『ドミノin上海』あらすじとネタバレ感想!連鎖するドタバタ劇がパワーアップして帰ってきた
イグアナが料理されれば盗賊団が上海に押し寄せ、そこに無双の甘党が上陸。風水師が二色に塗り分けられ、ホラー映画の巨匠がむせび泣くと秘宝『蝙蝠』の争奪戦が始まった!革ジャンの美青年がカプチーノをオーダー、一瞬で10万ドルが吹き飛んだら、上海猛牛号で渋滞をすりぬけ、まぁとにかく寿司喰寧。歯が命のイケメン警察署長が独走し、青年が霊感に覚醒したとき、パンダが街を蹂躙する!張り巡らされた魔術に酔いしれよ!圧巻のエンタテインメント。
「BOOK」データベースより
恩田陸さんのドタバタコメディ『ドミノ』がさらにパワーアップして帰ってきました。
今回は舞台を上海を移し、行動範囲もスケールも格段に大きくなっています。
相変わらずの目まぐるしい視点展開に加え、今回は人間以外の視点も複数登場し、想像を超えるような展開があなたを待っています。
以下は本書に関する恩田さんへのインタビューです。
恩田陸が明かす、20年ぶりの続編『ドミノ in 上海』執筆秘話 「広げた風呂敷を畳むことができるか不安でした」
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
本書の特徴
本書は前作同様、ドミノという名前の通り、一つの行動が他の誰かに影響し、いつしかドミノ倒しのように連鎖は止まらなくなります。
登場人物は二十五人+三匹。
今回は人間以外も視点として登場し、前作以上に読めない展開に一役買ってくれます。
人間以外の方が意外と普通の感性をしていて、人間の方が揃いも揃って曲者揃い。
なんでそんなことをするの?という行動ばかりとるので、それらを恩田さんがどのようにまとめあげるのか、という所も本書の見どころになっています。
お宝を巡った争い
本書には『蝙蝠』という名前のお宝が登場し、作品の冒頭、それが上海に入ります。
窃盗品が穏やかではない方法で市場に登場し、その価値を知る人たちからすれば喉から手が出るほど欲しいものです。
誰もが『蝙蝠』を狙う中、それが運び込まれたのはなぜか人気ホテルの厨房。
なぜ厨房のようなところに運び込まれてしまったのか。
その理由はすぐに明らかになり、いきなりショッキングな場面から物語は始まります。
『蝙蝠』を主軸に物語は進み、全く関係のなかった人たちもドミノ倒しによって次第に巻き込まれていきます。
感想
止まらないドミノ
前作でもいつ止まるとも知れないドミノを面白おかしく読んでいましたが、本書は前作を軽く超えています。
文庫版で、六〇〇ページ近い文量。
連載期間も十年以上に及び、恩田さんも物語を畳むのにかなり苦労したのではないかと思います。
でもその苦労が実り、上海という異国を舞台にして、予測不能で最初から最後までテンポ良く楽しむことのできる名作がここに生まれました。
癖の強い登場人物
本書の登場人物はとにかく癖が強いです。
パンダの厳厳は存在自体がトリッキーなのであれですが、その他の人物も負けず劣らずの曲者揃い。
一見、ただの人間に見えても、一旦火がつくと止められないような強者揃いで、登場人物が多いのも関わらずすぐに誰がどんな人物かを認識できました。
人物が分かると、視点が数ページごとに変わっても混乱することはなく、映画のようなスピーディーな展開を脳内で繰り広げることができます。
映画化も面白そうだと考えたのですが、本書は小説という形態だからこそ活きるものであって、映画だと意外とありふれて見えてしまうのでは、と思いました。
難しい。
おわりに
恩田さん自身が楽しく執筆しているのが伝わってくる内容で、読んでいるこっちも楽しくて夢中になってしまいました。
執筆のスパンから考えてもさらなる続編を望むのは厳しそうなので、ドミノ成分が欲しくなった時にはまた本書に帰ってきたいと思います。
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