『平成怪奇小説傑作集1』あらすじとネタバレ感想！平成の幕開けを飾る名作集
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よなよな書房
『お孵り』あらすじとネタバレ感想！山中の村に伝わる生まれ変わりの伝承の正体とは？
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橘佑二は、結婚の挨拶のために婚約者・乙瑠の故郷である九州山中の村を訪れていたが、そこで異様な儀式を目撃してしまう。実は村には生まれ変わりの伝承があり、皆がその神を崇拝しているというのだ。佑二は言い知れぬ恐怖を覚えたが、乙瑠の出産でやむを得ず村を再訪する。だが生まれた子供は神の器として囚われてしまい…。佑二は家族を取り戻せるのか!?一気読み必至の第39回横溝正史ミステリ&ホラー大賞読者賞受賞作。
「BOOK」データベースより
古い風習の残る村を舞台にしたホラー小説である本書。
展開や設定はどこかで見たことのあるものですが、それでも理屈の通じない異常な雰囲気は読んでいて緊張感があり、最後まであっという間に読めてしまいました。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
惨劇
冒頭、過去に起きた大量殺人事件が提示されます。
鹿島丙助という男はたった一晩で三十三人もの人間を殺害し、最後は猟銃で自殺しています。
このことは物語中盤まで一切絡んできませんが、勘の良い読者であれば何と関係しているのかが明示される前に分かるはずです。
途中にもしっかり説明されるので、ここは流し読みでも大丈夫です。
挨拶
橘佑二は学生時代から交際していた萩村乙瑠と婚約して、彼女の実家を訪れることにします。
乙瑠の実家は九州の山奥にある村で、彼女は帰省することを嫌がる、あるいは怖がっていました。
確かに乙瑠の実家やそのコミュニティは旧態依然とした風習が残っていて、佑二が圧倒されてしまうことも多々ありました。
それでも乙瑠の様子ははっきりいって異常であり、佑二は終始気にしていました。
生まれ変わり
同じタイミングで、乙瑠の姉・初美は出産を控えていました。
そんな中で、この村は生まれ変わりの村と呼ばれていることを知ります。
この村の人は亡くなっても、村の誰かの赤ちゃんになって再び生まれてくるのだといいます。
またこの村の女性は村でしか出産できないともいいます。
佑二には理解できないことでしたが、乙瑠含めて誰もが当たり前のこととして受け止めていて、この時点でかなりの違和感があります。
しかし、これはほんの序章であり、佑二はこの村の異常性に段々と気が付いていきます。
感想
優れたリーダビリティ
本書はとにかく読みやすいです。
設定がどこかで読んだことのある内容をモディファイしたようなものなので、すっと頭に入ってきます。
またリーダビリティに優れていることもあり、理解できないと読むペースが落ちることはありません。
むしろ物語が進むにつれて先が気になってしまい、読むペースは上がる一方。
これだけでも読んで損はないといえます。
分かっていても面白い
本書は奇をてらった展開はなく、まさに王道です。
難解な謎は一切なく、そんなまさか、と思うようなストレートな事象も当たり前のように登場します。
あるいは大した理屈はないけれど、なぜかそうなる、というご都合主義がまかり通っていますが、それが分かっていても面白いのが本書です。
深みがある話ではありませんが、決して浅すぎる話ではない。
ホラーエンタメとしてよく出来ていると思います。
佑二が合わない
一点、難点を挙げるとすれば佑二の存在です。
僕は最後まで彼を好きになることができませんでした。
優柔不断で、かと思えば急に乱暴なこともできてしまい、本当に同一人物？と思うほどキャラクターが安定しません。
本書は彼視点で終始動くので、彼の性格が合わないと読み進めるのがけっこう苦痛かもしれません。
感情移入を重視する方であれば、少々注意が必要かもしれません。
おわりに
ありがちなホラーだけれど、ありがちでは終わらせない面白さがある。
読んで損はない一冊でした。
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