『迷宮百年の睡魔』あらすじとネタバレ感想!人間は必要なものだと願う物語
百年の間、外部に様子が伝えられたことのない宮殿より取材許可を得て、伝説の島を訪れたミチルとウォーカロンのロイディ。一夜にして海に囲まれたと言い伝えられる島には、座標システムも機能しない迷宮の街が広がり、かつて会った女性に酷似した女王がいた。あらゆる前提を覆す、至高の百年シリーズ第2作!
Amazon内容紹介より
百年シリーズ第二弾となる本書。
前の話はこちら。
六百ページ近いボリュームがありますが、テンポの良い文章なので意外とあっさり読めました。
前作を土台によりミチルの深層に迫り、舞台設定もよりミステリー向きになっているので、前作が楽しめたという方はそれ以上の快楽を得ることができると思います。
この記事では、まだ本書を読んでいないという方にネタバレにならない範囲であらすじ、感想をご紹介したいと思います。
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簡単なあらすじ
前作同様、ミチルとロイディが主人公となって活躍します。
今回、物語の舞台となるのは百年もの間、世界との交流を拒絶してきた島、イル・サン・ジャック。
百年ほど前からドリィ家の個人住宅となっていて、人口は五百人程度。
外部との接触が極端に少ないなど、前作の舞台となったルナティック・シティと類似点が多くありますが、島という設定がよりミステリーの雰囲気をかもし出しています。
ミチルは取材のためにこの島を訪れますが、取材を申し込んだのには理由があります。
昔、婚約者のクジ・アキラが取材でこの島を訪れたことがあり、今はもういないアキラのことを知りたいと思ったからでした。
しかし、ミチルはまたしても予想もしていなかった事態に直面します。
ルナティック・シティの女王、デボウ・スウの母親であるメグツシュカがこの島の女王だったり、アキラのことを知っていて彼女に執着する王子、シャルル・ドリィに迫られたり。
そして殺人事件に直面し、ミチルには殺人の容疑がかけられてしまいます。
ミチルは犯人を追う中で、前作にも関係する大きな真実を知り、自分自身と向き合うこととなります。
キャラクターが馴染んできた
前作『女王の百年密室』でミチル、ロイディのキャラクターのユニークさは証明済みですが、本書ではそれがより際立っていました。
特にロイディ。
彼はウォーカロンですが、ミチルとの対話の中で人間らしいコミュニケーション方法を覚えていき、他のウォーカロンとの差を感じさせました。
人間のように感じられる場面もあり、ミチルはロイディのことを人間のように扱っています。
もしウォーカロンが人間に近づいた場合、両者の違いは何なのでしょうか。
いずれ作中で描かれる時がくるのかもしれません。
近未来なのに中世のような舞台
2100年代という未来の話で、ウォーカロンなど現代ではありえない技術・デバイスが多く登場します。
一方で、前作もそうですが物語の舞台は時代から取り残された孤立したエリアで、ミステリーと実に相性の良い設定になっています。
あまりミステリー要素はありませんが、舞台設定によってその雰囲気も味わうこともできるので、その点では単なるSF小説を超えていると思います。
読んだ方には漫画もおすすめ
前作同様、本書の漫画版もスズキユカさんが手がけています。
原作者なのではと思えるくらいに森博嗣さんの世界観を忠実に再現し、その中でスズキさん自身の魅力も詰め込んだ名作に仕上がっています。
前作と違い、漫画版を見てもネタバレ要素はないので、漫画→小説の順番でも問題ありません。
自分の頭の中で世界観を想像し、広げたいという方は小説→漫画の順番で読むと本作を二倍楽しめると思います。
ミチルの行き着く先
ミチルはアキラのことを忘れないために彼女の体で生きています。
しかし一方で、デボウとの会話ではアキラのことを忘れないのではという考えも出てきて、相変わらず行動と考え方が不安定でした。
前作で復讐も終え、ミチルは何を求めて生きていくのか。
ロイディがいてくれるのである程度安心して読むことが出来ますが、それでも痛々しい生き方につい心配になってしまいます。
ミチルの抱える葛藤や矛盾、悩みといったものに決着がつく日を望んでやみません。
おわりに
百年シリーズも次で最後です。
ミチルとロイディの活躍がどのように終えるのか楽しみたいと思います。
読んでいてちょこちょこWシリーズのことが思い出されたので、いずれ読み返してみるのも面白そうです。
次の話はこちら。
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