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『こんな夜更けにバナナかよ』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

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自分のことを自分でできない生き方には、尊厳がないのだろうか? 介護・福祉の現場で読み継がれる傑作ノンフィクション!
重度の筋ジストロフィー患者の鹿野靖明さんと、彼を支える学生や主婦たち約40名のボランティアの日常を描いた渾身のノンフィクション。人工呼吸器をつけた病の極限化で、人間的自由を貫こうとした重度身体障害者と、さまざまな思惑から生の手応えを求めて介護の現場に集ったボランティアたち。「介護する者、される者」の関係は、ともに支え合い、エゴをぶつけ合う、壮絶な「戦場」とも言えるものだった――。
史上初、講談社ノンフィクション賞と大宅壮一ノンフィクション賞をダブル受賞した大傑作ノンフィクションが、ボランティアの人々の後日譚を加え文庫化。解説は山田太一氏。

「BOOK」データベースより

強烈なタイトルが印象的な本書。

大泉洋さん、高畑充希さん、三浦春馬さんら出演で映画化れました。

僕は映画化が決まってから本書を読み始めたので、帯の大泉さんのひょうきんな顔を見て、きっとふざけた内容なのだろうと高を括っていました。

ところが、そこには筋ジストロフィーの鹿野靖明さんの戦い、それからそれを支えるボランティアの人たちの戦いが描かれ、まさしく戦場でした。

タイトルは実際に鹿野さんと鹿ボラの間あったエピソードの一つで、見ている方は面白い、けれど言われる当事者からしたら勘弁してくれよ、と言いたくなるようなエピソードです。

しかもこれは序の口に過ぎず、まだまだたくさんのとんでもないエピソードがたくさんあり、障害者に対するボランティアのイメージを大きく覆してくれます。

また、著者である渡辺一史さんが鹿野さんや鹿野さんのボランティアの方々(鹿ボラ)と真摯に向き合い、この現実とどう向き合うべきなのかと悩み、そこから答えを導いていく姿がとても印象的でした。

小説というよりは、鹿野さんの自伝のような作品になっています。

そのため、あらすじを説明するとなると難しくなってしまいますが、なるべく簡潔に本書の魅力や要点について解説したいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

また、本書が出版されたのは2003年で、時代背景が今とはかなり異なるので違和感を覚える人もいるかもしれませんが、決して書き間違えではないのでご了承ください。

医療についても、現在とではかなり状況が異なっていますので、それを踏まえてこの記事をご覧ください。

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筋ジストロフィーとは

筋ジストロフィー(以降、筋ジスに省略)は、『遺伝子疾患』であることが明らかにされた疾患です。

ジストロフィンを作らせる遺伝情報(ジストロフィン遺伝子)はX染色体にあり、遺伝子異常のある女性(保因者)が、男児を出産した時、二分の一の確率で発症する『X染色体劣性遺伝』が原因といわれています。

女性はX染色体を二本持つため、片方が異常でもX染色体劣性遺伝は発病しません。

その代わりに保因者になります。

症状などによって様々なタイプに分類されますが、共通して次第に筋委縮と筋力低下が進行し、最終的には人工呼吸器などの力を借りないと生命を維持することすらできなくなってしまいます。

本書に登場する鹿野さんはベッカー型と呼ばれる筋ジスで、デュシェンヌ型に比べると発症時期が遅く、一般に予後が良いとされています。

また筋ジスは難病法における『指定難病』の一つとして、治療法の研究や医療費助成などが行われています。

さらに当時では考えられなかったものとして、iPS細胞による再生医療にも注目が集まっています。

もちろんすぐ臨床で使用できるわけではありませんが、近い将来、根本的治療法が確立されるのではと期待されています。

あらすじ

暗い未来

ここからは本書の内容について。

作品内では、時系列とは関係ない順番で様々なエピソードが明かされていきますが、この記事では分かりやすいように順を追って説明したいと思います。

まずは鹿野さんの出生から筋ジスだと分かってからの変化についてご紹介します。

鹿野さんは生まれつき足が弱く、小学校に入学しても、遠足など長時間歩くと足が突っ張ったり、ふくらはぎが筋肉痛になることがありました。

しかし、この時点で両親の頭に病気という考えはなく、その理由の一つに鹿野さんの六歳下の妹・美和さんの存在がありました。

彼女は生後六か月で『点頭てんかん』を発症し、その発作止めの薬の副作用で、知能が未発達のまま成長しています。

そんな美和さんの入退院に両親は付き添っていたため、どうしても鹿野さんへの注意が怠ってしまいました。

鹿野さんが筋ジスだと診断されたのは小学校六年の時で、母親の光枝さんは絶望します。

当時、一般人にはあまり知られてなく、怖いイメージだけが伝わっていたため、当然のことといえます。

それから鹿野さんは室蘭市内の実家を離れ、国立療養所八雲病院(現・国立病院機構八雲病院)に入所しますが、そこで鹿野さんを待っていたのはおびただしい数の『死』でした。

建物の雰囲気は暗く、昨日まで苦しんでいた友人が突然いなくなるなど、『死』はとても身近なものでした。

さらにあらゆる制限が入り、鹿野さんはいつも『食べたい』『飲みたい』『ここから出たい』と思い、何度も脱走します。

成長すると、周囲の協力を得ながら自立生活を送り、結婚を果たします。

その後、ケア付き公営住宅の建設にこぎつけ、全てが順調にいったように思えました。

しかし、現実は甘くありませんでした。

鹿野さんは徐々に筋力が衰え、自然と介護に頼る部分が多くなっていきますが、雇われた介助職員のレベルは低く、そうなるとしわ寄せは妻に向かいます。

結局、このことがきっかけとなり、二人の心は離れて離婚。

さらに鹿野さんの心臓は弱り、人工呼吸器を余儀なくされます。

そうなると声は出せず、コミュニケーションをとるだけでも一苦労です。

人工呼吸器をつけられた自分を見て、『鎖につながれた犬だ』と鹿野さんは思います。

また、痰がたまると呼吸が出来なくなってしまうため、定期的にとってもらわなければなりません。

しかし、それでも『退院』したいという鹿野さんの意思は変わらず、鹿ボラの協力もあって無事に退院。

再度入院することもなく、自立した生活を送ることになるのでした。

施設を出て地域で生きる

こうして自立した生活を手に入れた鹿野さんですが、生きていくためにはボランティアの手助けが必要不可欠です。

鹿野さんの一日には四人のボランティアによる三交代制をしく必要があり、夜は寝返りをうたせたり、痰を吸引するのに泊まっていく必要があります。

月のべ百四十人、年間のべ千四百六十人もの介助者を必要とし、鹿野さんはそれらを募集するために自ら街に出てチラシを配ったり、講演活動を行ってきました。

さらに集めるだけでなく、そのスケジュール管理を大事な仕事です。

ボランティア同士の相性もそうですが、新人・ベテランなども考慮しなければなりません。

さらに急用で欠員が出れば、自ら電話して代わりを見つけなければなりません。

しかも新人のボランティアを育てるのも鹿野さんの仕事で、学生が卒業すれば、新しく入ってくる人を一から教育しなければなりません。

これだけの努力の上にようやく成り立つ自立した生活は、まさに戦場だと思います。

自由を勝ち取るバイタリティ

ここまで書いた文章を読むと、鹿野さんに対して清らかで崇高なイメージを持つ人もいると思いますが、全くそんなことはありません。

普通の人のように、もしくはそれ以上に自分の要求をどんどん声に出します。

善意でボランティアをしている方からすれば、なんだこいつ、と思って離れていくことも少なくありませんが、それでも残り、鹿野さんと対等に接してくれるボランティアも多くいました。

障害者だから、文句を言ってはいけない、そんな常識を破るだけのパワーを鹿野さんは持っていました。

しかし一方で、繊細で弱い部分こそが本来の鹿野さんであり、病気によって困難が立ちふさがったからこそ強くなったという見方もできます。

健常者・障害者関係なく、鹿野さんという人物が非常に魅力的で、ボランティアに携わっている人や著者の渡辺さん同様、読者もまたその魅力に惹かれてしまいます。

夜中にバナナが食いたいからと介助者を起こすエピソードもそうですが、自慰したいからとAVを借りに行かせるその強い精神力に脱帽し、一方でそこは健常者と何も変わらないのだと妙な親近感を覚えました。

ボランティアの存在

本書には数多くの鹿ボラの対談内容が載せられていますが、これがとても興味深い内容になっています。

ボランティアというと、意識が高くていかにも善良な行いのように思えますが、ボランティアに参加する人の多くが何となくだったり、逆にボランティアにすがることで自分を保つような人が多くて驚きました。

性格も様々で、鹿野さんに対してポジティブとネガティブ、両方の感情を持ち合わせています。

しかし、彼のことを愛する気持ちは本物で、鹿ボラをやめた後も交流が続いてる人も多いといいます。

登場する鹿ボラが多いため、ここで紹介することは出来ませんが、ぜひ本書を読んで確認してみてください。

健常者も同様に悩み、その中で答えを見つけていくのだということが、よく分かる内容になっています。

鹿野さんから得たもの

そんな鹿野さんですが、二〇〇一年、四十二歳の時に亡くなってしまいます。

死因は拡張型心筋症(筋ジスによる二次性心筋症)による不整脈でした。

死ぬ際、鹿野さんは両親やボランティアにも立ち会わせず亡くなりますが、そこに彼の意思を感じると著者の渡辺さんは言います。

そして突然やってきた『死』を受け止め、渡辺さんはこれまで鹿野さんや鹿ボラの人たちと過ごしてきた二年四か月を振り返り、たどり着いたのはシンプルなメッセージでした。

『生きるのをあきらめない』。

そして、『人との関わりをあきらめないこと』でした。

おわりに

本当は書きたいことが山ほどあるのですが、それを書いてしまうと、きっと本書のようなボリュームになってしまいます。

それくらい無駄な話なんて一つもなく、渡辺さんが見てきた鹿野さんや鹿ボラの人たち、それから鹿野さんと一緒に時を過ごした人たちの話でいっぱいの作品でした。

映画化されるということで、ぜひ本書に詰まったメッセージを損なうことなく、一人でも多くの人に届けばいいなと心から願っています。

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