの視点で描かれます。

真琴は姉で自分以上の霊能力者である琴子の力も借りながらぼぎわんを退治しようしますが、相手はいつもこちらの想像以上の手段で襲い掛かってきます。

やがて事態を重く見た琴子は自分で動き出し、野崎と協力してぼぎわんとは何なのかを調べ始めます。

ほとんどぼぎわんに関する資料が残されていないこと。

ぼぎわんの伝わる三重県に残された習慣や地名の意味。

これらが合わさった時、はじめてぼぎわんと呼ばれる化け物の正体が浮かび上がります。

そして、琴子はぼぎわんを直接退治することを決意するのでした。

感想

ユニークな名前に反して怖い

ぼぎわん。

ひらがたでこう書かれてもちっと怖いとは思いませんでした。

むしろユニークで可愛らしいとすら思いました。

しかし本書を読みだしてすぐにその考えは変わりました。

ぼぎわんはとても恐ろしい化け物でした。

正体は不明で、狙った人間やその知人の名前を呼び、油断を誘う狡猾さ。

もうこれはぼぎわんとしか言いようがない存在にまで昇華し、読了後にはこれ以上ないタイトルだと確信するほど素晴らしいネーミングだと思います。

正体を突き止める面白さ

ホラーなので化け物の怖さを堪能するのはもちろんですが、本書は後半になるにつれてこちらから反撃しようという姿勢に変わります。

地道に足を使って調査し、頭の中で集めた情報を繋ぎ合わせ、一つの答えを導き出す。

この形式はまるでミステリで、ミステリ好きの僕にとってはたまりませんでした。

手も付けられず恐れるだけだったぼぎわんを倒せるかもしれない。

正体に近づくごとに興奮し、もうページをめくる手が止まりませんでした。

何の根拠もないわけではなく、化け物なりのルーツ、ルールがあって動いているところが合理的で、筋が通っていて良かったと思います。

おわりに

最近のホラーの中でも群を抜いている本書ですが、『比嘉姉妹シリーズ』として2020.5.29時点で全四巻まで発売されています。

本書にはまった方であれば安心して楽しめる内容になっていますので、ぜひ第二弾以降もお楽しみください。

次の話はこちら。

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