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伊坂幸太郎『AX』あらすじとネタバレ感想!恐妻家の殺し屋が主人公のシリーズ第三弾!

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「兜」は超一流の殺し屋だが、家では妻に頭が上がらない。一人息子の克巳もあきれるほどだ。兜がこの仕事を辞めたい、と考えはじめたのは、克巳が生まれた頃だった。引退に必要な金を稼ぐために仕方なく仕事を続けていたある日、爆弾職人を軽々と始末した兜は、意外な人物から襲撃を受ける。こんな物騒な仕事をしていることは、家族はもちろん、知らない。物語の新たな可能性を切り拓いた、エンタテインメント小説の最高峰!

「BOOK」データベースより

『殺し屋』シリーズ第三弾となる本書。

既刊は以下の通り。

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超一流の殺し屋・兜が主人公ですが、本書の魅力は非日常ではなく日常部分にあります。

犠牲を払って得た何気ない日常がいかに幸せで尊いものなのかがよく分かります。

そして、裏社会から抜けることがいかに難しいかも。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

タイトルの意味

内容に入る前に、タイトルの意味について。

『AX』とは『斧』を意味します。

本書中、兜と息子の克巳の会話の中で『蟷螂の斧(とうろうのおの)』という慣用句が登場しますが、そこからきています。

蟷螂とはカマキリのことで、力のない者が自分の実力を顧みずに強い者に立ち向かうことをたとえた慣用句のことで、後にこれが伏線になっていることが分かります。

ちなみ、本書は連作短編集で、『AX』は最初の短編のタイトルであり、この意味が本書全体にかかっているわけではありません。

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未収録の短編がある

本書は元々、章タイトルを並べるとアルファベット順になる予定でした。

しかし、本書の目次を見ると『ABCEF』になっていて、『D』が抜けていることが分かります。

本来、ここには『Drive』という一編が加わり、それで物語を締めくくるはずでした。

実際にイントロの部分は執筆され、月刊誌に掲載されましたが、当時の伊坂さんは燃え尽き症候群のようになってしまい、『Drive』を続けられなかったのだといいます。

その後、『EXIT』、『FINE』を加えて単行本化され、『Drive』は日の目を浴びることはありませんでした。

章タイトルを並べると確かに違和感を覚えますが、内容としては綺麗に締めくくられていますので、特に問題はありません。

あらすじ

恐妻家の殺し屋

兜は普段、文房具メーカーの営業として働くサラリーマンで、妻と息子の克巳を家族に持つ至ってどこにでもいそうな中年男性です。

しかし、その裏の顔は殺し屋で、すでに二十年近くその業界にいる超一流の殺し屋です。

兜は医師を通じて殺し屋の仕事を斡旋してもらっていましたが、ここにきて業界から足を洗いたいと考えていました。

当然、医師は兜にやめられると利益が減るため、業界から抜けるにはお金が必要だと彼を止めます。

兜はその言葉に従って最低限の仕事をこなしつつも、殺し屋をきっぱりやめ、妻と克巳と平穏に暮らす日を夢見るのでした。

日常と非日常

家での兜は妻の一挙手一投足に気を遣う恐妻家で、大学ノートに妻の扱い方のマニュアルを作るほどです。

しかし、妻と不仲というわけではなく、お互いに思い合っていることが分かるので、兜はストレスで胃を痛めながらも幸せな日々を送っています。

一方で、殺し屋としての仕事もこなします。

時には別の殺し屋から命を狙われることもあり、家から一歩でも出れば、そこには妻も克巳も知らない非日常が待っています。

それでも兜にとって一番怖いのは妻であり、このギャップがおかしくてたまりません。

決意

いくつかの仕事をこなし、兜は殺し屋をやめるための計画を立てて実行します。

しかし、計画は思わぬ結果を生むこととなりました。

後半からは克巳の出番が増え、やがて兜の物語が家族の物語へと変わって行きます。

『FINE』以降のあらすじを書くと重大なネタバレになりますので、そこから先はあなたの目でご確認ください。

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感想

本書から読んでもオッケー

シリーズ第三弾である本書。

タイトルに関連性はないため、シリーズものと気が付かず手にとってしまった人がいるかもしれません。

しかし、心配はいりません。

本書から読んでも十分楽しめる内容になっています。

もちろん前二作を読めばより深く物語に入り込めるので、読んでおくに越したことはありませんが、必須というほどではありません。

シリーズものだからと敬遠するには惜しいくらいに面白い作品なので、気になった方はシリーズ初でもぜひ読んでみてください。

相反する二面性

主人公である兜は現役の殺し屋なので、殺し屋としての冷静、冷酷な一面はもちろんあります。

一方で、妻の一挙一動に神経を使い、家族の幸せを願う姿は良いお父さんそのもので、相反するといってもいいこの雰囲気が両立しているのが本書最大の魅力だと思います。

一番怖いもの

殺し屋という死を何よりも身近に感じる生業をしているからこそ、その怖さは誰よりも知っているはずです。

しかし、兜にとって一番怖いものは妻であり、それ以上のものなど存在しません。

他人には理解できない心情ですが、克巳にはちゃんと理解されていて、この辺りにも家族として良い形を作っていることが分かります。

妻は確かに気分屋で理不尽なところもありますが、兜にとって愛するパートナーであり、夫婦仲はむしろ良好である点も良かったです。

苦労あるけれど、何だかんだ幸せ。

これは僕らもつい見落としがちな所なので、見直す良い機会になりました。

絵に描いた餅

本書の中で特に印象的だったフレーズです。

読んだ人であればすでに知っていると思いますが、これが伏線になっていて、それがすさまじい感動を生んでくれるのです。

兜の、そして家族の物語としてこれ以上ないほどの締めくくりなので、ぜひあなたの目でお確かめください。

おわりに

シリーズものですが、前二作を知らなくても十分楽しめる内容になっています。

よりエンタメ性が増し、自然と胸にこみ上げてくる感動がありますので、気になった方は本書からでもいいのでぜひ読んでみてください。

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