小説

『アルジャーノンに花束を』原作小説のあらすじとネタバレ感想!頭の良さでは分からない、人の心の真実

32歳になっても幼児なみの知能しかないチャーリイ・ゴードン。そんな彼に夢のような話が舞いこんだ。大学の先生が頭をよくしてくれるというのだ。これにとびついた彼は、白ネズミのアルジャーノンを競争相手に検査を受ける。やがて手術によりチャーリイの知能は向上していく…天才に変貌した青年が愛や憎しみ、喜びや孤独を通して知る人の心の真実とは?全世界が涙した不朽の名作。著者追悼の訳者あとがきを付した新版。

「BOOK」データベースより

今から六十年以上前に発表された作品ですが、全く古さを感じさせないことに驚かされる作品です。

累計320万部(Amazon内容紹介より)を記録し、日本では山下智久主演で連続ドラマ化されたことでも話題になりました。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

知的障害

チャーリィ・ゴードンは三十二歳ですが、知的障害によって六歳児程度の知能しか持っておらず、パン屋で働きながらビークマン大学の知的障害成人センターに通っていました。

ある日、成人センターの教師のアリスが、ビークマン大学のストラウス博士とニーマー教授を紹介してくれます。

彼らは知能を発達させるための研究のしていて、賢くなりたいチャーリィはこの研究の被験者に選ばれました。

アルジャーノンとの出会い

この研究の肝は脳における外科手術にあり、すでに前例がありました。

それがハツカネズミのアルジャーノンです。

アルジャーノンは手術によって賢くなり、チャーリィはその姿に感動して自分も賢くなりたいと願うのでした。

ちなみにこの手術ですが、かつて精神疾患の治療のために行われていた『ロボトミー手術』がモデルではないかと言われています。

天才になって得たもの

手術は無事に成功し、チャーリィの知能は急激に上昇。

そのスピードはすさまじく、いつしかアリスや博士たちをも追い越します。

これはチャーリィの望んだことであり、これまで見えていなかったもの、知らなかったことをあっという間に吸収していきます。

しかし、良いことばかりではありませんでした。

実はいじめられていたことに気が付いてしまったり、母親に捨てられていたことを知ってしまいます。

そして、知能は発達しても精神的に未熟なチャーリィは他人とうまく関わることができず、やがて孤立していくのでした。

研究の欠陥

問題は他にもありました。

アルジャーノンの知能が退行しはじめたのです。

チャーリィは自ら研究を進め、アルジャーノンや自分が受けた手術の欠陥を見つけますが、解決策は見つかりませんでした。

アルジャーノンの身に起こったことは、いずれ自分の身にも訪れる。

これまで身に付けてきた知識や知能が急激に失われることに恐怖を抱くチャーリィですが、その中で見つけたのは、天才だったチャーリィには見えていなかった人の心の真実でした。

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感想

圧倒的なリアリティ

作者のダニエル・キイスは、『わたしはチャーリィ・ゴードンである』と本書についてコメントしています。

それによってチャーリィの目を通した世界の確かな描写が本書に吹き込まれ、読者はまるいでチャーリィになったような気持ちで本書を読むことが出来ます。

手術の前後でチャーリィの知能は大幅に変わり、それはまるで幼児と天才ほどの隔たりがあります。

どちらも難しい描写ですが、本書はそれを見事に両立しています。

それがあるからこそ、チャーリィの目を通して見る世界が正確に読者に伝わり、人の心の真実という難解な答えが実感を持って伝わったのだと感じました。

幸せとは何か

チャーリィは自身にコンプレックスを抱いていて、研究に参加して頭が良くなればみんなが喜んでくれる、幸せになれると信じていました。

しかし、現実はそうではありませんでした。

チャーリィは頭が良くなることで他人を見下す嫌なやつになり、様々な人から避けられるようになってしまいます。

人間関係において、頭の良さは必ずしも必要なものではなく、笑顔だったり優しさだったり、もっと根本的で大切なことってありますよね。

僕らもついつい見落としがちなことで、チャーリィはその身をもってそのことを示してくれます。

そして、急速な知能の衰えとともに愛や友達の大切さを知るところに皮肉や儚さが詰まっていて、とても切なくなりました。

人間、例え分かっていても、それを手放すことでしか本当の意味でその大切さに気が付けない。

そのことを本書は教えてくれます。

和訳が素晴らしい

僕は海外作品を読む上で、和訳に違和感がないかをどうしても重要視してしまいます。

もちろん言語が異なりますので、日本語に訳すのが難しい部分があることも十分承知しています。

しかし、違和感を覚えてしまうと急に内容が頭に入ってこなくなってしまうので、いつも海外作品を手にとる時はドキドキします。

その点において、『アルジャーノンに花束を』は直訳のような違和感がなく、ユーモアかつ引き込まれる魅力的な和訳の作品でした。

作品が持つポテンシャルはもちろんですが、和訳が秀逸だからこそ日本においても多くの人に感動を与え、今もなお語り継がれているのだと思います。

和訳の問題で海外作品を敬遠しているという方は、ぜひ試し読みからでいいので挑戦してほしいと思います。

Kindle版がおすすめ

内容とは関係ありませんが、特に紙の書籍へのこだわりがなければ、ハヤカワ文庫の新版に関してはKindleをおすすめします。

というのも、文庫本といいつつも、一般的な文庫本よりも背が高く、ブックカバーにおさまりきらなかったからです。

そのため外で読むのを止め、自宅で読むことにしました。

もちろん新品での購入であれば書店のカバーをつけてもらえるので、そういった場合は紙の書籍でぜひ読んでください。

もし中古で購入を検討していて、通学・通勤中など外で読みたい方はKindle版でも検討してみてください。

おわりに

この先も本書は古臭いなどと言わせないほど輝き、不朽の名作といわれる。

そんなことを読後に強く感じました。

10代に薦めたい泣ける本第一位として紹介される本書ですが、僕は正直、これを10代で読んでも今感じるほどのことは感じられなかったと思います。

出来れば大人になり、人の心の真実を見失った時にこそ本書を読み、その大切さを再認識するのが良いのかなと思いました。

もちろん、柔軟な思考を持っているうちに本書に出会い、その大切を見失わないようにできれば理想的ですね。