『異邦人(いりびと)』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!
「美」は魔物―。たかむら画廊の青年専務・篁一輝と結婚した有吉美術館の副館長・菜穂は、出産を控えて東京を離れ、京都に長逗留していた。妊婦としての生活に鬱々とする菜穂だったが、気分転換に出かけた老舗画廊で、一枚の絵に心を奪われる。強い磁力を放つその絵の作者は、まだ無名の若き女性画家だったのだが…。彼女の才能と「美」に翻弄される人々の隆盛と凋落を艶やかに描く、著者新境地の衝撃作。
「BOOK」データベースより
表紙のエドヴァルド・ムンクの〈月光〉、そしてタイトルに一目惚れし、あらすじも読まずに購入したのですが、これが大当たりでした。
芸術の美しさ、そしてそれに魅せられた人たちの末路というものが艶やかに描かれていて、あっという間に読んでしまいました。
あらすじを読んでいただければ何となく予想はつくと思いますが、決してハッピーエンドな話ではありません。
いや、ある人からしたらハッピーエンドなのですが、それを持って読者も幸せかというと、難しいところです。
ただそういった後味の悪さというのも本作の魅力だと僕は思いますので、嫌いでなければぜひ読んでほしいと思います。
原田さんご自身がキュレーターという美術に関わるお仕事をされていたこともあり、それが本作の妖しい美しいや狂気に繋がっているのかもしれません。
説得力が段違いです。
またドラマ化もされています。
https://www.youtube.com/watch?v=Noh2rIjZNnU
この記事では、そんな本作の魅力についてあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
京都への避難
東日本大震災が起きた直後の話。
父・智昭の経営するたかむら画廊の専務・篁一輝と結婚した有吉美術館の副館長・菜穂は出産を控えていたが、胎児への放射線の影響を懸念し、京都に長期滞在していました。
菜穂は自分の意思で京都に来ましたが、震災の余波が収まらない関係でなかなか東京に戻ることが出来ず、妊娠の影響もあって鬱々としていました。
また克子は仕事と称して頻繁に一輝と会っていますが、目的が仕事だけでないことを菜穂は理解していて、それが不満でもありました。
一輝が京都を訪れたある日、二人は気分転換に美術館を訪れます。
菜穂は祖父・喜三郎から受け継いだ美術品を見る確かな目を持っていて、一度価値を見出だしてしまうと、どんな犠牲を払おうとそれを手に入れようとする所がありました。
以前ほどの勢いのないたかむら画廊の経営から考えると、菜穂を養っていけるのか一輝には不安で仕方ありませんでした。
美術品を鑑賞する中、一輝は後ろ姿の美しい女性を見つけ、つい目を奪われてしまいますが、女性は一輝に気が付くことなくその場を去りました。
一枚の絵との出会い
京都での生活に嫌気が差していた菜穂ですが、結婚前に一輝と訪れた美のやま画廊で運命の出会いを果たします。
以前にもここで志村照山という画家の絵を見つけ、それなりに気に入っていた彼女。
画廊主である美濃山俊吾も菜穂のことを覚えていて、中に通されます。
そしてそこで、青葉の絵を見つけ、刺さるような感覚を覚えます。
素晴らしい作品に出会った時に起こる衝撃に、菜穂は興奮してこの絵のことをたずねますが、それは白根樹(しらねたつる)という全くの無名の画家が描いたものでした。
しかし、知名度など菜穂には関係ありません。
すぐに東京から一輝を呼びつけると、克子もついてきます。
菜穂はそれに構わず、二人を美のやま画廊に連れていきます。
しかし、一輝と克子はその絵の価値に半信半疑であり、ましてや克子はお腹の子供のためにまだここにいなさいと菜穂の意思を無視したことを言う始末。
結局、菜穂は克子に押し切られ、喜三郎がお世話になった書道家・鷹野せんの家に滞在させてもらうことになりました。
最初は嫌がっていた菜穂ですが、せんの鷹揚で奥ゆかしい人柄、そして何よりあの青葉の絵を飾って見ることが出来ると思うと、胸が躍って仕方ありませんでした。
傾いた経営
ある日、父の智昭に呼ばれた一輝。
すると、とある大きな取引の仲介をお願いしていた人物に五億円もの大金を持ち逃げされたことを明かされます。
しかも、今のままではたかむら画廊は一ヶ月も持たないと言います。
そこで智昭が考えた手。それは有吉美術館が保有するクロード・モネの『睡蓮』を売る事でした。
これを五十億で売り、仲介したたかむら画廊が十%の五億を手に入れれば、当面の危機をやり過ごすことができます。
大きな使命を課された一輝は克子を呼び出し、事情を話します。
すると、克子は条件付きでこれを了承します。
そして、二人は菜穂に内緒で肉体関係を持ちました。
白根樹という女性画家
菜穂は、鷹野せんの人望を通じて白根樹と対面します。
彼女は、一輝が美術館で見かけたあの美しい女性でした。
菜穂はすぐに彼女の魅力に取りつかれ、彼女を自分の手で世の中に知らしめてやりたいと考えました。
しかし、樹は言葉を発することができませんでした。
また、師匠である照山とはただならぬ関係に見え、一筋縄ではいかないことも分かりました。
さらに克子から無断でモネの『睡蓮』を売ったことを知らされ、一輝や家族との溝はより深まっていきます。
ぽっかりと空いた空白。
菜穂は、樹の作品こそがこの空白を埋めるのにふさわしいと考えました。
その後、一輝と京都で再会するも、菜穂の心は樹にのみ向いていました。
菜穂と樹はメールでやりとりをしていて、秘密の関係を深めていきます。
一方で、師匠である照山は弟子の樹が評価されることを不快に感じていましたが、その理由が判明します。
なんと樹は照山の養女であり、不慮の死を遂げた画家・多川鳳声の子供だったのです。
照山と鳳声はしのぎを削ったライバルであり、鳳声亡き後、照山が樹の面倒を見ていましたが、自分すらも超えていこうとする樹が気に入らなかったのです。
その事実を知った菜穂の意思はますます固くなり、何としてでも樹を連れ出すのだと決意します。
凋落への始まり
菜穂の父・喜一は喜三郎の素質を受け継がなかったせいで有吉美術館の業績は右肩下がりで、ついに閉館することを決めました。
そこで手元にある美術品をたかむら画廊を通して売りたいと申し出てきたのです。
智昭にとっては願ってもないチャンスであり、快諾しますが、一輝はこれではますます菜穂が東京から離れてしまうと抵抗します。
しかし、これは決定事項であり、どうすることもできませんでした。
結末
菜穂は一輝から状況を聞いてなお、樹への執着をやめようとしません。
彼女は美のやま画廊に樹の個展を開きたいと提案します。
しかし、京都という土地においては人間関係が非常に重視されていて、照山の許しのでないことを許可できるはずがありません。
ところが、菜穂には秘策がありました。
なんと有吉美術館の所有する美術品のうち、最も価値のある十作品の権利は菜穂にあり、それの売却の権利を美濃山に渡すというのです。
これは喜三郎が真に美術品の価値の分かる菜穂へ残した遺産でした。
その価値は百億円にのぼり、ついに美濃山はこれを了承します。
一輝たちも菜穂の名義であることに気が付き、説得を試みますが、菜穂は彼らをすでに見限っていました。
そして、菜穂は実は喜一と克子の子供ではなく、喜三郎と祇園の芸妓との間に生まれた子供だと明かされます。
喜三郎の美術品を受け継がせるために、経営権を譲る代わりに喜一と克子の子供として育てさせたのです。
全てを失った一輝。
失うもののない一輝は、照山に自分たちのところで個展を開かないかと提案します。しかも、樹の個展と同じ時期に。
もし照山が樹の個展のことを知れば、烈火の如く怒ってその個展を中止にさせるはずです。
その後、樹の個展を東京でやれば、菜穂は戻ってくる。一輝はそう考えました。
東京への進出を狙っていた照山はこれを快諾しました。
しかし、これを樹に知られてしまったのです。
その後、菜穂は無事に女の子を出産し、自分と樹の名前から一文字ずつとって『菜樹』と名付け、一輝や家族と縁を切ることにしました。
おまけに照山はイタリアへ二週間に旅行に出かけていましたが、長年の不摂生が祟ったのか亡くなってしまいます。
これで一輝の目論見は潰えて、菜穂と樹は晴れて自由になるのでした。
そして最後に、樹の母親と菜穂の母親が同一人物だということが明かされます。
樹の父親である鳳声を殺害したのは照山であり、樹はそれを目撃してしまいます。
それ以来、樹は話すことを禁じられていましたが、照山亡き今、声を取り戻し、姉である菜穂と自分にも似た菜樹を得て、自由に画家として活動することになります。
一輝もこの事実を知り、樹が長年に渡って酒に毒を盛って照山を殺害したのではと考えますが、今となっては誰にも分かりません。
ただ作中で、樹の作る水割りが特別うまいと照山は語っているので、可能性は充分あります。
しかし、真相が分かったところで、もう菜穂は戻ってきません。
一輝は失意の中、京都を後にするのでした。
おわりに
最初は菜穂の世間知らずでわがままなところがいちいち気に障りましたが、樹との出会いを機に彼女の本来あるべき姿が解き放たれ、その生き生きとした魅力が物語を面白くしてくれました。
また克子をはじめとする親族はもちろんのこと、一輝もまた菜穂のことを考えているようで考えていない小物感が、呆れを通り越して可哀そうで仕方ありませんでした。
天才を思い通りにしようとしたから罰が当たったのかもしれませんね。
最後に京都について。
僕は二度京都に遊びに行ったことがあり、まるで生きているかのような意思を感じさせる街並みが大好きです。
しかし一方で、本書にあるような排他的な部分もあるため、怖いとも感じていました。
そんな京都の明暗がしっかりと本書には描かれていますので、そういった観点から読むのも面白いかもしれません。
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