『図書館の海』あらすじとネタバレ感想!10編の短編からなる豪華すぎる短編集
ある地方に伝わる奇妙なゲーム。秘密裏にゲームを引き継ぐ“サヨコ”のほかに、鍵を渡すだけのサヨコがいた―。もうひとつの小夜子の物語「図書室の海」ほか、あるウエイトレスの殺意と孤独を描くぞくっとする話、記憶を刺激する懐かしくも切ない物語、異色SFと、様々な物語を次々と紡ぎ出す恩田陸の世界を堪能できる1冊。
「BOOK」データベースより
恩田陸さんとしては珍しい短編集で、10編の短編で構成されています。
独立した話がある一方で、『夜のピクニック』や『六番目の小夜子』、『麦の海に沈む果実』と関連する話もあり、はじめて恩田さんの作品を読む方にはあまりおすすめしません。
ダメという意味ではなく、上記の作品を読んでから本書を読む楽しみがなくなってもったいないという意味です。
僕は『六番目の小夜子』未読の状態で該当する短編を読みましたが、十分に楽しめたと思います。
もちろん、予習済みの方がより楽しめたと思いますが。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
春よ、こい
タイトルは松任谷由実さんの『春よ、こい』が由来です。
親友同士の香織と和恵の話。
高校時代を起点に、二人は何度も同じ時間をやり直します。
タイムトラベルなのか、輪廻転生なのか、それとも全てが夢なのか。
とても不思議な話ですが、当の二人はそれを当たり前のように受け入れているのが印象的です。
それと、二人は親友の時もあれば親子の時もあり、何がどうなっているのか。
自分の子どもに相手の名前をつけると約束して、実際にそうしているので、親だろうと子どもだろうと香織は香織、和恵は和恵で意識がある程度共有されているのかもしれません。
何とも不思議な話で、相変わらず恩田さんは少女を書くのがうまい。
茶色の小壜
私は偶然、同僚の三保典子が事故で怪我をした男性を目撃。
典子は看護師(作中では看護婦と表記されています)の資格を持っていますが、血が苦手だという理由から諦めたと周囲に話していました。
しかし、典子は自分の指先についた血を見て笑っているところを私に目撃されていて、何かを隠していることは明白です。
私は典子のことを調べ始めますが、やがてそのことを典子に知られてしまい、彼女の本当の姿を知ることとなります。
その時のことは描写されていませんが、結末から何をされたのかは察することができます。
あとはどうやってそれをしたかですが、どんな方法をとったとしても怖すぎます。
自分の周りでも起こりそうなホラーだけに、読んでいて目が離せませんでした。
イサオ・オサリヴァンを捜して
元々大長編SF『グリーンスリーブス』の予告編として書かれた話。
ただ調べた限り、今も刊行予定で発売されていないようです。
ちなみに、その日本版として書いたのが『夜の底は柔らかな幻』だと恩田さんは言及しています。
肝心の内容ですが、様々な角度からイサオ・オサリヴァンがどんな人物なのかを浮き上がらせるもので、彼に何があったのかなど、読者に期待させて終わります。
僕があまりSFに興味がないせいか、本書の中ではあまり響かなかった話でした。
睡蓮
『麦の海に沈む果実』に登場する水野理瀬の幼年時代を描いた話。
校長の圧倒的存在感が確認できただけでも収穫ありです。
『麦の海に沈む果実』を先に読んでおいて良かったと思いました。
先にこちらを読むと多少のネタバレになるので。
ある映画の記憶
話の中で登場する一色次郎さんの小説『青幻記』、映画『青幻記』は実在する作品で、読んだり観たりすることをあとがきで恩田さんは勧めています。
また、この話は半ば実話とのこと。
内容ですが、私の記憶は一色次郎さんの映画『青幻記』となぜかリンクしていて、探し出した映画を見ると同時に、重大なことを思い出すというもの。
恩田さんの感受性の豊かさが印象的で、どこまでが実話なのか考えながら読むのも楽しいと思いました。
ピクニックの準備
『夜のピクニック』の予告編のような短編。
貴子、融、私の三人の視点から明日行われる最後の歩行祭への思いが語られています。
かなりあっさりしているせいもあって、完全にファン向けな気がします。
そこまでネタバレはないので、こちらを読んでから『夜のピクニック』を読んでも問題ないと思います。
国境の南
ホラーで、僕のお気に入りの話。
とある喫茶店では客に砒素入りの水を提供していて、それが発覚するも犯人と思しき人物は逃走。
喫茶店は閉店し、そこには新たな喫茶店ができていました。
犯人は今頃どうしているのだろう、なんて考えながら終わるのかと思いきや、話にはちゃんとオチがあります。
この切れ味がさすがで、今後、喫茶店で出される水を躊躇してしまうほどです。
オデュッセイア
旅する城塞都市のようなイメージの話で、恩田さんはこの話を年代記だといっています。
コロコロという謎の巨大生物が長い年月をかけて旅をしている話で、背中には居住地区があり、人間と共存しています。
人間の一生よりも遥かに長い時間を旅して、コロコロは次にどこに向かうのか。
ロマンを感じる一方で、栄枯盛衰の寂しさが印象的な話でした。
図書館の海
『六番目の小夜子』の番外編で、本編に登場する関根秋の姉、夏のエピソードです。
ちなみに、僕は『六番目の小夜子』未読の状態で読みました。
夏は卒業式の日、先輩の志田から秘密の使命と鍵を授かります。
それは『サヨコ』伝説に関係するもので、一年間鍵を保管し、卒業式に在校生の誰かに渡すという簡単な使命でした。
渡すだけのサヨコと呼ばれ、夏はサヨコ役となりました。
しかしそれだけなく、志田は手紙で夏に『図書館の海をよろしく』と伝えますが、それが何を意味するのか夏には分かりません。
結局、最後まで図書館の海について明確な答えは出ません。
『六番目の小夜子』を読んでいなかったこともあり、あまり印象に残る話ではありませんでした。
ノスタルジア
登場人物たちが懐かしい話をするという話。
懐かしさこそが人生の証拠だと本書ではいっていて、それが自分たちを作っている。
だから自分たちを証明するために、懐かしさについて語り続けなければならないのだと。
しかし、タイトルから受ける印象とは違ってホラーテイストな話で、この短編集らしい結びになっています。
ただこれまでの話が面白かった分、ちょっと物足りなさを感じてしまいました。
おわりに
恩田さんのファンであればたまらない豪華な一冊です。
一つ一つの話が短いので物足りなさを感じる人もいると思いますが、これも長編では味わえない魅力かなと思います。
あと、人によって短編ごとに当たり外れがあると思うので、自分に合うものだけ読み進めればオッケーです。
本書にはホラー、SF、青春など様々なジャンルの話が登場するので、自分に合う話を見つけたら、同じ系統の恩田さんの作品をぜひ読んでみてください。
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