『営繕かるかや怪異譚 その弐』あらすじとネタバレ感想!
営繕屋は 死者の声を聴き、修繕する。 人々の繋がる思いに涙する魂の物語
両親と弟が鬼籍に入り、かつて花街だったという古い町並みにある町屋の実家に戻ってきた貴樹。貴樹が書斎として定めた部屋はかつて弟が使っていた部屋だった。何気なく、書棚に立てかけられた鏡をずらしてみると、柱と壁に深い隙間があった。そしてその向こうに芸妓のような三味線を抱えて座るはかなげな着物姿の人影が見えた。その女と弟の死には関係があるかもしれないと探すうちに、貴樹がその女を見ずにはいられなくなり――。(「芙蓉忌」より)
Amazon商品ページより
他、「関守」「まつとし聞かば」「魂やどりて」「水の声」「まさくに」の全6篇を収録。
解説は織守きょうや氏。 2019年、第10回 山田風太郎賞最終候補作。
シリーズ第二弾となる本書。
前の話はこちら。

物語の舞台や主要人物は同じなので、前作を読んだ人にはスッと馴染みます。
一方で、前作に比べると焦点が怪異ではなく、そこにいる人や町になっている気がして、味わいが増しました。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
芙蓉忌
貴樹は、隣の家に住む女性を観察することを日課にしていました。
いつか消えてしまいそうな、芙蓉の花を思い出させる女性。
女性は一日部屋にいて、貴樹は一日女性を見ていました。
なにがそこまで彼をそうさせるのか。
止めなければと思っても止められず、貴樹は次第に囚われていきます。
関守
佐代は『通りゃんせ』という音楽が嫌いでした。
陰気で、気味の悪い曲。
歌詞の解釈で友人たちと意見が分かれる中、佐代はずっと怖いイメージを持っていました。
それは、彼女が幼い頃に住んでいた家の近くにある神社に起因していました。
まつとし聞かば
俊弘は息子の航のことで困っていました。
四年前に離婚して実家に帰ってきた俊弘。
航は当初、孤独でしたが、それを救ってくれたのは飼い猫の小春でした。
ところが、小春は車に轢かれて亡くなっており、さらに俊弘の母親も入院して家を離れています。
真実を伝えるべきなのに、航のことを考えると、俊弘は伝えることができずにいます。
魂やどりて
育は古い長屋に住んでいます。
古い民家をリフォームして住むことに憧れていて、育は次々に家の中を好みに変えていきますが、奇抜だけでそこに愛情はありませんでした。
ある日から、女性の声を聞くようになりますが、近隣住民の声ではありません。
育は次第に追い込まれていき、やがてその声の正体を知ります。
水の声
遥奈は工務店を営む隅田をたずねます。
理由は、彼氏である末武にプロポーズを断られてしまった話を聞いてほしいからでした。
結婚する気がない、などであれば納得がいきますが、末武は違います。
もうすぐ死ぬから結婚できない、というのです。
遥奈は末武から聞いた話をして、そこからだんだんと彼が言いたいことが浮かび上がります。
まさくに
樹の勉強部屋にある押し入れには上の段があり、そこが好きでした。
秘密基地ごっこがしたいわけではなく、一人になりたかったからです。
部屋に壁はなく、襖や障子に囲まれ、一人で何かしていても両親に気取られてしまいます。
そんな樹にとって押し入れが一人になれる場所でしたが、そこで彼は天井裏に空間があることに気がつきます。
感想
尾端の出番がさりげない
本シリーズは、起こった怪異による現象に対して、営繕屋である尾端がなんとかする、というのが基本形です。
それは前作と変わらないのですが、本書では尾端が全体に占めるウェイトが減り、それが味わい深さに繋がったように感じました。
建物などを大幅に変えるというよりも、ほんのワンポイントの変化でうまく付き合っていく。
とても自然な対処法だと思いました。
過剰に恐れず、淡々と起こったことに対して最低限の対応をする。
怪異が特別なものではなく、あくまで普段の生活の中にあるのだといっているようで、僕はこれくらいのタッチ感の方が好きでした。
町の深みが増した
尾端の立ち回りが変わったことも影響していると思いますが、登場人物や城下町に関して深みが増したように思えます。
各登場人物の背景が描かれ、その人と怪異が近づくことが自然だという雰囲気が流れます。
そこに城下町や家屋の様子が丁寧に描写され、町と人、怪異が一体となった物語が完成したのではないでしょうか。
前作が面白くなかったとは言いません。
しかし、本シリーズの面白さは退治とは異なる形で怪異と共存することであり、本書ではそれがしっかり描けていたのだはないかと思います。
おわりに
前作とは直接の繋がりがあるわけではないので、もし本シリーズを読もうかどうか迷っている時は本書から読み始めても良いかもしれません。
それくらいに、前作と本書で面白さに違いがあり、僕は断然本書を推します。
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