『馬鹿と嘘の弓』あらすじとネタバレ感想!XXシリーズ始動の第一弾
探偵事務所への匿名の依頼は、あるホームレス青年の調査だった。
彼は穏やかで理知的な人物だが、社会に絶望していた。
調査の目的に疑問を感じながら、探偵が尾行を続けるうちに、
青年の知人の老ホームレスが急死し、遺品から彼の写真が見つかる。それは依頼人から送られたのと同じものだった。
新シリーズ開幕。
Amazon商品ページより
XXシリーズ第一弾となる本書。
森作品でお馴染みになっている加部谷恵美が登場して主人公の一角となりますが、過去作との繋がりはそこまでないので、本書から読み始めても問題ありません。
探偵事務所に舞い込んでくる依頼の謎も面白いですが、捜査の過程での所長・小川令子や恵美の心情が見所で、人間の多面性を見ることができます。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
あらすじ
人探し
ある日、令子の探偵事務所にネット経由で依頼が舞い込みます。
柚原典之という男性を探してほしい。
若いにもかかわらずホームレスをしていて、今は近場にいるということです。
秘密裏に見張るわけでもなく、柚原に声を掛けても良い。
けれども保護する必要はない、という何とも目的の見えない依頼でした。
おおよその場所が分かっているのであれば、自分で探せばよいのではないか。
あるいはそうできない理由があるのか。
令子は依頼主が分からない状態で、恵美と共に調査を開始します。
接触
恵美は柚原との接触に成功します。
柚原は冷静沈着で、頭脳も明晰。
やけになってホームレスをやっているわけではない理知的な人間に見えました。
電話番号、メールアドレスも交換し、わざわざ常に見張る必要もない。
冒頭でここまで成果が出てしまったことで、この後はどうするのか。
疑問は残りながらも、二人の調査は続きます。
関係性
物語の中で、柚原は同じくホームレスであろう飯山健一という男性と知り合います。
そして、飯山はその後すぐに救急車で運ばれることとなり、脳梗塞で亡くなってしまいます。
恵美は柚原に飯山との関係性を聞きますが、知り合い以上の関係ではないと主張。
今回の依頼とは特に関係がないように思えましたが、物語が進行するにつれて、今回の依頼に彼が関係していることが見えてきます。
さらに複数の人間と柚原の関係性が見えてきて、依頼の裏にある事情や人の心情が明らかになります。
感想
先の読めない展開
僕は終始、令子や恵美と同じ気持ちでした。
この依頼の目的、意図は何なのだろう。
やること自体は簡単ですし、収入としても申し分ない。
けれども世の中、そう甘い話がないことを知っているので、どうしても裏にある思惑や事情が知りたくなるというのは人として自然な欲求だと思います。
本書はその欲求がお預けをくらいながらも、少しずつも情報が開示されていくので、その塩梅がちょうどよく、最後までペースを落とさず読むことができました。
令子と恵美のパーソナリティ
本書のもう一つの見所は、令子と恵美のパーソナリティです。
表面上の会話では恵美が天真爛漫で、大人で常識的な令子がそれに応えるという図式に見えます。
ところがそれぞれの視点パートを読むと、印象が変わります。
令子は会話の時と印象は変わらず、極めて常識人です。
一方で恵美は、明るい様子の裏で極めて冷静で、柚原の思う非常識な疑問も受け入れるだけのキャパがあります。
それは恵美もまた生きることや幸せなどについて、世間の常識とされることに疑問を抱けるだけの余地がある、あるいは生きることへの執着が薄い様子が見て取れます。
この危なさは令子もある程度承知していて、それが表層に出てくる時にフォローしてくれるので、良いコンビだなと一冊でよく分かりました。
おわりに
物語のネタ、キャラクターに派手さはありませんが、どんなことでも冷静に見ることのできる視点。
日常ではまずありえない、地味だけれどもウェットな会話は間違いなく森作品のそれで、森作品愛読者であればまず間違いなく刺さる一冊でした。
次の話はこちら。
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