近藤史恵『インフルエンス』あらすじとネタバレ感想!三人の女性が影響し合った三十年の関係とは?
「あのね。よく聞きなさい。昨日、団地で男の人が殺されたの」知っている。わたしが殺したのだ。母は続けてこう言った。「警察に里子ちゃんが連れて行かれたの」友梨、真帆、里子。大人になった三人の人生が交差した時、衝撃の真実が見える。傑作長編エンタテインメント。
「BOOK」データベースより
本書は橋本環奈さん、葵わかなさん、吉川愛さん主演でドラマ化されました。
ドラマの公式サイトはこちら。
https://www.youtube.com/watch?v=fkXjwuwLEhs
本書で描かれているのは、三人の女性の三十年にわたる関係です。
互いに影響し合い、その関係はなんと呼べば良いのだろう。
サスペンスのような緊迫感がある一方で、誰かの助けとなる結末が待っているなど、決して悲観的な物語でないところに好感が持てました。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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タイトルの意味
本書の内容に入る前に、タイトルの意味について。
最近では『インフルエンサー』という言葉が当たり前のように使われるようになったのですぐに分かる人も多いと思いますが、『インフルエンス』とは『影響、影響力』という意味を持っています。
影響しているのは、後述する友梨と里子、真帆という三人の女性です。
意識していなくともそれぞれがそれぞれに影響を与え、新たな行動を生み出す。
それが連鎖して本書のような物語になるのですが、その影響力はすさまじく、言葉で簡単には説明できないほど複雑な関係を生み出しています。
どれだけ影響しているのかは、ぜひ本書を読んで確かめてみてください。
あらすじ
手紙
小説家であるわたしのもとに一通の手紙が届きます。
そこには、差出人の女性と二人の女性の三十年にわたる関係はきっとわたしの興味を引くはずだから、一度会ってもらえないかというものでした。
こういう類の申し出はよくあることで、いつもであれば断るところですが、いつもとは何か違うものを感じ、わたしはこの女性と会うことにします。
後述する女性の話が物語の中核にあることは間違いありませんが、本書の謎は他にもあります。
なぜ女性はそこまで売れっ子ではない私を選んだのか。
目的は何なのか。
着地点の見えない女性の話ははじめふわふわしていますが、やがて様々な驚きを生み出します。
里子
わたしと会った女性・戸塚友梨は大阪にある団地に住んでいて、物心ついた頃から同級生の日野里子と仲良くしていました。
その関係が変わったのは、二人が小学校二年生になった頃です。
何気ない会話の中で友梨の祖父は、里子が自分の祖父と同じ布団で寝ていることを知り、猥褻なことをされているのではと考えます。
友梨の両親は他所の家庭に口を突っ込むべきではないと反論しつつも、それ以降、友梨が里子と遊ぶことを嫌がるようになり、それから二人は少しずつ疎遠になります。
真帆
友梨と里子は同じ中学校に進学し、友梨はそこで坂崎真帆と出会います。
真帆は東京から団地に引っ越してきた子で、どこか違う雰囲気をまとうことから友だちがおらず、友梨は真帆と友だちになります。
里子の時のように、もう友だちを失いたくないと思いながら。
一方、里子は不良の細尾とよく一緒に行動していましたが、その細尾が問題を起こします。
友梨の友人・皆上理菜子が細尾たちの怒りのはけ口として殴られ、亡くなったのです。
里子は手を出してこそいないものの周囲の目は冷たく、やがて学校に来なくなります。
身代わり
真帆が友梨の家で夜まで遊んでいた日の帰り、友梨は真帆を送って行きますが、その途中で車から出てきた男に真帆が襲われます。
二人は夢中で抵抗しますが、大人の男に力では敵いません。
なんとかしないと。
そう思った友梨の目の前には男の持っていた包丁があり、友梨はそれで男の腹を刺します。
男の生死など確認する余裕もなく、二人は逃げ出しました。
正当防衛だから。
真帆の言葉を信じ、二人はこのことを二人だけの秘密にします。
翌朝、友梨が刺した男が亡くなっていることが判明しますが、母親が口にする犯人の名前は自分ではなく里子でした。
交換条件
里子の部屋は、あの夜の光景は見える位置にありました。
里子は目撃し、友梨を庇ってくれたのかもしれない。
でも、なぜ?
里子は少年院に入れられたため、その理由は分かりません。
その後、周囲の影響で友梨と真帆の関係が離れていく中で、里子が戻ってきました。
里子は自分が少年院に入ったことについて、そして彼女の祖父の魔の手から助けられなかったことに罪悪感を抱いていることを確認すると、提案をします。
自分の祖父を殺害してほしいと。
友梨は、今度は自分が里子の罪を被ろうと提案を受け入れますが、その計画は思わぬ結果を生みました。
感想
日常のようなサスペンス
友梨、里子、真帆の日常の話は団地から始まります。
僕は団地に住んでいませんでしたが、近所に団地があり、よく近所の友だちとの遊び場として利用していました。
その頃に感じていた無限の広さやどこか怖い人やものが潜んでいる恐怖が本書に描かれていて、描写が丁寧かつ細やかだというのが第一印象です。
本書は劇的な出来事がいくつも起きますが、それは日常に埋もれてしまい、やがて忘れられていきます。
怖い思いをしたのに、まるでそれがなかったかのように日常に戻る呆気なさと、こびりつく後悔や恐怖。
ド派手なサスペンスではないけれど、日常の隣り合わせだからこそ感じる特有の怖さがあり、つい一気読みしてしまいました。
文章も簡潔でシンプルなので、テンポよく読めます。
彼女たちの関係性
結局、友梨と里子、真帆の関係は何だったのだろう。
読了後も考えていますが、今でも適当な言葉が見つかりません。
友だちと呼べるほど無邪気な関係ではもちろんないし、好意や憎しみ、怒りといった一つの感情で表現できるほど単純な関係でもありません。
しかし、悪い関係ではなかったなと思います。
決して晴れやかな結末というわけではありませんが、互い影響を与え合うのは多少なりとも相手を気にしている証拠で、この関係はかけがえのないものだと分かります。
あと、わたしの正体がある程度明かされるわけですが、ここでも少しの影響が働くところが良い味を出しています。
もう少しこの設定が活かせる気もしましたが、これはこれで満足いくものでした。
おわりに
僕が読み始める前に抱いたタイトルからの印象よりも暗く重たい話でしたが、決してそれだけで終わらないところに本書の魅力を感じました。
世の中にうまく適応できなかったり、不条理を感じたり人にとって、何らかの救いになるかもしれない。
少なくとも、僕は本書の中で自分がかつて抱いた薄暗い気持ちが見えて、それが楽になった気がします。
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