『黒猫のいないよるのディストピア』あらすじとネタバレ感想!新たな物語を予感させる第二期がスタート
大学院を修了し博士研究員となった私は、所無駅付近で自分そっくりの女性と遭遇する。白銀の髪と瞳、白い服の彼女に驚いたのもつかの間、暗号の書かれた葉書が家に届き、母がその謎の女性と会っているのを目撃する。一連の不審な出来事に悩みつつ、些細な行き違いから頼りの黒猫にも連絡できずにいた私は、学部長の唐草教授から反美学研究者の灰島浩平を紹介され、彼とともに調査を始めるが……。黒猫シリーズ第二期始動
Amazon内容ページより
前作『黒猫の回帰あるいは千夜航路』で第一期が終わり、本書にて黒猫シリーズ第二期が始まりました。
黒猫と付き人の関係についてある程度決着がついたものの、それで終わりというわけではありません。
特に付き人は一人の研究者としてまだまだ道半ばであり、本書では様々な問題を前に不安を抱きながらも前に進もうと努力する姿を見ることが出来ます。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
ドッペルゲンガー
昨夜、何らかの理由で黒猫とケンカし、朝になって後悔する私。
肝心の黒猫は滋賀県の長波間市に出張に行っており、わだかまりを解けないことに悶々としています。
また私の住む所無市では『所無ユートピア十ヵ年計画』が予定されており、それに反対する住人によってデモが行われていました。その中には、知人の付き合いで参加する母親の姿もありました。
私は大学に向かう途中でしたが、駅前で驚くべきものを見ます。
それは自分にそっくりの女性でした。
見た目はそっくりですが、髪色から服装に至るまで真っ白で統一されていて、すぐに姿を消してしまいます。
あれはドッペルゲンガーなのか。
私は得体の知れない恐怖を感じます。
不在の黒猫
一方、黒猫は正体の知れない女性を伴って、長波間竹林公園の調査に乗り出していました。
黒猫が知りたいのは、公園の設計者と、羽衣伝説の天女をシンボルに用いた理由でした。
そもそもこの企画した人間は秘匿されていて、何かが隠されていることは確実。
黒猫と女性は少しずつ目的に近づいて行きます。
ここでは黒猫がなぜこの調査をしているのか。
付き人を名乗る女性は何者なのか。
全く関係性の見られないエピソードですが、後に所無市の都市計画と意外な符号を見せます。
新たな指導者
今回、私の論文のテーマは『反美学』で、唐草教授は彼女のために新たな指導者を用意していました。
その指導者は灰島浩平といい、他の研究者が題材を見出す余地がほとんど残されていないことから『ハイエナ』の異名で呼ばれています。
灰島は特にグロテスクの系譜にある美術に精通していて、反美学を語る上で非常に重要なテーマでもあります。
私は気難しい灰島相手に根気強く対話を重ね、新たな知識を習得していきます。
一方、成り行きでドッペルゲンガーのことも話すことになり、それについても調査を進めることになりました。
感想
第二期始動
非常に良い形でまとまった第一期ですが、第二期では早々に黒猫と私がすれ違っています。
二人らしい展開で、そこに都市計画やドッペルゲンガーなど新たな問題が勃発します。
今回、黒猫も母親も頼れる状況になく私にとって心細い状況ですが、新たなパートナーとして灰島が登場し、良い味を出して物語を盛り上げてくれます。
一つの区切り
第二期は始まったばかりですが、黒猫と私の関係に一つの進展が見られます。
読者側からすると何を心配することがあるのかと思ってしまいますが、それでも不安を感じてしまうところが私らしく、その不安が払拭された時の爽快感は素晴らしかったです。
もちろんこれでゴールというわけではないし、新たな不安が生まれないわけではありません。
それでもちゃんと誠実な気持ちを形で示したことに意味があり、そのあたりに黒猫らしい優しさと愛情表現が感じられました。
新たな予感
一方で、第二期が面白くなると予感させてくれる新たな問題が出てきます。
相変わらず私はどんどん大変な方向に進んでいくなと、逆に面白くなってしまいました。
研究者としても黒猫のパートナーとしても、一瞬たりとも油断できない。
常に自分を磨かないといけない。
そういった緊張感がこれで生み出されたので、これからはより一層面白くなるだろうと想像ができて良い余韻の残し方だったと思います。
おわりに
一人の研究者として遅くとも着実に歩き出し、黒猫との関係も進展させた私。
もう付き人と呼称するのは不適当かなと思うくらい成長しますが、本書を読む限り、まだまだ大変なことが待っていそうです。
黒猫と付き人の物語をこれから先も読めると思うと本当に嬉しいので、これからも二人の成長と幸せを見守りたいと思います。
次の話はこちら。
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