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『凶器は壊れた黒の叫び』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

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新聞部の創設。柏原第二高校に転校してきた安達は、島で唯一の小学生・相原大地のために部活動を始めることを提唱する。賛成するクラスメイトたちだったが、七草はそれが堀を追い込むために巧妙に仕組まれた罠であることに気づく。繙かれる階段島の歴史と、堀が追い求めた夢。歩み続けた7年間。その果てに彼女が見つけた幸福と、不幸とは…。心を穿つ青春ミステリ、第4弾。

「BOOK」データベースより

『階段島』シリーズ四作目にあたる本作。

前の話はこちら。

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安達の登場により階段島は崩壊の危機に立たされます。

今までにない緊迫感が漂い、魔女である堀の抱える悩みが明かされ、そしてそれが幸か不幸か。

本作ではそれが問われます。

これまでちりばめられていた謎が一気に解き明かされていく重要な話でもあり、今後の話の展開を決めうるターニングポイントともいえます。

そんな本作について、あらすじや感想を書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

階段島崩壊の危機

七草のもとに一本の電話が入ります。

相手は堀ではない魔女。

魔女は、このままだと階段島が崩壊すると言いました。

それは安達が堀から魔法を奪うことを意味し、幸福によって呪われている魔女にとって、それは自分が不幸であることの証明でもありました。

七草は階段島を、もっと言えば堀を救いたいと考えていますが、堀は自分の作ったルールによって全てを明かすことはできません。

そして、安達は真辺に近づき、魔女の正体を七草が知っていると教えるなど、何かを企んでいます。

それにより、階段島を好きな七草と階段島は間違っていると主張する真辺の溝はより深まってしまいました。

新聞部の設立

安達は大地の居場所を作りたいという理由で新聞部の設立を提言します。

しかし、七草は彼女の企みを疑い、それを否定します。

ここでも真辺は七草に反発します。

理解できる部分もありますが、堀に肩入れする七草が正しくないと感じていたのです。

結局、新聞部は設立することで話はまとまりますが、記事の内容に制限を設けることで安達の企みを阻止することに成功し、一進一退というところでしょうか。

また脈絡もなく安達は七草に告白し、真辺は少なからず驚きます。

そして二人きりの帰り道、真辺はあることに気が付き、それを七草に伝えようとします。

しかし、堀によって寸前のところで意識を飛ばされてしまいます。

これは堀自身で作ったルールの違反であり、彼女はこれが原因で学校を数日休むことになります。

もう一人の七草

七草は読んだ覚えのないタクシーに乗って遺失物係まで向かいます。

そこで出会ったのは、もう一人の捨てられた七草でした。

彼は七年前に捨てられていて、七年間ここで暮らしていたのです。

彼が先に堀と仲良くなっていたからこそ今の七草もすぐに打ち解けられたのだと、説明されます。

そして、彼は堀を支える、あるいはルールを破った時に叱る役割を果たしていて、そのルールが何なのかを教えてくれます。

一つ目。魔女は自分から、階段島の真実を公開しないこと。

二つ目。それでも魔女は、島の住民たちが、自分たちで真実に気づくことを制限しないこと。

真辺の件で、堀は二つ目のルールを破ってしまったのです。

真辺はもう一人の七草が島にいることを感づいていて、それを七草に伝えようとした。

しかし、七草がそれを知ってしまうと、捨てられた被害者だと思っていた自分が、実は七年前は捨てた加害者であることが知っています。

七草が悲しむのを見たくなかった堀は、だからルールを破ったのです。

今の七草にとって信仰の対象は真辺ですが、もう一人の七草にとっては堀が信仰の対象なのです。

後日、七草は真辺に昔の自分のことを聞き、自分が何を捨てたのかを考えます。

また安達は新聞部の企画として『昨年のクリスマスプレゼントの調査』というものを考えていて、それも堀に傷を負わせるための内容であることは明白でした。

さらに後日、真辺のもとにもう一人の七草から連絡がきますが、彼女はすぐにいつもの七草でないことに気が付きます。

真辺にとって大事なのは、今の七草なのです。

クリスマスに通販を止めた理由

百万回生きた猫に会おうと思って屋上に行くと、そこにはもう一人の七草がいて、彼から去年のクリスマスプレゼントに関わる真実を教えられます。

結論から言うと、通販を止めるよう堀に指示したのはもう一人の七草でした。

堀は、クリスマスが来るたびに通販のリストを渡され、住民たちが外の人間との繋がりを求めていることを知ります。

しかし、彼女は島内で神のように振舞えても、島外に対しては無力です。

それでも堀は雪を降らすなど目一杯楽しいクリスマスになるよう努力しますが、それを見ていたもう一人の七草が耐えられなくなり、止めさせたというものでした。

七草は自分が捨てたものを知りたいと願うと、屋上に堀が現れ、ある記憶が蘇ります。

階段島の成り立ち

蘇った記憶。

それは小学三年生の時、堀との出会いでした。

七草は彼女が魔法を嫌っていることを知り、それでも魔法を否定したくないという彼女の気持ちを支えてあげたくなりました。

だから堀の傍にいたいという気持ちを捨て、それがもう一人の七草となって階段島に住み始めたのです。

その当時、堀は正式な魔女ではなく、当時の魔女から一時的に魔法を貸し与えられていました。

そして、何でもできることに飽きた当時の魔女は、後継者を求めていました。この魔女とは、時任のことです。

次の魔女候補として二人の名前が挙がっていて、それが堀と安達です。

堀は高校生の時の時任に絵を習っていてから彼女の良さを理解していて、そんな彼女からのお願いを叶えたいと考えていました。

二人に与えられた課題。

それは、それぞれ一つずつ小さな島を与えられ、それをより素晴らしいものに作り上げた方が後継者の資格を得るというものでした。

堀はこの島を階段島と名付け、捨てられた人たちが幸せに暮らせる島にしたいと考えます。

そこで七草がそのコンセプトに合わせてルールを作り、それが現在の階段島のルールになっています。

階段島を作り上げる一方で、七草は安達に連れられて彼女の島も見に行きます。

しかし、そこには何もなく、彼女は魔法の世界に他人はいらない、そして魔女だからといってこの世界で生きていく必要はなく、自分は現実世界で生きていくと宣言します。

七草はそれが正しいと感じますが、それでも堀の味方をします。

結果として、堀が後継者に選ばれ、時任は七草に頼まれて郵便配達員として事の成り行きを見守ることにしました。

それから七年間、おおよそ問題なくいっていましたが、真辺の登場によって階段島の平和は脅かされることになりました。

安達の本当の狙い

放課後、もう一人の七草に呼び出された真辺。

保健室では真辺の知る七草が眠っていました。

自分の記憶を七草に移植したため、起きるのに時間がかかっているとのこと。

そして、もう一人の七草が語る安達が七草に告白した目的。

それは真辺を焦らせて七草に告白させ、七草にもう一人の自分を拾わせるためでした。

そうすれば堀の信じた七草は消え、真辺の信じる七草だけが残ります。

真辺は一般的な意味で七草のことが好きだが、だからといって恋人という関係のせいでお互いの主張を言い合えないことを嫌っています。

矛盾した考えですが、これこそが真辺が捨てられた理由、つまり理想主義なところということでしょう。

そうこうしているうちに七草が起きます。

そして、真辺に大好きだよと告白するのです。

それは嬉しいことであり、それでこそ真辺の知っている七草でした。

結末

七草の告白に、これまで通り大好きだよと応える真辺。

もう一人の七草の姿はもうなく、七草が拾ったのでした。

彼が捨てたもの、それは勇気でした。

それを拾ったからこそ、真辺への気持ちを伝えることが出来たのです。

そして、二人は堀に会いに行きます。

灯台に行くとすでに安達がいました。

三人で堀に会うと、堀と安達はお互いに幸せであることを主張します。

そして、七草は言います。

階段島でのことは不幸なこともあったけれど、堀自身も楽しそうだった。

そして、幸せか不幸かを決めるのは堀自身だが、階段島で過ごした自分の幸せを否定しないでほしい、と。

苦しむ堀に魔女を続けるよう強制させる残酷な言葉でしたが、同時にもう一人の七草が耐えらなかったことも耐え、堀をこれからも支えていくという決意表明でもありました。

階段島は好きですか、と堀に問われ、七草は君の魔法が大好きだよ、と応えます。

安達の負けでした。

しかし、そこで引き下がらず、安達は真辺に意見を求めます。

すると真辺は、階段島は間違っていると主張しますが、それでも堀はもう揺るぎません。

それでようやく負けを認めた安達ですが、最後にとんでもないことを思いつきます。

それは、真辺を魔女にするというものでした。

本来、生まれつき魔女でなければならないはずですが、魔法を譲り渡して疑似的に魔女にすることは可能だと考えられます。

これからは、堀の幸せを脅かすのは真辺なのです。

不安げな堀に、真辺は危険だから魔女にできないと言い残し、七草と真辺は灯台をあとにします。

帰り道、やっぱり階段島が嫌いだと主張する真辺。

そして、七草はこの階段島が好きです。

だから、たくさん話し合おうと真辺は提案します。

お互いに主張は平行線をたどり、最終的に真辺は魔女になることを決めます。

そして、その時は彼女の敵になることを七草は宣言します。

それはお互いにとって決して不幸なことだけではありません。

七草は、どれだか真辺が傷ついても、彼女が欠けることなく彼女のまま輝いてくれればそれで充分だと言います。

結局、二人の抱く感情は愛とか恋ではなく、今の段階では言葉にできないものでした。

それでも、隣にいることを改めて誓うのでした。

おわりに

物語が大きく動き出すことを予感させる本作。

七草と真辺の関係性がますます複雑になっていますが、それがとても美しいものなんだと改めて感じました。

これからも目が離せません。

ちなみにタイトルである『凶器は壊れた黒の叫び』とはもう一人の七草を表現していて、彼は堀を支えることに疲れ、壊れてしまいました。

しかし、彼の記憶と真辺と過ごした記憶を持つ今の七草であれば、これからも堀を支えることができます。

しかし、もし堀と真辺を選ばなければならない時、七草は選択できるのでしょうか?

そのあたりにも注目しながら、次作に期待したいと思います。

次巻はこちら。

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