綾辻行人『Another』あらすじとネタバレ感想!新たな代表作となった学園ホラー
夜見山北中学三年三組に転校してきた榊原恒一は、何かに怯えているようなクラスの雰囲気に違和感を覚える。同級生で不思議な存在感を放つ美少女ミサキ・メイに惹かれ、接触を試みる恒一だが、謎はいっそう深まるばかり。そんな中、クラス委員長の桜木が凄惨な死を遂げた!この“世界”ではいったい何が起きているのか!?いまだかつてない恐怖と謎が読者を魅了する。名手・綾辻行人の新たな代表作となった長編本格ホラー。
「BOOK」データベースより
奇妙な「二人だけの孤独と自由」を過ごす中で、恒一と鳴、二人の距離は徐々に縮まっていく。第二図書室の司書・千曳の協力を得つつ、“現象”の謎を探りはじめるが、核心に迫ることができないままに残酷な“死”の連鎖はつづく…。夏休みに入ったある日、発見させる一本の古いカセットテープ。そこに記録されていた恐ろしき事実とは!?―ゼロ年代の掉尾を飾った長編本格ホラー、驚愕と感動の完結巻。
「BOOK」データベースより
書店で表紙を見てからずっと気になっていた作品ですが、ようやく手を伸ばすことにしました。
綾辻行人さんといえば『十角館の殺人』だと勝手に思い込んでいましたが、本書を読んでその浅はかな認識は簡単にひっくり返されました。
最初はちょっと不気味な学園ものくらいに考えていましたが、とんでもありません。
謎が謎を呼び、与えられた情報から推理するミステリ要素もあれば、それ以上に理解を越えた恐怖をリアルに描くホラー要素もあり、綾辻さんを語る上で外せない作品であることは間違いありません。
以下は新本格ミステリ三十周年を記念したインタビューで、本書にも触れています。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
転校
主人公の榊原恒一は父親の一年に及ぶ海外の仕事の影響、そして自身の病気療養のために東京を離れ、夜見山にある祖父母の家に預けられることになりました。
祖父母の家には今は亡き母親・理津子の妹、怜子もいます。
優しい怜子や祖父母のおかげで寂しい思いはしませんでしたが、夜見山には数十年前から続く恐ろしい『災厄』が存在し、恒一は次第にそれに巻き込まれていきます。
謎の少女
恒一は夜見山にきてすぐ、二度目となる『自然気胸』という肺がパンクしてしまう病気にかかり、入院します。
これから同じ中学のクラスメイトとなるということで、代表してクラス委員の風見と桜木がお見舞いに来てくれました。
一見友好そうに見える二人ですが、妙な質問をいくつもしてきたり、握手を求めてきたりと行動に不思議な点が見られます。
恒一は二人の様子を不思議がりますが、この時点でその意味は分かりません。
また恒一は病院内で、転校予定の中学の制服に身を包んだ少女に出会います。
少女は左目に眼帯をつけていて、『ミサキメイ』と名乗ります。
メイの目的地は地下二階ということでしたが、そこには倉庫や霊安室しかなく、病院関係者でもない少女が向かう用事などないはず。
不思議な雰囲気を持つメイという少女は一体何なのか。
恒一が彼女の正体を知るのは、もう少し後のことです。
いないもの
無事に退院し、転校した中学に初めて登校した恒一ですが、初日から違和感を覚えます。
病院にお見舞いに来てくれた風見たちと同様、担任の先生や他のクラスメイトたちの間には不自然な緊張感が漂っていますが、恒一にはその理由が分かりませんでした。
さらに驚いたのは、メイが同じクラスだったということです。
漢字で書くと『見崎鳴』。
クラスメイト全員は、鳴がまるでその場にいないかのように振舞い、誰もその行いを注意しようともしません。
それは先生も同様でした。
さらに鳴の机だけがひどく古びていて、ここから連想されるのはいじめですが、それにしてもやりすぎというか、徹底されすぎています。
恒一のこの違和感は当たっていて、いじめという認識が誤りであることが後に分かります。
彼らは恒一の知らない秘密を知っていました。
深まる謎
恒一は何度も鳴に話し掛け、だんだんと彼女のことを知ります。
鳴は幼い頃の事故で左目を失い、義眼をつけていて、それを隠すために眼帯をつけていること。
鳴の家は球体関節人形を取り扱うお店を営んでいること。
人形は鳴の母親が作っていて、その中には鳴にそっくりな人形があること。
恒一が鳴と病院で会ったあの日、病院で『藤岡未咲』という人物が亡くなり、鳴はその未咲に届け物をしていたこと。
知れば知るほど鳴の現実味が薄れ、恒一は、本当に鳴は存在するのか?と疑心暗鬼になります。
二十六年前
恒一はクラスに蔓延する不自然な空気の理由を知ろうと調べていると、二十六年前の事件にたどり着きます。
二十六年前、恒一の学校でミサキという名前の人物が亡くなっていました。
しかしクラスメイトは、ミサキは死んでいないかのように振舞い、死んだという事実を受け入れないまま卒業式を迎えます。
すると、事件が起きました。
教室で記念撮影をした時、亡くなったはずのミサキが写真に写っていたのです。
恒一の母・理津子もこのミサキと同級生で、この時、そしてそれ以降に何があったのか。
恒一はさらに調べることにしました。
連続した不審死
恒一が謎を調べる中で、それらは起きました。
クラスメイトの桜木が階段から落ちると、運悪く持っていた傘が喉に突き刺さって死亡します。
これを皮切りにクラスメイト、もしくはその親族が立て続けに亡くなる事故が起き、その頻度はとても偶然で片付けられるものではありませんでした。
そしてある日から、恒一は鳴同様、『いないもの』として扱われるようになります。
災厄
いよいよおかしいと思った恒一は鳴に聞き、二十六年前から続く災厄について教えてもらいます。
二十六年前、ミサキが亡くなったあの日から、ミサキの在籍していた三年三組は死に近づいてしまいました。
そしてあるきっかけで始まると、三年三組では毎月、一人以上の死者が出るのだといいます。
その範囲はクラス関係者ということで、生徒やその家族、先生にまで及びます。
あるきっかけとは、誰も気が付かないうちにクラスの人数が一人、もっといえば死んだはずの人間が増えていることです。
恒一たちのクラスで謎の現象が始まっていることは明らかで、つまり知らない死者が一人増えていることになります。
しかし、記憶や記録は辻褄が合うように改ざんされてしまうため、増えた人物を特定することはできません。
風見たちが病室で恒一と握手していますが、あれは恒一が死者かどうかを見極めるための行動でした。
死者のように冷たくないことから、恒一は死者ではないと認識されています。
この一連の出来事は呪いや災厄として表現され、今に至るまで語り継がれてきました。
もちろん対抗策も講じられていて、その一つが『増えたもう一人の代わりに、誰か一人をいないものにしてしまう』というものです。
それが鳴であり、それでも死が止まらないことから効果を高めるために恒一も『いないもの』として扱われるようになったのでした。
終止符を打つには
事情を知った恒一はそれに逆らわず、鳴とだけ過ごすようになりますが、それでも死は止まらず、一刻も早い対処が求められました。
この厄災を止めるには、増えたもう一人を探すしかありません。
こうして恒一や鳴、そしてクラスの関係者は疑心暗鬼になりながら増えた死者を探すことにしました。
しかし、増えた一人は一向に見つからず、悲劇はまだまだ続きます。
感想
上下巻でも飽きないスリルある展開
上下巻でかなりのページ数ですが、最後まで全く飽きません。
上巻はいわば問題提起のパートですが、謎が謎を呼び、本当のことが知りたいとページをめくる手が止まりません。
下巻に入るとますます止めるタイミングを失い、物語の生み出す圧倒的な世界観に飲み込まれていきます。
それくらい勢いがあるし、謎を解明する中でのスリルがたまりませんでした。
ホラーとしての恐怖、そしてミステリとしての納得のいく謎解き。
綾辻さんの新たな代表作といわれて納得の名作です。
ホラーに頼りきりでないミステリの良さ
事件が起これば起こるほど超常現象に思え、ミステリが入り込む余地がないように思えますが、死者を探す過程、そして死者の正体には思わずなるほど、と声を出てしまいました。
もちろん、説明がつかない現象や能力もあるのでリアリティに欠ける部分はあります。
しかし、それを前提・条件としてしっかり提示して、その上で納得のいく答えを出してくれるので、本書はフェアなミステリとしても秀逸だと思います。
単なるホラーで終わらないところに、綾辻さんがこれまで培ってきたミステリに関する知識、センスが活かされています。
ラストがちょっと物足りない
最後に物語の中核となる『死者は誰か?』が明かされ、その説明も納得のいく素晴らしい仕掛けでした。
ミステリという点においては大満足のいく出来です。
しかし、ホラーとして見た場合に、その恐怖が後半にかけて薄くなってしまったのがちょっと残念でした。
物足りないと感じたのは、僕が本書にミステリではなくホラーとしての面白さを望んだからかもしれません。
最後に批判的な意見を出してしまいましたが、広げた大風呂敷がきっちりとたたまれていましたので、その点においても本書は、これはこれで完成しているのだと思います。
おわりに
綾辻さんの代表作といえば『十角館の殺人』と思い込んでいましたが、まさかこんなに素晴らしい作品がまだあったなんて驚きです。
デビュー二十二年目で新たな代表作が生まれたのですから、これから綾辻さんの作品を読み始める人のいい試金石になるのではないでしょうか。
作風からも若い読者が増えて、綾辻さんにとっても大きなターニングポイントになったのではないかと思います。
本書には外伝にあたる『Another エピソードS』もありますので、本書の世界観に惹かれたという方はぜひ挑戦してみてください。
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