ミステリー

真梨幸子『みんな邪魔』あらすじとネタバレ感想!少女漫画のファンの華やかな集いの裏で起こる連続事件の真相とは?

少女漫画『青い瞳のジャンヌ』をこよなく愛する“青い六人会”。噂話と妄想を楽しむ中年女性たちだったが、あるメンバーの失踪を機に正体を露にし始める。飛び交う嘘、姑息な罠、そして起こった惨殺事件―。辛い現実から目を背け、ヒロインを夢見る彼女たち。その熱狂が加速する時、新たな犠牲者が…。殺人鬼より怖い平凡な女たちの暴走ミステリ。

「BOOK」データベースより

真梨幸子さんによる、いわゆるイヤミス作品です。

改題前は『更年期少女』というあまりに強烈な組み合わせのタイトルで、正直、こちらの方が本書の内容をよりストレートに反映しているので、個人的には文庫版のタイトルはあまり好みではありません。

世間体の問題かもしれないので、気にしないことにします。

肝心の内容ですが、かつて連載されていた少女漫画『青い瞳のジャンヌ』と、そのファンクラブの幹事会『青い六人会』が物語の中核になっていて、人間の煌びやかさと目を背けたくなる現実の二面性が、吐き気がするほどおぞましく描かれています。

相変わらず読者を置いてけぼりにするほどの勢いと問答無用さで、真梨節炸裂です。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

青い瞳のジャンヌ

『青い瞳のジャンヌ』とは『少女ジュリエット』という学年誌でかつて連載されていた少女漫画です。

熱狂的なファンを有するほどの人気でしたが未完のまま打ち切られ、原作者の秋月美有里は姿を消してしまいます。

それでもファンクラブ『青い伝説』は現在にいたるまで運営され続け、会員数は三百名になります。

本書は、このファンクラブの中でも中核を担う『青い六人会』に所属する六人を中心に描かれます。

幹事会

『青い六人会』は一般会員の中から選ばれた六人から構成されていて、ファンクラブ運営の幹事の役割を担っています。

幹事スタッフはお互いをマルグリット、ガブリエルなどハンドルネームで呼び合い、集まりで使うお店のランチは五千円、その後のお茶は最低でも千五百円と贅沢を極めています。

優雅で、誰もが羨むような生活。

しかしその一方で、幹事スタッフの中にも序列があり、古参ほど発言力があります。

また相性の悪いスタッフの組み合わせがあれば、特定のスタッフに気に入られようと目に見えない攻防が繰り広げられるなどただ穏やかな集まりというわけではありません。

中には集まりにかかる費用に頭を悩ませる人もいて、張り付けた表情の裏で、誰もが本音を抱えていることが序盤から明かされます。

誰にも見せられない現実

幹事会の様子が描かれると、次からは各幹事スタッフの名前を冠した章に移り、彼女たちのハンドルネームでない本当の名前での生活が明かされます。

それは、幹事会の集まりからは想像もできないほど苦しいものでした。

苦しさの根源は様々で、金銭的なこともあれば劣等感、夫によるDVなどもあります。

誰もがその苦しさを忘れるために無理をしてでも集まりに参加し、束の間の安らぎを得ます。

ところが、この『青の六人会』の幹事が次々に何らかの事件に巻き込まれ、次第に不穏な空気が本書を包みます。

事件同士で関連性はあるのか。

幹事、あるいは会員は関与しているのか。

章を追うごとに新たな事実が判明し、やがて事件の全貌が明らかになります。

謎を追う記者

幹事スタッフの話と並行して、とある雑誌の秋月美有里の謎に関する特集記事が披露されます。

美有里が二人いるという説があったが、実際はどうなのか。

あれだけ熱狂的な人気を得ていたにもかかわらず、なぜ『青い瞳ジャンヌ』は読者の期待を裏切るような展開になり、そのまま打ち切りになったのか。

その後、姿を消した美有里は今、どうしているのか。

イニシャル表記のみの二人の記者の対談という形で少しずつ真実が明かされ、次第に青い六人会の幹事スタッフが巻き込まれた事件と意外な繋がりを見せます。

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感想

キャラクターが強烈すぎる

とにかくこの一言に尽きます。

最初の『青い六人会』ではガブリエルを除いて誰もが胡散臭いセレブみたいな描写なので、こういう人いるな程度の印象しか残りません。

しかし、それは彼女たちの表の顔に過ぎません。

それぞれの名前が冠された章に入ると、彼女たちの本性が一気に暴露されます。

ファンクラブ内での名前から解き放たれた本名の彼女たちは煌びやかさとは無縁で、誰もが悩み苦しみ、青い六人会での集いを唯一の心の拠り所にしていました。

その現実だけでもしんどいのに、幹事会の中で少しでも自分の地位を上げようと相手を蹴落としあい、それが思わぬ不幸を生み出す。

そして、不幸は新たな不幸を生み出すという、負の連鎖のお手本のような展開です。

何が合っていて何が間違っているのかなど関係なく、より巨大な悪意を持つ人間が勝つというおぞましい女性同士の見えない争い。

まさに真梨さんの作品という強烈な負のオーラをまとっていて、大満足の一冊でした。

ミステリ部分は意外と分かりやすい

物語が進むにつれて会員が事件に巻き込まれ、犯人は誰なのかという問題が出てきます。

この点が本書のミステリ要素といえますが、これは意外と分かりやすいです。

物語の至るところに違和感がばら撒かれていて、それをかき集めると答えが自然と出てくるので、真実に気が付けたという人も多いかもしれません。

ただし、真実が分かったからといって本書の面白さが半減するわけではないので、ご安心ください。

読みにくい部分もある

一方で、僕としては所々読みにくい部分があることが気になりました。

特に思い通りにならない現実を前に、会員の面々が現実と幻想の間でさまよう描写が読みにくく、何が現実なのか。

そもそもこの描写で何を伝えたいのかが分かりにくく、長く続くと辟易しました。

正直、この作品を楽しめるという人は、ある程度苦痛があるくらいの読書の方が楽しめるマゾなのかもしれません。

僕は気が付くと癖になっていたので、もはや中毒です。

おわりに

相変わらずの真梨節で、読む前から分かっていたものの胸糞で、最高に楽しめました。

以前なら本書の中で起きていることが滑稽だと笑えたかもしれませんが、今は自分の年齢も少しだけ彼女たちに近づき、あり得るかもしれないと笑えなくなっていました。

間違いなく人を選ぶ作品ですが、毒もまた癖になると面白いものだと再確認できた作品でした。

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