『魔女と過ごした七日間』あらすじとネタバレ感想!父親の死の謎が警察のAI捜査を暴く
その夏、信じられないことばかり起きた。「ラプラスの魔女」シリーズ最新作
AIによる監視システムが強化された日本。指名手配犯捜しのスペシャリストだった元刑事、月沢克司が何者かに殺害された。息子の陸真は父の死後、自宅で見覚えのない女性の名前が書かれた書類を見つける。不審に思い、親友とともにその人物のことを調べ始めた陸真は、やがて不思議な“力”を持つ女性、羽原円華に出会う。警察による捜査が難航する中、事情を知った円華に導かれ、陸真は自身で父の死の真相を探り始める。
Amazon内容紹介より
ラプラスの魔女シリーズ第三弾となる本書。
前の話はこちら。

久しぶりにこのシリーズを読んだので、円華について懐かしいという感慨はなく、陸真と同じく、不思議な力を持つ強気な美人という感覚で見ていました。
話が進むとおぼろげながら記憶が甦ってきて、シリーズとの関連を見ながら楽しむことができました。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想などを書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
出会い
中学校の陸真は市の複合公益施設のエレベーターで、男の子が乗る車椅子を押す女性と出会います。
彼女は遠くからエレベーターの入り口めがけて小さなボールを投げて、エレベーターを止めてみせたのです。
さらに女性はこの後の転機を分単位で予言し、見事に的中。
陸真には彼女がどのようにしてあり得ないことをやってのけたのか分かりませんが、後に彼女と再会することになります。
事件
多摩川で人が浮いているという通報があり、月沢克司という男性の遺体であることが発覚します。
行方不明届が出されていて、陸真の父親であることが判明します。
両手首に接着剤が付着していて、血液からは睡眠剤が検出され、事件性が高いことがうかがえます。
陸真にとって唯一の家族であり、彼はこれで何の後ろ盾なく生きていかなければなりません。
本書では事件だけでなく、父親を失った中学生男子がどのように傷を癒して成長してくのかが描かれます。
再会
警察は捜査の中で、克司が特定の女性とコンタクトをとっていたことを掴みます。
一方、陸真もまた自宅で見知らぬ少女の血液検査結果や、銀行口座の不審なお金のやり取りを見つけ、検査を行った病院を訪れます。
目的の少女はいませんでしたが、そこで見覚えのある車椅子に乗った少年を見つけます。
病院には系列施設として数理学研究所があり、彼らがそこにいることが予想できました。
陸真は友人の純也を連れてそこに向かうと、あの不思議な女性と再会することになりました。
感想
安定の面白さ
本書はラプラスの魔女シリーズということで、円華の不思議な力が物語の軸にあります。
AIという急速に人間社会を席巻しつつある技術が主題にある中で、科学で解明できていない力が取り扱われているアンバランスさは面白かったです。
ミステリ要素はありつつも円華の力によって思うがままにできるため、エンタメとしての面白さが目立ちました。
円華の自分勝手ともとれる、けれど信念のともなう行動は陸真たち中学生から見れば頼もしいことこの上ありません。
一方でタケオと再会すると彼女の少女の頃の一面も見えてきて、ますます魅力的になります。
時の経過による成長を見せつつも、芯は変わらない。
シリーズものとしての取り扱いも抜群で、東野圭吾さんの手腕に相変わらず驚かされます。
少年の成長
本書は陸真が主人公ということもあり、彼の成長もまた物語のテーマの一つになっています。
父親を亡くし、どうやって生活したらよいのかすら分からない不安なことこの上ない状況。
調べると父親には恋人関係にある女性がいて、しかも自分の妹までいる。
不思議な力を持つ女性からは問答無用で現実を突きつけられ、何が何だか分からないまま前に進まざるをえない。
中学生でなくとも、かなりヘビーな状況で、陸真の不憫さが目立ちます。
しかし、純也やその家族をはじめ、彼を支える存在は多く、いつでも優しく彼を支えてくれます。
円華だって不器用ながらも陸真のことを考えてくれていて、その力強さは生きる気力を失いかけている彼にとって必要なものだと後になって分かります。
円華の力のおかげでどんな窮地でもなんとかなるという自信が読者にはあるため、どんなシチュエーションがきても安心して読めるのも、本書の魅力の一つかもしれません。
おわりに
物価高なこともあって文庫版でも値段がかわいくありませんでしたが、文句なしで面白い一冊でした。
有名すぎるゆえに東野さんを見くびる声も散見されますが、息を吐くようにこんな名作を連発できる作家が一体どれだけいるだろうか。
亡くなってしまったことが時折悔やまれますが、しっかり残りの作品も読んで、偉大な作家の成し遂げたことをじっくり嚙みしめたいと思います。
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