『13階段』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!
犯行時刻の記憶を失った死刑囚。その冤罪を晴らすべく、刑務官・南郷は、前科を背負った青年・三上と共に調査を始める。だが手掛かりは、死刑囚の脳裏に甦った「階段」の記憶のみ。処刑までに残された時間はわずかしかない。二人は、無実の男の命を救うことができるのか。江戸川乱歩賞史上に燦然と輝く傑作長編。
「BOOK」データベースより
高野和明さんのデビュー作であり、第47回江戸川乱歩賞を受賞した作品です。
審査員の満場一致が得られたことで有名ですが、読んでみると新人とは思えない落ち着いた文章、難しいテーマを見事に書き切る構成力など本当に驚かさせることばかりで、知らずに読めば大御所小説家かと思うほどです。
ストーリーとしてはそこまで入り組んでいるわけではないので、読者は安心して読み、死刑やそれに関わる制度の矛盾についてじっくり考えることができます。
それでいて結末に辿り着くまでに何度も驚かされるので、一気読み必至です。
この記事では、そんな本書を魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
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タイトルの意味
タイトルである『13階段』が意味するもの。
それは処刑台です。
戦後の処刑台は階段が13あり、そこからきています。
しかし、現在の処刑台が13段あるかは不明で、今では絞首台、死刑という意味でも用いられます。
あらすじ
冤罪を晴らす
三上純一は二十五歳の時、佐村恭介と何らかのきっかけがあって喧嘩になり、その末に彼を殺害してしまいます。
それによって純一は二年間服役し、仮釈放されますが、そんな純一を待っていたのは悲惨な現実でした。
弟は犯罪者の弟として人生を歩むことになり、両親は被害者との和解のための損害賠償に困窮し、いつ家庭が崩壊してもおかしくない状況でした。
現実を叩きつけられる純一ですが、彼の前に刑務官の南郷が現れ、状況が一変します。
南郷は服役中から純一に目をつけていて、弁護士の手伝いをしないかと持ち掛けます。
それは死刑囚の冤罪を晴らすというもので、報酬も破格です。
純一は報酬もそうですが、自分の手で誰かの命を救いたいと思い、この依頼を受けるのでした。
事件
純一と南郷は弁護士の杉浦と会い、依頼の詳細について聞きます。
依頼主は教えてもらえませんが、冤罪を晴らす相手は樹原亮。
彼の引き起こした事件はこうです。
当時、バイク事故を起こした亮を、宇津木啓介・芳江夫妻が発見。
まだ携帯電話がなかったため、夫妻は目的地である啓介の両親の実家で電話を借りようとしました。
ところが、実家には惨殺された両親の宇津木耕平・康子の死体があり、事態は思わぬ方向に展開します。
家からは預金通帳や印鑑、キャッシュカードが盗まれていて、強盗犯の可能性が出てきます。
また樹原について、彼はこれまでの非行歴から保護観察処分を受けていて、彼を担当する保護司が耕平でした。
被害者かと思われた樹原を調べると、彼の持ち物から耕平のキャッシュカードが見つかり、彼は一転、容疑者となり逮捕されます。
凶器や預金通帳、印鑑が見つかりませんが、スコップが見つかったことから山に隠したと推測。
大規模に捜索しますが、ついに見つかりませんでした。
そして当時、樹原はヘルメットを被っておらず、共犯者がいて、逃げたのではと考えられました。
ここで樹原から話が聞ければ捜査は違った進展を見せたかもしれませんが、彼はなんと記憶喪失になっていて、事件当日のことを覚えていませんでした。
今の日本の制度では樹原は死刑を待つしかなく、これまでに四度の再審請求を行い、もうすぐ四度目が棄却されようとしています。
純一と南郷は、五度目の再審請求のための証拠を集めるのが今回の仕事でした。
死刑判決から七年が経ち、もう幾ばくの猶予もありませんが、ここで樹原はあることを思い出します。
それは事件の日、死ぬかもしれないという恐怖を感じながら階段を上っていた、ということです。
調査
純一と南郷は樹原のいう階段を探しますが、事件現場となった宇津木邸は平屋で階段などありません。
二人は千葉県勝浦市にあるアパートの二部屋を借り、そこを拠点に調査を開始します。
事件について調べると、検事の中森から裁判所に出さなかった証拠として、黒い繊維片があったことを教えてもらいます。
犯人の特定には繋がりませんでしたが、染みこんだ汗からB型の人間が身に付けていたことが分かっています。
それから南郷は誰もいない宇津木邸に侵入し、耕平の住所録の中に佐村恭介の名前を見つけます。
耕平は保護司の前は中学校の校長をしていたため、恭介が教え子だった可能性があります。
しかし肝心の階段はやはり見つからず、純一たちは周囲の山を探します。
なかなか成果が得られない中、杉浦を通じて依頼主から、調査から純一を外すよう言われますが、南郷はそれを無視して純一も参加させます。
時間はもうあまり残されていません。
犯人の目星がつかない中、二人はあることに気が付きます。
通常、保護司は観察対象の記録をつけているものですが、宇津木邸からはそれが見つかっていません。
このことから、犯人は観察対象のうちの誰かであり、それを隠すために記録を持ち出し、預金通帳と印鑑を持ち去ったのは金銭目的だと誤認させるのが目的だったのではないかと考えることができます。
そこで南郷は、近隣の都道府県で同様の手口が使われた事件を探し、小原歳三という男と31号事件に行き着き、面会。
しかし、彼は宇津木夫妻殺人の犯人ではなさそうです。
一方、当時の状況を知るために、純一たちは樹原の雇い主であるホテルのオーナー・安藤と、同じビデオ店で勤務していた友人・湊大介からも話を聞きます。
湊は、当時出入りしていた客の中にかつて殺人を犯した人物がいると樹原から教えられていて、純一はその人物が樹原と同じく保護観察対象だと判断。
現在の保護司である小林澄江の家を張り込んでいると、湊が言っていた人物だと思われる男が出入りするのを目撃。
二人は尾行し、その人物・室戸英彦から話を聞きます。
そこで室戸は宇津木の遺産について言及しますが、それは純一たちが知らないことでした。
中森に確認すると、耕平には一億円もの遺産があったことが判明。
資産家でもないのに、なぜそんな大金を持っているのか?
さらに中森の協力により、宇津木邸近くの山には増願寺というお寺があり、土砂崩れによって埋もれてしまったことが分かります。
少しずつ埋もれていったのなら、事件当時、寺の一部は見えていた可能性があり、犯人が証拠を埋めるために掘り起こした、そして埋もれていた階段を掘り当てた可能性は十分あります。
純一たちは、証拠を求めて増願寺を探すことにします。
証拠
宇津木邸付近の山を、金属探知機を頼りに掘ると、二人は増願寺を掘り当てます。
幸い崩れることなく原型を留めていて、中に入ることができました。
そこに階段がありましたが、証拠となるものは見つかりません。
一旦休憩することにしますが、そこに杉浦から連絡が入り、依頼人から彼のもとに増願寺に関する情報が入ったことが知らされます。
二人は依頼人に検討をつけていて、樹原を思う安藤だと考えていました。
また耕平殺害について、ある筋道が見えてきます。
室戸はかつて保護司である耕平から、正業に従事していないという理由で刑務所に戻されそうになったことがあります。
その時、仮釈放取り消しをネタに、室戸が耕平から強請れたのではと推測することができます。
そう考えると、犯人は強請られた前科者ということになり、対象者が一気に増えます。
またなくなった耕平の預金通帳について、振り込んだ人間の名前が書かれているため、そこからバレることを防ぐために盗んだのだと考えることができます。
純一たちは証拠となる預金通帳、印鑑、手斧がまだ隠されているかもしれないとして捜索を続行。
さらに掘り進めると、ついに樹原が証言したと思われる石段を見つけます。
そして凶器となった手斧、そして耕平の通帳が見つかり、指紋を確認するために中森に相談します。
中森は迅速に対応しますが、そこから見つかった指紋は純一のものでした。
もう一つの証拠
指紋のことは中森から南郷に伝えられますが、到底信じられるものではありません。
警察はすでに南郷と純一を追っていて、しかも樹原の死刑執行が四日後に決まったと連絡が入り、最悪のシナリオになりつつありました。
それでも南郷は諦めません。
杉浦に刑の執行を遅らせるよう指示し、今はこの場にいない純一を探します。
この時、純一は図書館にいて、南郷の残した留守電から自分が置かれている状況を知り、一人逃げます。
また南郷も警察に尾行されていましたが、途中の公衆トイレで双子の兄・正一と入れ替わって尾行をまき、安藤のいるホテル陽光に向かいます。
そこで電話を借り、純一の無罪を改めて確認します。
さらに証拠を求めて増願寺に向かっていることも分かりました。
そこで南郷は、安藤と共に山に向かいます。
安藤を連れてきたことには理由があります。
南郷たちは彼が依頼人だと勘違いしていましたが、それは違いました。
安藤は首に巻かないタイプのネクタイをしていて、それは絞首刑を連想させるためつけられないのでは。
腕時計もしていませんが、それも手錠を連想させてしまうからです。
つまり、安藤こそが耕平を殺害した犯人であり、南郷がそれとなく聞くと安藤はB型でした。
南郷は純一に証拠探しを託し、安藤を増願寺のさらに先にある山小屋まで案内します。
一方、純一は増願寺に入るとそこに十三段の階段を見つけ、上ってそこに仏像を見つけます。
仏像を破壊すると、中には耕平の預金通帳、保護観察記録、さらに自分たちがすでに見つけたはずの印鑑、手斧も見つかります。
通帳には、振り込み主として安藤の名前が書かれていました。
その頃、安藤は南郷に襲い掛かり、命がけの戦いとなります。
南郷は事件解決のために必死になりすぎ、結果として安藤を絞め殺してしまいます。
さらに場面は変わり、純一は印鑑を見て気が付きます。
彼がこの前に見つけた印鑑は複製であり、指紋もある人物を訪問時、出されたお茶を飲んだ時に採取されたのだと。
その時、階段を上って依頼人が現れます。
佐村光男、純一が殺害した佐村恭介の父親でした。
彼は証拠を捏造し、樹原の代わりに純一を死刑にさせようとしていたのです。
しかし、本当の証拠が見つかっては自ら手を下すしかなく、暗闇の中、散弾銃で純一を殺害しようと殺気立っています。
光男が散弾銃を撃つと二階を支える柱の一つが折れ、今にも崩れ落ちそうです。
純一は一か八か、仏像に体当たりをして床のバランスを崩すと、光男共々崩れる二階から落下していくのでした。
結末
真実が分かり、樹原の再審が決まりました。
一方、南郷は殺人罪に問われ、拘置所に入れられます。
そんな彼のもとに純一から手紙が届きます。
そこには、被害者である佐村恭介に対して全く申し訳ないと思っていないという純一の気持ちが綴られていました。
純一は高校一年の時、恋人である木下友里と両親に内緒で勝浦に旅行に行き、そこで知り合ったのが恭介でした。
別れの際、純一たちは二人きりになりたいとお別れパーティーを断りますが、恭介は豹変してナイフで純一の腕を切りつけ、友里は恭介の仲間たちに連れ去られて強姦されます。
そのことで友里は心が壊れてしまい、今でも衝動的に自殺を図ろうとすることがありました。
純一は恭介を憎みますが、未成年である彼に刑事罰を与えることは難しく、長引かせても友里の傷を広げるだけであり、純一は何もできませんでした。
ところがその後、とある展示会で恭介と再会します。
そこで純一は恭介を殺害しようと決意し、結果として本当に殺害したのでした。
しかし、それは純一の自己満足に他ならず、友里の心を取り戻すことはできませんでした。
最後に純一は、南郷が行った処刑の一つに関しては肯定し、彼が一日でも早く出てこれるよう祈っていることを書いていました。
それから一年後、樹原の無罪が確定し、それは純一と南郷の二人がやったことでした。
おわりに
物語自体の面白さがあり、日本の制度の矛盾について考えさせられました。
誰もが好きで犯罪に手を染めるのではないと思うと、やりきれない気持ちでいっぱいです。
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