『ヴァンプドッグは叫ばない』あらすじとネタバレ感想!伝説の殺人鬼が再来するシリーズ第五弾
U国MD州で現金輸送車襲撃事件が発生。襲撃犯一味のワゴン車が乗り捨てられていたのは、遠く離れたA州だった。応援要請を受け、マリアと漣は州都フェニックス市へ向かう。警察と軍の検問や空からの監視が行われるが、真の理由は研究所から脱走した、20年以上前に連続殺人を犯した男『ヴァンプドッグ』を捕らえるためだった。だが、彼の過去の手口と同様の殺人が次々と起きてしまう。一方、フェニックス市内の隠れ家に潜伏中の襲撃犯五人は、厳重な警戒態勢のため留まっていたが、一人が殺され……。
Amazon内容紹介より
マリア&漣シリーズ第五弾となる本書。
前の話はこちら。

ここにきてシリーズ最大の規模感、ボリューム感がきて、ファンとしては大歓喜でした。
シリーズの積み重ねがあるからこそできる広がりと、新たな展開を予期させる広がりがあり、ここにきても勢いが衰えるどころか加速している市川憂人さんに脱帽です。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想などを書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
吸血鬼
冒頭から始まる過去の話。
僕が吸血鬼になってしまった日のことを振り返るとして、彼が幼い頃のことを回想していました。
ある日、僕の妹が犬を拾ってきて、シャノンと名付けて厳格な父親から隠して飼っていました。
この時、僕はシャノンに嚙まれていて、後の伏線になっています。
シャノンはこの後父親に見つかってしまいますが、僕の機転によりシャノンは正式な家族となります。
これだけ見ると幸福な光景ですが、ここから僕や妹にとって辛い出来事が起こりました。
現金輸送車襲撃事件
現代に戻り、一台の車に五人の男女が乗り、走行しているシーンから始まります。
ラジオからは現金輸送車襲撃事件について流れていて、彼らがその事件の犯人であることが早々に明かされます。
ハイスクール時代の同期で、そのうちの一人であるセオドリックの誘いによって再び集まり、事件に手を染めたのでした。
現金を盗み、警備員二名を殺害しており、誰がどう見ても立派な犯罪者であり、もはや逃げ切るしかありません。
五人はセオドリックの計画に沿って順調に逃走し、あらかじめ用意していた家で休息をとることにします。
一同はようやく安堵しますが、翌日、周辺で検問が始まり大きく動揺します。
夜中まで何もなかったのに、なぜこのタイミングでこの範囲まで検問が敷かれるのか。
一同は不安と焦りから騒ぎ始めますが、本当の恐怖はこれからでした。
さらに場面は変わり、マリアと漣のもとに現金輸送車襲撃事件のことが伝わり、二人は捜査に加わります。
ところがフェニックス署のドミニクから連絡が入り、二人の力を貸してほしいと依頼が入りました。
人員が欲しいのは分かるが、なぜ二人をわざわざ指名したのか。
嫌な予感がありつつも二人はフェニックス署に向かい、そこでドミニクが二人を呼んだ理由を知ります。
フェニックス署には国立衛生研究所の所員もいて、そこに収容していた吸血犬(ヴァンプドッグ)が逃げ出してフェニックスに潜伏している可能性が高いことが明かされます。
感想
怒涛の展開
本書は冒頭から惜しみなく読者の興味をそそるネタをこれでもかと投下してきます。
吸血鬼にまつわること。
現金輸送車襲撃事件のこと。
ヴァンプドッグの脱走。
第三者目線で読んでいる読者にはそれらに一定の繋がりが見えているので、きっとこういう伏線になっているのでは?と予想しながら読書を進めることになります。
ところが、読み進めれば進めるほど当初の予想がことごとく裏切られ、膨大な情報量に翻弄され、マリアや漣たち同様に混乱していきます。
しかし、本書はリーダービリティが高く、情報が整理されながら進むので、決して荒野に投げ出されたという途方もないことになることはないので、その辺りは市川さんの上手さがうかがえます。
設定や構成の巧みさ
本書はなんといっても設定や構成が素晴らしいです。
物語の核に狂犬病と吸血鬼があり、それが密接に繋がっているのは容易に想像できますが、どう繋がっているのかまでは見えてきません。
これを軸にU国の広い範囲を巻き込んで物語が展開するので、物理的にも物語的にも奥行はシリーズ最大級ではないでしょうか。
ミステリでもあり、一部SF要素もあり、それらを巧みに融合させながらマリア&漣シリーズに昇華していく。
この巧みさは市川さんがデビュー作から着実にレベルアップをしている証拠に思え、もはや押しも押されぬ存在になったことを確信させてくれた瞬間でした。
オールスター的な一面
本書はこれまでのシリーズで知り合った、関係を築いた登場人物たちが一堂に会するため、オールスター的な一面もあります。
キャラクターの掛け合いが面白いのはもちろんのこと、これまでの関係があるからこそできる捜査や大胆さがあり、人に影響を与えることを得意とするマリアの相性は抜群です。
漣はそれを冷静に俯瞰しながらマリアの抜けをカバーして全体的なサポートしていくので、ここもバディものとして最高です。
さらにマリアの旧友であるセリーヌと再会しますが、彼女が検死官になったことで、過去の因縁からさらにシリーズが拡大する予兆すら見えます。
一冊の作品としても濃厚で読み応えが抜群なのに、次作品に繋げる余裕すらあるのか。
リアルタイムで追いかける作品でここまで毎回興奮させてくれる作品はそうはありません。
おわりに
市川さんがもはやシリーズを完璧に書きこなしていることが分かり、絶大なる信頼感を持って読むことができました。
シリーズとしてまだまだ盛り上がりを見せてくれそうなので、引き続き楽しみにしたいと思います。
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