ミステリー

『君たちは絶滅危惧種なのか?』あらすじとネタバレ感想!二つの事件に関係するのは動物?

国定自然公園の湖岸で、釣りをしていた男性が襲われ大怪我を負った。同公園内の動物園では、1カ月ほどまえスタッフ一人が殺害され、研究用の動物とその飼育係が行方不明になっていた。

二つの事件以前から、湖岸で正体不明の大型動物が目撃されており、不鮮明ながら映像も存在した。兵器使用を目的とした動物のウォーカロンか? 情報局の依頼を受け、グアトらは動物園へ赴く。

Amazon商品ページより

WWシリーズ第五弾となる本書。

これまで人間とウォーカロン(人工的に生まれた人間)を比較して、人間とは何かという議論がされてきましたが、本書では動物の絶滅とは何か、リアルの重要性などについて言及されています。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

自然公園での事件

自然公園の湖岸で男性が何者かに襲われ、大怪我をしたという事件がニュースで流れます。

犯人が報道されていないことから、監視システムをかいくぐる特殊な技術を有しているか、犯人を確保したものの何らかの理由で逮捕できないことが予想されます。

現場は動物園の近くで、その動物園では一か月前にスタッフが殺害されており、何らかの関係があるように見えます。

同じタイミングでグアトに対してドイツ情報局はウォーカロンかどうか判定に関して助言をほしいと依頼があり、グアトはロジ、情報局員初のウォーカロン・セリンと共に二つの事件について話を聞くことになります。

生命研究所

一件目の殺人事件では死体に激しい損傷が見られ、そこまでする理由が見当たりません。

被害者は警官で、動物園で行われているある動物に関する技術が国家的な価値を持つことが判明したことから、張り込んでいました。

この研究所は、もともとは生命研究所と呼ばれていました。

ドイツ情報局は犯人が人間でないウォーカロンの可能性を考慮していて、その点についてグアトに協力を求めます。

現在の動物園はロボットがほとんどで、犯人として考えられるのは人間が捜査できる動物型のウォーカロンです。

現場ではトランスファのものらしき、不可解な信号が確認されていて、猛獣をコントロールしている可能性がありました。

事件の犯人

今回の依頼の焦点は、犯人が誰なのか、そしてこの研究所で行われていた研究に違法性はなかったかどうかです。

調査を続ける中で二つ目の事件の被害者がジョン・ラッシュという技術者であることが判明し、失踪していることから有力な容疑者として挙げられます。

これまで動物の窃盗を繰り返し、犯行を目撃されたことで警官を殺害して逃走した。

そんな構図を警察は思い浮かべますが、グアトは違いました。

集めた情報は終盤になって一気に収束し、やがて事件の真相、そして事件の裏に隠された思惑が見えてきます。

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感想

絶滅の定義とは

タイトルにある通りですが、本書では『絶滅』の定義について語られています。

地球上から姿を消せば絶滅と定義できそうですが、本書の世界観では元の生命を生み出すことが出来るため、二度と拝めないというわけではありません。

しかし、生み出したその生物は本当に元の生物そのものなのか?

『絶滅』という言葉に感傷的になるかどうかで答えは変わりますし、この問題は人間とウォーカロンの関係にも繋がります。

人間とウォーカロンは違うと感じるけれど、区別する必要があるのか。

理屈と感情が入り混じる非常にデリケートな議論で、グアトの思考が今回もユニークで最後まで飽きずに読めました。

リアルである必要性

上述の問題と関係するものとして、リアルであることの必要性についても語られています。

通信速度などの問題がクリアされ、ヴァーチャルがリアルと同じだけのリアリティを持つ世界において、肉体という枷のあるリアルにこだわる必要はあるのか。

現実世界のような世界観を生きた人であればヴァーチャルに完全に移行することに抵抗があるけれど、ヴァーチャルが当たり前に存在する時代に生まれればそれほど抵抗がないのかもしれない。

現実世界でもネット環境は年々大きく進化を遂げているので、やがてこういった問題に直面するかもしれない。

そう考えると、笑って聞いていられる話題ではないとつい真剣になってしまいました。

この辺りの考えは、Wシリーズの時よりもさらに深くなっている気がします。

動物談義が可愛い

真剣に考えだすと頭が痛くなってくる話題が多い中で、グアトやロジたちが動物について話し合うシーンが印象的でした。

彼らにとって動物とはもはや遠い存在であり、知識として知っていても、具体的に生きている彼らの姿が思い浮かぶわけではありません。

そのため犯人となる動物のウォーカロンを議論する中で推論が多く、動物が当たり前に存在する世界に生きる僕らからすると、ついクスっとおかしくなってしまうようなことも真剣な表情で話しているところが非常に面白かったです。

このシーンで描かれる好奇心は少年少女のそれで、本書の可愛らしい見どころだと思います。

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おわりに

リアルとヴァーチャルの違いについてどんどん深く語られ、いつか自分たちもこういった問題に直面するのだろうかと得体の知れない不安に襲われました。

コロナ禍でネット環境が進化を遂げ、ヴァーチャルへの比重が大きくなったことが不安の要因の一つかもしれません。

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