『図書館の魔女 第二巻』あらすじとネタバレ感想!魔の手が忍び寄るシリーズ第二弾
図書館のある一ノ谷は、海を挟んで接する大国ニザマの剥き出しの覇権意識により、重大な危機に晒されていた。マツリカ率いる図書館は、軍縮を提案するも、ニザマ側は一ノ谷政界を混乱させるべく、重鎮政治家に刺客を放つ。マツリカはその智慧と機転で暗殺計画を蹉跌に追い込むが、次の凶刃は自身に及ぶ!第45回メフィスト賞受賞作。
「BOOK」データベースより
シリーズ第二弾となる本書。
前の話はこちら。
第一巻では図書館やそこに関係する人々が丁寧に描かれ、まずはシリーズの根幹となる世界観が読者に提示されました。
本書ではそれを受け、物語が動き出します。
高い塔の魔女ことマツリカの驚くべき智慧と機転が見られるだけでなく、大国ニザマの容赦ない策略だったり、キリヒトの秘密だったりと、とにかく面白い要素がこれでもかと詰め込まれています。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
二人の秘密
キリヒトとマツリカは、地下水道を巡る謎解きのための冒険を通じて、二人だけの秘密を作っていきます。
そこには高い塔の魔女としてではなく、年相応の少女としてのマツリカが描かれ、これまでの厳しい様子とのギャップをまず楽しめます。
また冒険の中でマツリカの口からハルカゼやキリンの知られざる真実が語られ、キリヒトはマツリカを取り囲む人間関係の複雑さに驚きを隠せません。
序盤、物語としてはそう動きがありません。
しかし、この時間で語られることには多くの驚きや楽しみがあり、本シリーズの世界観がより一層深まっていきます。
政界での動き
この頃、一ノ谷の政界では少しずつ動きが見られていました。
元老院議員の一人であるコクシネルが行方不明になっていたのです。
彼を乗せた船は嵐の中で潰れてしまいますが、マツリカはコクシネルがそれを演出して見せたのだといいます。
そうすることで自分が死んだことにして、自分の命を狙う者から逃げたかったのだと。
しかし同時にマツリカは、コクシネルがすでに捕まり、殺害されていると推測していました。
ハルカゼは、今回の一件を裏から糸を引いて操っているのは彼女のもともとの雇い主であるウルハイ家だといいます。
この時点まで、マツリカにとってハルカゼは優秀な右腕であり、同時に議会筋から送られてきた間諜でもありました。
しかし、ハルカゼは間諜であることをやめ、完全にマツリカ側につくことを決意したのです。
それにマツリカも応え、情報を集めて次なる暗殺計画阻止のために動き出します。
感想
動き出した第二巻
本書のはじめで、ハルカゼやキリンのもう一つの顔が明かされます。
地下水道の冒険は動きこそ小さめでしたが、こういった驚きのある話によって面白さが生れていました。
そして、地下水道の冒険が終わると、一ノ谷とニザマの政界による争いが表面化し始めます。
目的のためならば、人を殺害することすらいとわない。
そんな相手を前に、マツリカたち図書館の勢力に一体どんなことができるのか。
力に対して、智慧と機転で立ち向かうとマツリカのその仲間たち。
著者である高田さんの言葉選びが相変わらず上手なおかげで、得た情報からの推理一つ一つが論理的かつ面白く、四〇〇ページ以上のボリュームを感じさせない疾走感を生み出していました。
裏の顔
本書では登場人物の裏の顔、もう一つの顔が次々に明かされます。
ハルカゼ、キリンももちろんそうですが、一番読者を驚かせたのは間違いなくキリヒトでしょう。
マツリカを補佐するために呼ばれた、不思議な少年。
目や耳など五感が異様に鋭いけれど、文字が全く読めないという図書館に果たして相応しいのか分からない少年。
そんなキリヒトの正体が本書にて明かされます。
詳しいことは読者の皆さんに読んで確かめていただくとして、そのすごさはマツリカに勝るとも劣りません。
本書の最大の見せ場といえますので、その瞬間を余すところなく堪能してください。
おわりに
はじめは覚えにくい名前、設定が多いな、と面倒くさく思っていましたが、いつの間にか自分の頭にすっかり馴染んでいて驚いてしまいました。
これもひとえに高田さんの言葉選び、文章力のおかげかもしれません。
面白さは物語が進むごとに増していくので、じっくり楽しんでもらえればと思います。
次の話はこちら。
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