『歌の終わりは海』あらすじとネタバレ感想!XXシリーズ第二弾
妻の依頼は、浮気調査だった。
夫は、数多くのヒットソングを生み出した作詞家。
華やかな業界だが、彼自身は人づき合いをしない。
そのため彼に関する情報は少なかった。豪邸に妻と息子と暮らし、敷地内には実姉の家もあった。
苦労の多かった子供時代、生活を支えた姉を大切にしていて、周辺では「姉が恋人」と噂されていた。探偵による監視が始まった。浮気の兆候はない。
Amazon商品ページより
だが妻は、調査の続行を希望。
そして監視下に置かれた屋敷で、死体が発見される。
XXシリーズ第二弾となる本書。
前の話はこちら。
浮気調査を依頼されたけれども、浮気をしている素振りが一切見えない。
依頼主である女性は離婚するつもりはなさそうで、それでいて金払いが良い。
目的が読めない中で、次第に事件に巻き込まれていく流れが読んでいて面白かったです。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
浮気調査
小川令子のもとに大日向聖美が訪れ、夫である慎太郎の浮気調査を依頼します。
ここまではあることですが、依頼にいたった経過が不自然です。
慎太郎は作詞家として家から滅多に出ず、浮気をしている証拠もない。
あるのは、慎太郎が浮気しているという聖美の勘だけ。
しかもそれは疑惑ではなく、確信なのだといいます。
令子は釈然としませんが、聖美は調査費用に糸目をつけず、報酬としては破格です。
結局令子は依頼を引き受け、所員である加部谷恵美とともに調査を開始します。
不自然
令子は知り合いで探偵の鷹知に連絡をとります。
すると鷹知は慎太郎の姉・沙絵子から依頼されたことがある関係性で、大日向家と繋がりがあることが判明します。
探偵である鷹知と繋がりがあるにも関わらず、なぜ初対面である令子に浮気調査を依頼するのか。
依頼のきな臭さが増しますが、やることは変わらず、令子は調査を続けます。
深まる疑念
慎太郎の行動を見張りますが、聖美が言うように家から滅多に出ません。
出るとしても犬の散歩くらいで、その間も怪しい行動はありません。
浮気とは程遠い人間でした。
さらに驚くべきことに、恵美が張り込み中に、鷹知が大日向家に入っていくことを目撃します。
鷹知は慎太郎ではない大日向に呼ばれたのだといいますが、なぜ大日向家は二組の探偵を雇う必要があるのか。
漠然とした不安が漂う中、令子と恵美は事件に巻き込まれていきます。
感想
凡ミス
これは本書の感想とは直接関係ありませんが、僕はなぜかXXシリーズであることを知らずに購入し、読む直前になって凡ミスをしていたことに気が付きました。
XXシリーズはGシリーズ、Xシリーズの後にあたる作品で、僕はGシリーズを二冊読んだのみでした。
辛うじて恵美のことを知っていて、森作品でお馴染みの萌が出てきたことで救われましたが、改めてタイトルだけで判断をしてはいけないという貴重な経験ができました。
得体の知れない不安
依頼主である聖美と、調査対象である慎太郎はいつまで経っても得体が知れません。
令子と恵美が慎太郎に張り付いても、一向に人間性が見えてきません。
どんな人で、どんな交友関係があり、今どんな状態に置かれているのか。
聖美から提供された情報も皆無に等しく、これで良いのか?と令子が思うたびに、僕も同様の気持ちを抱きました。
その点において鷹知、恵美が冷静だったり大らかだったりするので、何とかなるだろうという安心感もあって、良いバランスでした。
生と死
最近読んだ『噓つきみーくんと壊れたまーちゃん』でも取り扱っていましたが、本書でも『生と死』について考えさせられます。
主人公側である恵美にも死にたいと考えた時期があるということで、そう思う人の心情が綴られます。
嫌なことがあって明確に死にたいと思うこともあれば、生きる気力を失ったことによる消極的な死もあり、はたまた目的達成のための死というものもあります。
結末自体に驚きはありませんでしたが、そこで提示されるものには考えさせられるものがありました。
死ってなんだろう。
誰にでも等しく訪れるそれを思うと、生きることが無意味に思えたり、逆にちゃんと生き切らないといけない、とも思います。
今後生涯にわたって答えが出ない問いではありますが、また一つ新たな視点を獲得して、シリーズ未読でも十分に楽しめました。
おわりに
シリーズを追っていないという凡ミスをしたにも関わらず、楽しめたのは嬉しい誤算でした。
改めてGシリーズを挫折した箇所から読み始め、次巻が文庫化される前に追いつきたいと思います。
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