『VR浮遊館の謎―探偵AIのリアル・ディープラーニング―』あらすじとネタバレ感想!
人工知能探偵・相以(あい)と助手の輔(たすく)は、世界初のフルダイブ型VRに挑戦! あらゆるものが浮遊する館で、相以は魔法使いに変身! 早速、犯人当てゲームの最速クリア法を提案する。「一人ずつ殺していけばいいと思います!」ゲームとは思えない生々しい死体の出現、迫りくる殺人鬼の魔の手。はたして二人は浮遊館の謎を解き、無事に脱出できるのか。急転直下の推理バトル、新感覚ミステリ。
Amazon商品ページより
シリーズ第四弾となる本書。
前の話はこちら。
今度はAI探偵がVRに挑むという、超ハイテクな環境において謎解きが始まります。
このゲームは夢が現か。最後には怒涛の展開が待ち構えていて、油断はしないようお読みください。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
異常者
冒頭、一人の少年が描かれます。
少年には特殊な能力があり、それは人が星座のように見えることでした。
人をもっと違った星座にした方がずっと素敵だ。
そう思った少年はある日、ついに同級生を手にかけ、殺害してしまいます。
素手であらゆる骨を折ることなど小学生にできないと判断され、容疑者から外れ、それから長年に渡って犯行を重ねます。
世間では『骨折りジャック』と呼ばれますが、本人は自身を『星を紡ぐもの(スター・スピナー)』と呼んでいました。
そんな彼も警察に見つかり、発砲されて傷を負いますが、その後の消息は不明になってしまいます。
招待
合尾輔と相以は大きなプロジェクトに誘われます。
それは世界初のフルダイブVRゲーム機のお披露目で、通称EGGと呼ばれています。
ゲームのシナリオは輔たちが知っているAI・フォースが執筆したもので、そのゲームをAI探偵の相以がテストプレイすれば話題沸騰間違いなし。
ゲームには輔と相以の他に五人のプレイヤーがいて、あと一人はNPC。
こうして二人はEGGの世界に飛び込みます。
肉体を得た相以と輔は、他のプレイヤーたちと遭遇します。
この世界は一人一種類の魔法を使うことができて、舞台となる館内は無重力状態のようにあらゆるものが浮かんでいました。
この状態は魔法で作られた状況であり、プレイヤーはこの状況を解除したら勝ち。
犯人に指名されたプレイヤーは、逃げきれたら勝ちとなります。
輔と相以は今回ばかりはライバルとしてゲームに参加しますが、想定外のことが起こり、ゲームは猟奇殺人の現場と化します。
感想
相反する感想
僕は本書を読み終わって、良いところも悪いところもあると感じました。
先に悪いところをいうと、今回はAI探偵のアドバンテージがあまり活かされていないところです。
VRにフルダイブする関係で相以は肉体を獲得するわけですが、これによって演算能力はAIの高さを持ちつつも肉体を持った不自由さも同時に獲得し、通常のミステリと設定には大きな差がなくなってしまいました。
一方で、最後の謎解きパートは良かったです。
今回はゲームということで、通常のミステリとは違った視点や発想が求められます。
感覚的には米澤穂信さんの『折れた竜骨』を思い出しました。
魔法という何でもありのものを、条件をつけることでミステリに組み込む。
そして、それすらも読者をだますためのパーツでしかない。
自分にも解けるかも、などと意欲的に読みましたが予想は全く当たらず、それでも爽快感を味わえました。
輔がイマイチ
僕が今回感じたのは、輔というキャラクターがイマイチ立っていないことです。
相以の助手を自負していますが、推理は相以が完全にリードしており、輔がたどり着いた真実は相以もたどり着いたものでしかありません。
それは助手として問題ないのですが、普段優柔不断で閃きなども凡庸なのに、最後になって驚異的な推理力を披露するところも違和感があります。
そんな推理できる気配なんてなかったに…と何度思ったことか。
相以との奇妙な男女関係を成立させるために輔にも見せ場を用意しているわけですが、それはミステリにおける助手の役割だろうかと首を傾げることが何度もありました。
今後も読み続けたいのは前提として、この辺りがミステリとして徹底してくれると、作品の良さが引き立つのかなと思った次第です。
おわりに
大枠では面白いのに、細かいところでどうしても引っかかってしまった。
ちょっと残念な読了感ではありますが、新たなミステリの境地を切り開いたシリーズではありますので、次回作にも期待したいと思います。
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