ミステリー

『遠まわりする雛』あらすじとネタバレ感想!古典部の一年を描くシリーズ第四弾

神山高校で噂される怪談話、放課後の教室に流れてきた奇妙な校内放送、摩耶花が里志のために作ったチョコの消失事件―“省エネ少年”折木奉太郎たち古典部のメンバーが遭遇する数々の謎。入部直後から春休みまで、古典部を過ぎゆく一年間を描いた短編集、待望の刊行。

「BOOK」データベースより

古典部シリーズ第四弾である本書は初の短編集です。

表題作『遠まわりする雛』を含めた七つの短編で構成されていて、古典部の一年間にわたる活動を記録しています。

時期によって古典部の面々の関係性や奉太郎の心情などが微妙に違っていますので、その辺りも楽しんでもらえると幸いです。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

やるべきことなら手短に

入学から一か月が経過した頃の話。

奉太郎と里志が話していると、えるが現れます。

彼女は奉太郎に熱を帯びた視線を向けます。

これは何かが気になる時のサインである、奉太郎にとって歓迎できるものではありません。

なぜなら彼の心情は、やらなくてもいいことはやらない、やらなければならないことなら手短に、という省エネ主義だからです。

そこで奉太郎は、えるが話し出す前に、神山高校の七不思議の一つについて話題を振ります。

それは秘密倶楽部(クラブ)という総務委員会が許可していない部活の勧誘メモが、この学校のどこかに貼られているというものでした。

えるの興味はすっかりそちらに向き、三人は調査に乗り出します。

そして、やがて奉太郎がクラブのことを口にした理由が判明します。

大罪を犯す

奉太郎はある日の授業中、隣の教室からえるの怒った声が聞こえてきます。

後で部活の時に確認すると、彼女は数学教師の尾道に対して確かに怒っていました。

尾道が何を勘違いしたのかまだ授業で習っていない範囲について生徒に質問し、解けないと罵声を浴びせたからです。

普段、そんな勘違いはしない教師が、なぜ授業の内容を間違えてしまったのか。

気になるえるの欲求を満たすために、古典部の四人はこの謎に挑みます。

正体見たり

夏休み、えるの発案で温泉旅行に行くことになった古典部の四人。

向かったのは摩耶花の親戚が経営する民宿でした。

この民宿は本館と別館に分かれていますが、それには理由がありました。

以前、本館の七号室に宿泊した人が会社のお金を使いこんでしまったことを理由に自殺し、それ以来、その部屋に宿泊する人は夜中に人影を見るようになります。

しかもその部屋で急な病気で亡くなった人も出てしまい、このままでは悪い噂が広がってしまいます。

そこでお祓いをするとともに別館を建て、これ以上評判が悪くならないようしたのでした。

その話を聞いた夜、えると摩耶花が首を吊った人影を目撃。

奉太郎は心霊現象など信じておらず、真実を知るために推理します。

心あたりのある者は

ある日、校内放送で生徒の呼び出しがありました。

駅前の巧文堂で買い物をした生徒は職員室の柴崎のもとまで来るようにと。

部室でそれを聞いていた奉太郎とえるは不思議に思います。

生徒指導部ではない教師が慌てて校内放送で呼びかける。

しかも内容から、あまり良い意味での呼び出しではないことが容易に想像できます。

では、なぜ柴崎は慌てているのか。

呼び出されている生徒Xは何をしてしまったのか。

奉太郎とえるは謎解きに挑みます。

あきましておめでとう

元旦、奉太郎とえるは荒楠神社の納屋の中に閉じ込められていました。

ことの発端は、みんなで参加した初詣にあります。

えるは千反田家の使いとして参加し、蔵にある酒粕をとってきてほしいと頼まれます。

奉太郎も手伝うために同行しますが、二人は間違えて蔵ではなく納屋に入ってしまいます。

間違いに気が付いて出ようとしますが、手違いで外から鍵を掛けられてしまいます。

大声を出せば助けが来るかもしれませんが、二人きりで何の用もない納屋で発見されればあらぬ誤解を生みかねません。

まして今日、えるは千反田家の使いとして来ているので、そんなことがあってはいけません。

そこで二人は、大声を出さずにこのピンチを外の人、出来れば自分たちの知り合いに知らせる方法を考えるのでした。

手作りチョコレート事件

中学三年生の時、里志は摩耶花からバレンタインチョコを渡されます。

しかし、まだ彼女に対して思いの決まらない里志は、カカオ豆から作らないと手作りチョコとはいわないと受け取りません。

これが摩耶花を怒らせ、一年後にリベンジすることになりました。

そして、一年後である高校一年生のバレンタインデーの日。

摩耶花は言われた通りのチョコを作りますが、えるが部室をちょっと空けた隙に盗まれていたのです。

ショックを受けるえるですが、奉太郎には思い当たる人物がいました。

遠まわりする雛

表題作。

えるの家の近くの神社では毎年雛祭りが行われ、えるは生き雛として参加しています。

ところが傘を差しかける人間が怪我で参加できなくなり、奉太郎は代役を頼まれ、雛祭りに参加します。

ところが、ここでトラブルが発生します。

予定していたルートで工事が行われていて、ルート変更を余儀なくされてしまったのです。

根まわしをしていたはずなのに、なぜこんなことになったか。

奉太郎がこの謎に挑みます。

この話でえるがどんな家で育ち、どんな立場にいるのかが明かされます。

やはり苦味の強い結末で、表題作にふさわしい内容でした。

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感想

一年の成長記録

本書はシリーズのこれまでの三作では描かれなかった時のことを描いていて、まさに古典部の一年の成長記録のような意味合いを持っています。

なので序盤の短編はまだどこかよそよそしさがあり、後になるにつれて親密度が上がっている様子が分かります。

これまでの三作に比べると事件や謎としては小粒ですが、考えて楽しい内容になっているので、自分で推理したい人にとっても満足いく出来になっています。

日常に転がっていそうな謎

ミステリというとどうしても誘拐、殺人など非日常的な内容になりがちですが、本書に登場するミステリ部分は日常のどこにでも転がっていそうなものばかりです。

特に学生の人であれば、こういった謎が学校やあなたの周りに転がっているかもしれません。

そう考えるとミステリが身近に感じられ、感情移入というか、自分の場合に置き換えて近い距離感で読むことが出来ました。

二年目に向けた補完

本書が前三作の隙間を補完してくれたので、もう一年生でやり残したことはありません。

次作以降から奉太郎たちが二年生に進級した後の話になります。

少しずつ流れる時間の中で、古典部の面々はどのような経験をし、どのように成長していくのか。

これからのストーリーを楽しみにさせてくれる、という意味でも重要な短編集となりました。

おわりに

一年を作品として四冊分も描いていますが、あっという間という感覚が大きかったです。

少しずつ卒業という一つの終着点が見えてきて、古典部がこの先、どこに向かっていくのか。

これからも、いやこれまで以上に彼らの活躍を楽しみに待ちたいと思います。

次の話はこちら。

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