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野崎まど『HELLO WORLD』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

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君の未来を守りたい!
セカイがひっくり返る、恋愛青春SF小説
映画原作 2019.9.20.Fri 全国ロードショー

「お前は記録世界の住人だ」本好きで内気な男子高校生、直実は、現れた「未来の自分」ナオミから衝撃の事実を知らされる。世界の記録に刻まれていたのは未来の恋人・瑠璃の存在と、彼女が事故死する運命だった。悲劇の記録を書き換えるため、協力する二人。しかし、未来を変える代償は小さくなかった。世界が転回する衝撃。初めての感動があなたを襲う。新時代の到来を告げる青春恋愛SF小説。

【Amazon内容紹介より】

『[映]アムリタ』をはじめ、数々の名作を生み出してきた野崎まどさんの作品で、2019年9月20日に映画が全国ロードショーになることが決まっています。

映画に関する記事はこちら

 

記事ではオリジナル劇場アニメと銘打たれ、野崎さんは脚本担当となっていますので、本書は映画原作小説ということになります。

世界観としては、『know』でも使った京都を舞台に現在と未来を行き来するようなSF作品ですが、そこに野崎さんらしさが加わり、一味違った展開を味わうことができます。

正直、話のテンポになれるまで苦労しましたが、中盤以降は一気読み必至です。

この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

 

※2019.9.29

映画を見てきたので、その感想を追記しました。

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自分を変えたい

物語の主人公は、堅書直実(かたがきなおみ)。

彼は京都の高校に進学するも、内気な性格からなかなかクラスメイトと打ち解けられず、唯一本だけが友達でした。

直実はそんな自分を変えるべく、『決断力』に関する本を買って日々実践しますが、どうにもうまくいきません。

そんなある日、三本足のカラスが、直実が図書館で借りた本を持って飛んでいってしまいます。

直実が慌てて追いかけると、着いたのは伏見稲荷大社で、本はすぐに取り返せました。

しかし、問題はここからです。

寒気を感じたかと思うと、フードを被った見知らぬ男が突然現れます。

直実は気味が悪くて逃げ出しますが、男は追ってきます。

やがて直実は、男に実体がなく、自分以外に見えていないことに気が付きます。

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記録世界

男は自分の、そして直実が何者なのかを教えるとして、『京都府歴史記録事業センター』に直実を連れて行きます。

そこでは、七年前の二〇二〇年からPluura、京斗大学、京都市の三者による共同事業計画『クロニクル京都』についてガイドが説明しています。

クロニクル京都とは、京都の地理情報をより詳細に、より正確に記録し、あらゆる時代のあらゆる情報を記録に残す事業です。

この事業を可能にしたのが量子記憶装置『アルタラ』で、無限の記憶領域を持っています。

しかし男は、それはあくまで表向きだといいます。

本当は、アルタラに京都の全事象をまるごと記録することで、ここはアルタラに記録された過去の京都だといいます。

そして直実は正体は、アルタラに記録された『過去の堅書直実』です。

なぜ男がそんなことを知っているのか。

男は今から十年後、二〇三七年の現実世界からアルタラの内部にアクセスした直実でした。

彼女を救う

直実は、未来の自分を『先生』と呼び、自宅に招きます。

この世界が記録されたデータであることになかなか納得できませんが、現実世界の完全な複写のため、二つを見極めることは不可能であり、納得せざるをえません。

先生がこの世界に来た目的、それは直実に彼女を作ることでした

直実は三ヶ月後、同じクラスの図書委員・一行瑠璃と付き合うことが決まっているのです。

しかし、ただ彼女を作ることが目的ではありません。

二人は付き合ってすぐ花火大会に行きますが、瑠璃は木の近くに立っていたため雷が落ち、二度と目を覚ますことはなかったのです。

先生の目的は記録の改ざんで、瑠璃を事故から助けることで、彼女の生きている世界を記録したいのだといいます。

例え現実の彼女が生き返らないと分かっていても、彼女の笑顔が欲しいのだと先生はいいます。

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秘策

先生の願いを叶えるべく、直実は奮闘します。

まず瑠璃と付き合うまでの過程ですが、それは『最強マニュアル』という先生手書きのノートに書かれているため、それに従います。

一方、瑠璃を助ける方法ですが、先生には秘策がありました。

それは神の手(グッドデザイン)と呼ばれる手袋です。

あの三本足のカラスが変形した手袋で、世界そのものを書き換える力を持っています。

もちろん制約もあり、直接触れた部分しか書き換えられず、情報量が多いものほど処理するのに時間がかかります。

人間などの生体は複雑で、処理が困難です。

あとは直実のイメージにかかっているため、直実は事故が起こるその日まで、ひたすら神の手を使いこなす練習をします。

成就

直実は先生のマニュアルをもとに、少しずつ瑠璃と距離を詰めていきます。

その中で、図書委員で毎年恒例のチャリティーの古本市をすることになり、瑠璃は亡くなった祖父の形見ともいえる本を多数持ってきます。

これで古本市は例年よりも規模を大きくできるはずでしたが、不幸なことにボヤが置き、瑠璃の持ってきた本が全て燃えてしまい、古本市が中止になってしまいます。

これも記録通りですが、直実は悲しむ瑠璃を元気づけるために、先生の命令に背いて神の手で燃えてしまった本の復元に挑みます。

復元できたのは四十冊ほどでしたが、なんとか最低限は用意することができ、これだけよけていて燃えなかったと瑠璃に渡します。

瑠璃は喜びを覚えると同時に、その中の一冊に注目します。

それは明らかに燃えたはずの本でした。

この時、瑠璃は理屈ではなく、直実が魔法で本を直したのだと確信し、彼のことをヒーローのようだと思います。

古本市が終わると、直実は瑠璃に告白し、彼女は笑います。

こうして二人は付き合うことになりました。

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先生の真意

そして、迎えた宇治川花火大会当日。

事故を回避するために、瑠璃を花火大会に誘わず、彼女に家に向かう直実。

そんな彼に近づく影があります。

それは狐面の人で、先生はそれを『自動修復システム』だといいます。

直実と瑠璃が歴史に反した場所にいるため、強制的に宇治に連れて行こうとしているのです。

必死に抵抗しますが、システム権限で強制的に二人は宇治に連れて行かれてしまい、事故が起きる時間まであとわずかです。

直実は神の手でブラックホールを作ると、瑠璃に落ちるはずだった雷を飲み込んでしまいます。

これで事故は防ぐことが出来ました。

直実は泣いて喜び、瑠璃もそんな彼を抱きしめます。

 

しかし、先生の本当の狙いはここからでした。

彼に必要だったのは『器』と『中身』の統一でした。

現実の瑠璃は本当に死んではおらず、脳死状態です

先生は現実の瑠璃(器)を生き返らせるために、アルタラの記録にある瑠璃(中身)を同調させることを思いつき、そのためには記録の瑠璃が直実に恋をし、事故に遭った時とほぼ同じ状態にする必要がありました。

神の手となっていたカラスは姿を変えて瑠璃を奪い去り、先生も直実に別れを告げます。

直実はただ茫然と見ていることしかできませんでした。

蘇生

ここからは本書にならい、先生のことを『ナオミ』と言い換えます。

現実のナオミは、アルタラにアクセスする実験の過程で負傷し、左足が動かないようになっています。

それでも努力が実り、瑠璃は十年ぶりに目を覚まします。

しかし、問題もありました。

アルタラセンター・センター長の千古をはじめ、アルタラの記録の一部が欠損していることに気が付きますが、原因が不明です。

このままバタフライエフェクトによって他の記録にも無視できない影響を与えるため、一度アルタラを停止し、記録を保持・修復する『リカバリー』をしなければなりません。

アルタラセンターのメインディレクターであるナオミには予想できたことで、リカバリーによって直実が消えるとしても仕方のない犠牲だと思い込みます。

これは瑠璃を失ってから、ナオミがずっと待ち望んできた瞬間でした。

そのために死に物狂いで勉強し、アルタラセンターに就職し、権限を与えられる立場まで上り詰めたのです。

彼女を取り戻す

一方、直実の周囲に狐面が多数現れ、京都を消し始めます。

もう終わりだと悟った直実ですが、目の前の空間に穴があることに気が付きます。

それは瑠璃が連れて行かれた穴にそっくりで、直実は意を決して穴に飛び込みます。

着いたのはどこかの神社の舞台で、待っていたのは直実を裏切ったあのカラスでした。

カラスは直実の味方だと人の言葉で話し、瑠璃救出に協力してくれます。

別人

病院のベッドで目を覚ました瑠璃。

自分がいつの間にか十歳も年をとっていて、十年後のナオミがいる。

その状況にパニックを起こしそうになりますが、目の前のナオミも自分の知る直実に思え、一度は彼の気持ちを受け入れようと思います。

しかし、途中で違和感を抱き、目の前のナオミが直実ではないことに気が付きます。

気まずい空気が流れると、そこにアルタラの中にしかいないはずの狐面が現れます。

そこでナオミは、ここもまた記録の世界であることに思い至ります

現実と記録を見分けることなど不可能で、考えるだけ無駄です。

狐面が現れたのは、瑠璃の記録をここに持ち込んだからです。

ナオミは必死になって瑠璃を守りますが、そこに直実がヒーローのように現れます。

幸せになる

直実は瑠璃を抱きかかえると、帰る方法を探します。

一方、ナオミも瑠璃を元の世界に返すことを決意し、二人をアシストします。

目的地は京都駅の大階段で、そこから元の世界に帰ることができます。

まずは瑠璃を帰すことに成功しますが、狐面たちが九尾の狐となって襲い掛かります。

彼らは重複する二人の直実を狙っていて、ナオミは自分を消すよう直実にいいます。

直実は頑なに二人で助かる方法を探しますが、その時、狐が攻撃してきて、ナオミは直実を庇って倒れます。

幸せになれと直実に伝えると、幸せだと言い残して消えます。

ナオミが消えたことで、狐面がいなくなります。

千古はこのタイミングで、アルタラの自動修復システムを止めます。

それはアルタラの本当の力を発揮させるということであり、人間の手から離れることを意味します。

この先、何が起こるかは誰にも分かりません。

しかし千古は、神様も多分はじめにこうしたのだろうと思い、スイッチを押します。

結末

気が付くと、京都駅の大階段に直実と瑠璃はいました。

二人はお互いの存在を確かめ合います。

直実は何が起きたのか説明できないし、これからどうなるのかも知りません。

しかし、ここはまだ誰も知らない世界なのだと確信していました。

何でもできるし、やりたいことは決まっています。

直実は幸せになろうと、自分で決めたのでした。

本当の結末

目を覚ましたナオミ。

『器』と『中身』の同調が必要だったのです、と女性がいいます。

直実ではなく『ナオミ』が大切な人(瑠璃)のために動いたことで精神が器と同調し、こうして目を覚ましたのです

女性は直実を助けてくれた手袋と同じ声で、その正体は瑠璃でした。

脳死状態にあったのは瑠璃ではなく、本当はナオミでした。

物語では、ナオミが瑠璃を生き返らせるために動いているように見えましたが、本当は瑠璃がナオミを生き返らせるために動いていたのです。

瑠璃は涙を流してナオミを抱きしめます。

ナオミも、うまく動かない手で彼女を抱きしめます。

新しい世界は、ナオミの書き込みを待っていたのです。

映画の感想

2019.9.29に映画館で映画を見てきました。

正直、CGの違和感が拭えなかったので迷いましたが、結果的に見て本当に良かったと思います。

原作に忠実

これは小説を読んだ人も安心だと思います。

小説が先に世に出ましたが、あくまで映画がある前提での発売だったので、どちらから入っても困らない親和性を持っています。

グッドデザインについてはスピーディーな映画に軍配が上がりますが、直実の細かい心理描写は小説の方が勝っていますので、やっぱり両方見るのが正解なんだと思います。

物語の本筋は少年と少女

映像で見ると、より堅書直実と一行瑠璃の物語なんだということが実感できました。

正直、瑠璃の声を担当した浜辺美波さんの声に違和感はありました。

しかし、『やってやりました』、『貴方は私を愛してくれたのですね』、この辺りのセリフはたまりませんでした。

イメージしていた一行瑠璃と同じ、もしくはそれ以上で、これだけでも浜辺さんが声をあてた意味があったと思います。

あとナオミ役の松坂桃李さんの声は良かったです。

積年の思いが良く表現されていました。

序盤はCGに違和感もありましたが、慣れれば全く問題なかったので、結局は見慣れているかどうかだと思います。

後半以降の戦闘シーンはCGの賜物

そして、後半以降。

小説を読んだだけではイメージしきれなかったシーン、特に戦闘シーンがCGによって鮮やかに描かれていました。

舞台が京都ということもあって、映えます。

大物俳優の安定感

僕がアニメに慣れ親しんでいるせいか、千古恒久役として子安武人さんの声が聞こえた瞬間、すごい安心感で包まれました。

あと、カラス役の釘宮理恵さん。

物語的には脇役ですが、存在感はちゃんと示してくれました。

このおかげで映画がグッとしまり、最後まで安心して見ることが出来ました。

最後は蛇足?

問題のラストシーン。

小説版では何も思いませんでしたが、映画で見ると蛇足感は正直否めません。

小説を読んでいても、最後にどういうこと?と混乱してしまい、スッキリした終わりとはいえません。

もちろん、感情豊かな瑠璃が見れたことは嬉しいのですが、最後の新しい世界の時点で終わらせても良かったのではとつい思ってしまいます。

僕はSF<青春恋愛だと思っているので、最後のどんでん返しは感傷に浸るにはっきりいって邪魔です。

そこを含めていい作品でしたが、最後に引っかかりを覚えてしまったのは残念です。

最後に

読んでいたイメージとしてはサマーウォーズのような描写で、なかなか文章だけではイメージしづらい部分もありました。

そして、最後のどんでん返しには驚きました。

現実と記録の区別がつかない、という設定が最後まで活かされていた点は良かったと思います。

あとは映画を見て、この部分を許容できるかどうかは見た人次第でしょう。

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