貴志祐介『雀蜂』あらすじとネタバレ感想!山荘で繰り広げられる雀蜂との死闘
11月下旬の八ヶ岳。山荘で目醒めた小説家の安斎が見たものは、次々と襲ってくるスズメバチの大群だった。昔ハチに刺された安斎は、もう一度刺されると命の保証はない。逃げようにも外は吹雪。通信機器も使えず、一緒にいた妻は忽然と姿を消していた。これは妻が自分を殺すために仕組んだ罠なのか。安斎とハチとの壮絶な死闘が始まった―。最後明らかになる驚愕の真実。ラスト25ページのどんでん返しは、まさに予測不能!
「BOOK」データベースより
本書はホラーに分類されますが、非常に現実的な恐怖が描かれています。
タイトルの通り、恐怖の対象は『雀蜂』です。
普通の人でも雀蜂に襲われたらもちろん怖いですが、本書の主人公は一度刺された経験があるゆえに、一度刺されればアナフィラキシーショックによって死ぬ可能性があります。
雀蜂に刺されずに、どうやって脱出するのか。
本書に描かれているのはほぼその点だけで、これが賛否両論、というか否定的な意見を生み出した原因になっています。
酷評の数々を目にして購入を迷っている人は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
雀蜂
小説家の安斎智哉は八ヶ岳にある山荘で目覚めると、一緒にいたはずの夢子がいなくなっていることに気が付きます。
眠る前のことは思い出せず、安斎は部屋の中を調べますが、カーテンを引き開けて驚きます。
十一月の雪が降る山荘だというのに、そこにはキイロスズメバチがいたのです。
もちろん恐怖の対象ではありますが、安斎の場合は特別な事情があります。
彼は以前にもスズメバチに刺されたことがあり、抗体を獲得しています。
つまり、もう一度刺されるとアナフィラキシーショックを起こし、死んでしまう可能性があったのです。
安斎はキイロスズメバチの毒に注意しながら逃げ、外部と連絡をとろうとしますがうまくいきません。
脱出するにしても車を動かす必要があり、でなければ凍死してしまいます。
その後もキイロスズメバチが多数現れ、何者かが山荘内に持ち込んだことは明らかでした。
いなくなったことから、夢子が何らかの形で関与しているはずです。
安斎は逃げながらも、置かれた状況について考えます。
さらなる恐怖
キイロスズメバチを撃退しながら脱出方法を探しますが、その方法が見つかる前にもっと最悪なものを見つけてしまいます。
それはキイロスズメバチよりも巨大で凶暴なオオスズメバチでした。
犯人は安斎の行動を予測し、さらにトラップを用意していたのです。
これ以上ない最悪の事態でしたが、安斎はまだ諦めません。
決死の思いで二種類のスズメバチと戦い、やがて物語の構造が明らかになります。
感想
確かに怖い
ホラーというだけあって、非常に怖い内容です。
スズメバチと聞いて恐怖を感じない人を少ないのではないでしょうか。
彼らの凶暴性、攻撃性が細かく描かれ、読んでいるだけであの不快な羽音が耳元で聞こえてきそうでした。
僕は昆虫全般が苦手なのでかなり読むのに苦労しましたが、一難去ってまた一難の構造は常にハラハラドキドキさせられました。
物語の構造が面白くない
しかし、面白いかと聞かれれば、はっきりいって面白くはありません。
確かにスズメバチは怖いですが、ただそれだけです。
スズメバチと戦うだけで本書の大半は終わり、安斎がなぜこんな状況に陥ったのかに関する説明はおまけ程度にしかありません。
しかもポッと出てきたような説明ばかりで、アンフェアとしかいいようがありません。
一応伏線は張られていて、そこから読み取ることは可能ですが、読み取れたからといって納得できる内容ではありません。
読んで全く面白くないとはいいませんが、貴志さんの作品を読んでファンになったという人は要注意です。
これまでの作品と同じ様な恐怖、感動が味わえると思って読み始めると痛い目を見ます。
おわりに
あまり後ろ向きな感想は書かないように心掛けているのですが、本書に関してはある程度、素直な気持ちを書かせていただきました。
そうでないと、この記事を読んだ人が変な期待を抱き、あとで騙されることになるからです。
もちろん読む価値がない作品などないと僕は考えているので、貴志さんをより知る上で読むのは問題ないと思います。
ただ真剣に読むというよりも、斜め読み程度にとどめておくことをオススメします。
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