『墓地を見おろす家』あらすじとネタバレ感想!墓地に囲まれたマンションをレイが襲う
新築・格安、都心に位置するという抜群の条件の瀟洒なマンションに移り住んだ哲平一家。問題は何一つないはずだった。ただ一つ、そこが広大な墓地に囲まれていたことを除けば…。やがて、次々と不吉な出来事に襲われ始めた一家がついにむかえた、最悪の事態とは…。復刊が長く待ち望まれた、衝撃と戦慄の名作モダン・ホラー。
「BOOK」データベースより
最初の刊行が1988年で、おすすめホラーといえばまず紹介されている本書。
当時のモダンホラーということで今読むと多少の古臭さはもちろんありますが、当時の背景があるからこそ生まれる底の知れない恐怖があり、ホラー好きであれば読んで間違いはない名作です。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
再スタートのはずが
加納哲平と妻の美沙緒、娘の玉緒は新しいマンションに引っ越します。
哲平の前妻・玲子は鉄平と美沙緒の浮気が原因で数年前に自殺。
夫婦にとって、このマンションに引っ越すことが人生の再スタートになるはずでした。
築浅で交通の便が良く、必要な施設が周りに揃っていて、なのに近隣のマンションの相場よりもずっと安い価格。
何もいうことがない物件ですが、唯一、広大な墓地に囲われていることだけがネックでした。
家族は気にしないようにしますが、引っ越してきた初日に飼っていた白文鳥が死亡。
嫌な予感がしますが、これは序章に過ぎませんでした。
次々と起こる怪現象
墓地に囲まれているということで元々入居者の少ない状況でしたが、ここにきて退去者が続出。
残ったのは大家夫婦に加えて加納家、そして加納家と交流のできた井上家だけでした。
不吉な予感を振り払おうとするも、怪現象が次々に起きます。
テレビに黒い影が映り込んだり、飼い犬のクッキーが何かを警戒したり、地下室で玉緒が何かに足を切られたりと、説明のつかないことだらけです。
美沙緒はこの地区に再開発計画があったことを知り調べてみると、様々な事実が出てきます。
大きなマンション建設を予定していましたが、霊園の移転に寺が大反対。
自治体は先手を打とうと先に地下道を掘りますが、結局計画は頓挫。
地下道は埋められてしまったといいます。
穏やかでない話を知り、美沙緒はさらに不安を募らせます。
残された加納家
その後も怪現象は続き、井上家も引っ越してしまいます。
霊の存在に懐疑的だった加納家もさすがに限界を迎えて引っ越し先を探しますが、決めた物件が燃えたり、退去予定の女性が謎の死を遂げたりと不幸が続きます。
自分たちはこのマンションから出られないのでは。
不安に思う中、なんとか引っ越し先を見つけて安堵しますが、ここら一帯に巣くう霊たちは家族を見逃してはくれませんでした。
感想
丁寧な描写
美沙緒視点で物語が進行する本書。
女性ならではの細かやかな観察のおかげでちょっとした違和感でも読者は感じとることができ、少しずつ物語に引きずり込まれていきました。
最初は何でもないと豪語していた哲平が霊を信じるようになる描写もとにかく丁寧で、ホラーとしていうことなしです。
一撃必殺のような強烈な怖さはありませんが、その分、読み終えるまで絶えずまとわりつく嫌な予感が楽しめますので、暴力的でない純粋な恐怖を求める人にはとにかくオススメです。
オチが賛否両論
一方で、オチに関しては賛否両論あると思います。
というのも怪現象の説明は特になく、ラストも風呂敷を広げっぱなしのような印象を受けるからです。
物事をシロクロはっきりさせたい人にとっては消化不良になるかもしれません。
僕もラストに向かって期待と恐怖が高まっていただけに、少し拍子抜けしてしまいました。
作品に対する許容範囲の広い人であれば問題にならないと思いますが、物事があるべきところに落ち着くようなきっちりとした完結を望む人は、Amazonや本屋などで一度試し読みをしてから購入を検討された方が良いかもしれません。
おわりに
『モダンホラーの金字塔』の呼び名に違わない名作です。
霊や妖怪など得体の知れないものから生まれるホラーを読みたい人であれば、ぜひ一度読んでみてください。
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