『三日間の幸福』あらすじとネタバレ感想!残された人生で本当の幸せを見つける物語
どうやら俺の人生には、今後何一つ良いことがないらしい。寿命の“査定価格”が一年につき一万円ぽっちだったのは、そのせいだ。未来を悲観して寿命の大半を売り払った俺は、僅かな余生で幸せを掴もうと躍起になるが、何をやっても裏目に出る。空回りし続ける俺を醒めた目で見つめる、「監視員」のミヤギ。彼女の為に生きることこそが一番の幸せなのだと気付く頃には、俺の寿命は二か月を切っていた。ウェブで大人気のエピソードがついに文庫化。
「BOOK」データベースより
久しくメディアワークス文庫の作品から遠ざかっていましたが、本書はそれを後悔させるほど有意義で、創作の感動を教えてくれる作品でした。
内容はタイトルとあらすじですぐに理解できますが、感動の本質はそこにたどり着くまでの過程にあります。
結末は予想できていたはずなのに、それがいざ目の前に訪れた時、誰がこんな結末を予想しただろうと涙腺が思わず緩んでしまいました。
以下は三秋さんのインタビューです。
話題の新刊「君の話」三秋縋さんインタビュー 絶望を小説の糧に
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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表紙
本書の内容に入る前に、表紙について言及したいと思います。
表紙にはクスノキとミヤギが描かれていますが、その次のページでは同じ風景にクスノキしか描かれていません。
これはクスノキ以外の人にはミヤギが見えないことを表していて、他の人から見た表紙の風景だと推測されます。
この状態でクスノキがミヤギに話しかけていれば、確かに傍から見れば異常な人か道化に見えますよね。
僕は最初、表紙の女性はヒメノだと思い込んでいたので、このことに気が付いたのは読了後でした。
この仕掛けについて、中盤頃に見るのと結末を知ってから見るのとでは受ける印象ががらりと変わりますので、ぜひ一度、結末を知る前に見ておいてください。
僕は装丁も含めてこその小説だと思っているので、これを楽しまない手はありません。
あらすじ
人生の価値
クスノキは幼い頃から周囲と馴染めず、孤独を感じていました。
そんな中で、ヒメノという少女だけがその孤独を共有していて、二人は十年後の約束をします。
ヒメノの転校をきっかけに二人は離れ離れになりますが、クスノキは彼女との約束を糧に人生を耐えます。
しかし、クスノキの人生は二十歳になっても好転せず、ただ生きていくことさえ困難な状況
にありました。
そんな時、クスノキは複数の人から寿命を高く買い取ってくれる店の存在を教えてもらい、その場所に向かいます。
その店では確かに寿命を買い取っていて、クスノキは人生のうちの三十年を査定してもらいます。
結果は、三十万円。
一年につき一万円、最低の買取価格というクスノキの低く見積もった予想の遥か下をいく結果でした。
それでもクスノキに売らないという選択肢はなく、三十万円を手にして店を出ます。
残された人生は、残り三か月でした。
監視員
自暴自棄になるクスノキですが、彼の前にミヤギという女性が現れ、彼女は監視員を名乗ります。
寿命を売った人間の多くは自暴自棄になって他社に危害を加えることがあり、ミヤギの役目はクスノキを四六時中監視し、それを未然に防ぐことでした。
そして、残りの三日間だけは監視員が外れ、一人になることができます。
こうして、クスノキとミヤギの奇妙な同居は始まりました。
ちなみにミヤギはクスノキ以外の人からは見えない存在で、傍から見ればクスノキは異常な人、もしくは道化のように見えます。
失望、絶望の連続
クスノキは数少ない知人、そしてヒメノと残り少ない時間を共有しようとします。
しかし、待っていたのは悲しく残酷な現実でした。
クスノキが相手に抱いている気持ちと、相手がクスノキに抱いている気持ちは違ったのです。
些細な、けれど大事なことをいくつもクスノキは見落とし、彼らの信頼や好意を裏切っていたのです。
ミヤギはクスノキの平穏な人生のためにこれらのことを事前に教えますが、クスノキはそれを無視して傷つきます。
信じていたものに何度も裏切られ、クスノキは自分の人生の価値に改めて絶望します。
本当の幸福
クスノキのそばにいてくれるのは、ミヤギだけ。
冷淡に見えるミヤギですが、彼女にも監視員になった理由があり、お互いを知ったクスノキはミヤギと共に本当の幸福を探します。
心の底から願いを体現した行動はやがて大きな影響をもたらし、その先にはクスノキの予想すらしていなかった結末が待っていました。
感想
中盤までが精神的にキツイ
タイトルからすると幸福な物語なはずですが、読めば分かるように、中盤ぐらいまで失望、絶望の連続です。
人生ってこんなに残酷なのかと、悲しすぎて笑えてくるほどです。
僕もクスノキと共通する点がいくつかあったので、ミヤギの言葉がいちいち突き刺さって仕方ありませんでした。
人生の価値には優劣がある、とは思いたくありませんが、それでも今から見直して、後から振り返って幸福だったと胸を張って人生にしたいと思うきっかけになりました。
とても人間らしい生き方
僕は本書にとても感情移入しましたが、その最大の理由がクスノキです。
彼は自らの人生を信じられないほど安値で売り払い、残された人生を精一杯楽しもうと決意します。
今まで我慢していたものを飲食したり、大事な友人・知人に会ったり、欲望に任せて最低な行動に出ようとしたり。
誰でも一度は考えることで、とても人間らしい生き方だなと親近感がわきました。
そんなクスノキも最後には本当の望みを見つけることができ、良かったねと感動するとともに、自分の望みが何なのかと考えるきっかけになりました。
まだ本当の望みを見つけてはいませんが、色々試して取捨選択していくこと自体が面白く、先入観にとらわれずに挑戦してみるものだと思えるようになりました。
タイトルの答え合わせ
タイトルにある『三日間の幸福』とは何か。
クスノキは紆余曲折の末、ついに辿り着くわけですが、これは予想通りであり、それでいて読者の誰もが想像しない『三日間の幸福』だったと思います。
本書の中でも書いてあるように、僕らは極限に追い込まれると物事を極端に考え、あたかもそれが自分の望みであるかのように錯覚します。
しかし、本当の幸せは人それぞれであり、クスノキはミヤギのサポートを受け、ずいぶん遠回りをしてそれを見つけます。
この幸せは先入観を抜きにして、ぜひあなたの目で確かめてください。
間違いなく、それは『三日間の幸福』でした。
おわりに
本書のあとがきを読んで、三秋さんの捻くれた部分も含めて本書のことが大好きになりました。
クスノキと同じく自分の人生を悲観したからこそ、こんな美しい物語が書けたのだと納得です。
三秋さんの作品はどれも書店で見かけて気になったものばかりだったので、少しずつ手に取り、またその世界観に浸りたいと思います。
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