『木暮荘物語』あらすじとネタバレ感想!ぼろアパートの住人が見せる何気ないけれど大切な物語
小田急線・世田谷代田駅から徒歩五分、築ウン十年、二階建て全六室のおんぼろアパート・木暮荘。現在の住人は四人。一階には、死ぬ前の愛あるセックスに執念を燃やす大家の木暮老人と、刹那的な恋にのめり込む女子大生・光子。二階には、光子の日常を覗くことが生き甲斐のサラリーマン・神崎と、姿を消した恋人を想いながらも別の男性からの愛を受け入れた繭。一見平穏な木暮荘の日常だが、それぞれが「愛」を求めたとき、痛烈な哀しみがにじみ出す。それを和らげ、癒すのは、安普請のぼろアパートだからこそ生まれる人のぬくもりだった……。直木賞作家が紡ぐおかしくも温かな人間物語。
Amazon商品ページより
木暮荘という世田谷代田駅近くにあるボロアパートを舞台にした本書。
大家や住人、彼らに関係する人物がそれぞれ視点となった短編がいくつも収録され、連作短編集のように繋がりを持っています。
一見、誰もが平凡な日常を送っているように見えて、実はそれぞれの悩みを抱えていて、それが物語の進行に合わせて浮かび上がります。
大きな事件が起こるわけではないけれど、不意にこみ上げる切なさや喜びが何とも心地よい作品です。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
物語の舞台は、世田谷代田駅近くにあるボロアパートの木暮荘です。
木造二階建てで、大家含めて四人の人間が暮らしています。
本書はその四人を中心に、彼らの何気ない日常が描かれています。
シンプリーヘブン
坂田繭は木暮荘の二〇三号室に住んでいます。
花屋で働き、伊藤晃生と交際して、現状に満足していました。
そんな彼女のもとに、三年ぶりに帰国した瀬戸並木が現れます。
並木は繭とかつて交際していましたが、三年間も音信不通だったことから繭は別れたつもりでいました。
しかし、並木は今も繭と付き合っているつもりで、住むところがないことから繭の部屋に転がりこみ、こうして思いがけない三角関係が誕生します。
心身
木暮荘の大家・木暮は死を目前にした友人を見舞いに行ったことをきっかけに、無性にセックスしたくなります。
妻にそれとなく話題を振りますが気持ちが読めず、他の誰かとできないか模索します。
風俗や援助交際などとは無縁だった木暮は大いに悩みますが、やがて思い切った行動に出ます。
柱の実り
トリマーの峰岸美禰(みねぎしみね)は、最近になって世田谷代田に引っ越してきて、自宅近くにある木暮荘になんとなく惹かれていました。
そんな彼女はある日、世田谷代田駅のホームにある柱に奇妙な突起を見つけます。
突起は日々成長し、美禰以外の誰も気が付いていません。
どうなるのだろうと見守っていると、美禰はある日、成長した突起が男根そっくりであることに気が付きます。
黒い飲み物
佐伯はある日から、夫のコーヒーが泥の味に感じるようになっていました。
同僚の繭はおいしそうに飲んでいることから、自分だけがそう感じていることは明らかでした。
なぜ泥の味がするようになったのか。
一人考えていると、ある日、佐伯夫婦が経営する喫茶店兼花屋を訪れた女性客もまた同じ感想をこぼし、その意味を知ることになります。
穴
木暮荘の二〇一号室に住む神崎。
彼は日々、他の住人の生み出す騒音に悩まされていました。
ある日、部屋を掃除している時に誤って壁に穴を空けてしまいます。
慌てて穴をふさごうとしますが、隣が空室であることから中に侵入し、そこを隠れ家のように使用するようになります。
二〇二号室で騒音の発生源を探した結果、神崎は一〇二号室が騒音の元であることに気が付きます。
そこには女子大生が住んでいて、神崎はどんな生活を送っているのかと興味を持つようになり、畳をめくって空いている穴から女子大生を覗く生活を始めます。
ピース
一〇二号室に住む光子は神崎の覗きに気が付き、それでも彼の行為を咎めることなく、天井越しの奇妙な共同生活を送っていました。
そんなある日、光子の友人が妊娠をしていて、出産を間近に控えていることが発覚。
しかも彼氏は責任をとるつもりがあるのか微妙で、親には言えるわけがないという状況。
光子は妊娠できない体質のため複雑な心境で聞いていましたが、それから事態は予想外の方向に動きます。
嘘の味
並木は繭を諦めて彼女のもとを去ったつもりでしたが、全く諦めることができていなくて、彼女のことをストーカーしていました。
そんな時、『黒い飲み物』に登場した女性・北原虹子に声を掛けられ、彼女の家をたずねることになります。
虹子は両親の資産で暮らしている無職で、嘘の味がするという理由で他人の作ったものが食べられないといいます。
並木はそんな虹子の家で共同生活を送るようになり、彼女と微妙な距離を保ちながら繭の様子をうかがいます。
感想
日常に潜む小さな出来事
本書はフィクションではありますが、起こる出来事は本当に些細なことです。
突然戻ってきた元彼氏と今の彼氏との間で奇妙な三角関係が生れたり、死を意識したことで無性にセックスがしたくなったりと、実際の日常でもありそうなことばかりです。
しかし、登場人物がどれもキャラクターが立っていて魅力的ということもあり、その何気ない問題が面白く、つい先が気になってしまい、読んでしまいます。
この辺りの味付けは三浦しをんさんならではの魅力です。
難しいことは何もないのでサラッと読めるので、気軽に読書を楽しみたいという人にオススメです。
連作ならではの繋がり
本書は短編の集まりで、それぞれの物語の視点が異なります。
木暮荘の住人を中心に、彼らに関係する人物が視点となるので、短編の数が積み重なるとともに世界観のディティールがくっきりするようになってきます。
すると中盤から後半にかけての短編がより深みを増すとともに、前半の短編に新たな視点からの読書が生れ、二度読みしたくなるように出来ています。
僕はその人視点で見た時と、他人から見たその人のギャップが面白いと思っていて、こういった群像劇を描いた作品ならではの楽しみ方ができました。
あと、繭と伊藤をあれだけかき乱して帰っていった並木の意外な心中が描かれ、それで作品が締められているところも気に入っています。
おわりに
サクッと読めて、自然と物語が自分の中に入り込んで楽しむことができました。
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