ミステリー

『水車館の殺人』あらすじとネタバレ感想!館シリーズ第二弾は推理を楽しめる本格ミステリ

仮面の当主と孤独な美少女が住まう異形の館、水車館。一年前の嵐の夜を悪夢に変えた不可解な惨劇が、今年も繰り返されるのか?密室から消失した男の謎、そして幻想画家・藤沼一成の遺作「幻影群像」を巡る恐るべき秘密とは…!?本格ミステリの復権を高らかに謳った「館」シリーズ第二弾、全面改訂の決定版。

「BOOK」データベースより

「館」シリーズ第二弾となる本書。

内容は前作『十角館の殺人』から独立していますが、探偵役が同じ島田潔であること、推理の舞台となる水車館は十角館と同じく建築家・中村青司が関わっているなど関連していますので、可能であればシリーズの順番に読むとより楽しめます。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

本書は過去と現在を行き来しながら物語が進行します。

現在の進行に合わせて一年前の事件が回想されるので、当時の状況を思い浮かべながら推理できるようになっています。

水車館

物語の舞台となるのは、岡山県北部の山間の地に建てられた風変りな建物・水車館。

ここには仮面をつけた主人・藤沼紀一とその妻・由里絵が暮らしていました。

紀一は過去に自動車事故で顔面と両手足に深い傷を負い、醜い顔を隠すために仮面をつけ、車椅子に乗って生活をしています。

紀一の父親・一成は『幻視者』といわれた画家で、彼の死後、紀一は一成の作品をかき集め、誰の目にも触れないようこの館に閉じ込めました。

その中には誰も目にしたことがないと言われている遺作『幻影群像』が含まれているとの噂で、多くの人間がその作品を手に入れたいと考えていました。

そして、紀一が館に閉じ込めているのは一成の作品だけではありません。

美しい妻・由里絵もまたその対象でした。

物語は、探偵・島田潔がこの水車館を訪れたところから始まります。

一年前の事件

水車館では一年に一度、一成の命日に限って、選ばれた四人だけが水車館に訪問して一成のコレクションを鑑賞することを許されていました。

島田が訪れた日こそ、その日でした。

例年通り、選ばれた人間が訪れる中、彼らの頭の中には一年前に水車館で起きた事件のことがありました。

一人は塔から墜落し、一人は姿を消し、一人はバラバラに解体された上で焼却炉で焼かれた不可解な事件。

一同は失踪した男・古川恒仁が二人を殺害したのだとして事件の幕を閉じましたが、古川の大学時代の友人である島田には違和感がありました。

犯人は本当に古川なのか。

島田は真実を知るために水車館を訪れましたが、理由は他にもあります。

水車館の建築には、前作の事件の舞台・十角館を設計した中村青司が関係していたのです。

惨劇の再現

島田が一年前の事件を聞き取りする中で、再び事件が起こります。

過去の事件と現在進行で起こる事件。

島田は二つの事件を追う中で、そこに隠された共通点や犯人に気が付いていくのでした。

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感想

本格ミステリの雰囲気

「館」シリーズということで、本書の舞台もまた時代の流れから取り残されたような古風な館が舞台です。

そして、仮面をつけた主人に、美しい人形のような少女。

執事もいたりして、この時点でミステリ好きであれば胸がときめくと思います。

いかにも事件が起きそうというか、フラグが立っていますよね。

前作『十角館の殺人』に比べるとオーソドックスで意外性は少なめですが、ミステリとして絶対面白いと確信させてくれる雰囲気が本書にはあります。

推理しがいがある

新装改訂版のあとがきで綾辻行人さんが言及していますが、本書は本格探偵小説になるよう意識して執筆されています。

前作はアガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』へのオマージュとして、いわゆるどんでん返しをウリにしていました。

一方、本書は与えられた手がかりから論理的に推理すれば真実に辿り着ける本格ミステリ度の高い作品です。

途中、読者には推理が難しいズルが入り込みそうな気配を感じましたが、綾辻さんはあえてそれを使わなかったことを物語の最後に明かしており、とても読者にフェアであることを感じました。

比較的推理が簡単な部類だと思うので、一つ一つ丁寧に推理すれば、島田が推理を披露する前に真実に辿り着くことが出来ます。

僕も惜しいところまではいけたので、ぜひ初見の方は自分も島田になったつもりで推理をお楽しみください。

先が気になるシリーズ

前作が一作目にして名作なだけに二作目の出来に不安を抱く人もいると思いますが、ご心配なく。

本格ミステリの名に恥じない魅力が本書にはあります。

さらに本書にて「館」シリーズは中村青司と密接に関係する物語であることが明かされるので、三作目以降も気になること間違いありません。

綾辻さんは少なくとも十作は続けたいとコメントしており、2020.4.21現在、九作目の『奇面館の殺人』まで刊行されています。

おわりに

『十角館の殺人』はトリッキーで強烈なインパクトがありましたが、本書はちょっと地味な分、純粋なミステリ度が高い作品だと感じました。

フェアな推理を楽しみたいという方であれば、面白いこと間違いありません。