『サイレント・トーキョー』あらすじとネタバレ感想!日本で起こる戦争が描かれたサスペンス!
「これは、戦争です」12月22日、クリスマスを目前ににぎわう東京・恵比寿で爆破テロが発生。すぐに届いた犯行声明で、犯人は日本国首相との生放送テレビ対談を要求、受け容れられなければ次は渋谷で無差別爆破テロを起こす、と予告する。対する首相はテロには屈しないと拒否。そして翌日、最悪の事態が…!圧倒的なリアリティとスケールでおくる衝撃のクライムサスペンス!映画原作。
「BOOK」データベースより
本書は佐藤浩市さん、石田ゆり子さんなどが出演して映画化され、話題になりました。
映画の公式サイトはこちら。
クリスマスイブという幸せに包まれた日に、突然勃発した連続爆破テロ事件。
日本人にとってほとんど経験のないテロ事件ですが、本書では東京の各名所を舞台に描かれているので、緊張感を持って読むことができました。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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インスパイアを受けた
本書はジョン・レノンの楽曲『Happy Xmas(War Is Over)』にインスパイアされたといいます。
この楽曲はクリスマスを祝うだけでなく、争いは終わるよ(War Is Over)という平和のメッセージが込められていますが、それがどう本書に影響しているのか。
楽曲を聞いた上で読むのもいいし、先入観なしで読んで、後で楽曲を聴いてみるのも一つだと思います。
あらすじ
事件の始まり
山口アイコは買い物に出かけ、恵比寿ガーデンプレイスのベンチにかけますが、そこで見知らぬ男に声を掛けられます。
ベンチの下に爆弾があると。
爆弾はアイコが座ったことで待機状態になり、立ち上がると爆発してしまうため、犯人の要求に従うしかありません。
犯人はテレビ局に爆弾のことを伝えてあり、アルバイトの来栖公太とその同僚がアイコの前に現れます。
アイコは同僚を座らせて自由になると、来栖には黒い時計をはめます。
これも爆弾で、アイコもつけています。
犯人の要求を伝えると、アイコは来栖を連れて場所を移動するのでした。
出会い
印南綾乃は合コンで須永基樹と知り合います。
須永はスマホのアプリ開発の会社を立ち上げた若き経営者で、雑誌の表紙に載ったこともあります。
綾乃は合コンに退屈していましたが、須永の奥底にあるユーモアさに惹かれ、後日、彼に誘われて一緒に食事をとります。
しかし特に盛り上がるわけでもなく、綾乃は須永が自分に興味がないのだろうと諦めますが、意外なところで須永と接点を持ち、それは一連の事件に関係していたのでした。
プロによる犯行
小規模ではありますが、恵比寿ガーデンプレイスのゴミ箱に設置してあった爆弾が爆発。
市民が混乱する中、来栖は犯人の用意したマンションに行きます。
一方、爆弾処理班はベンチに到着し、起爆装置を凍らせるために液体窒素を使用します。
次の瞬間、轟音と閃光がほとばしります。
犯人は爆弾処理班が液体窒素を使用することを読んで細工していたのです。
幸い、爆発はありませんでしたが、それは犯人が手を抜いただけで、本気になれば大惨事でした。
警察は犯人が爆弾のプロと認定し、本格的に捜査に乗り出します。
そんな中、犯人から犯行予告が出され、明日、渋谷駅のハチ公前がターゲットだといいます。
そして『これは、戦争だ』と。
惨劇
犯人は首相とテレビの生放送番組での対話を要求しましたが、首相はテロに屈しないと徹底抗戦の構えをとります。
警察はハチ公前を警戒しますが、犯人の計画は警察を上回り、爆弾が起動。
結果として、大勢の人間が亡くなり、平和な日本では見ることがないだろうと思われていた惨状が渋谷に広がります。
綾乃は友人と渋谷に来ていて、須永がいるところを目撃。
友人の提案で後をつけようとしたところ、爆発に巻き込まれ、重傷を負うのでした。
しかし、それでも首相は犯人からの要求を退け、犯人は次なる犯行予告を突きつけるのでした。
犯人の正体
警察は渋谷で来栖を保護。
話を聞きますが、彼は犯人のメッセンジャーに過ぎず、犯人に繋がる手がかりはほとんど得られませんでした。
アイコは一人で犯人の指示に従って行動していて、行方は分かりません。
前代未聞の事件に対応が遅れる中、様々な人物の視点から事件が語られ、次第に犯人とその動機が浮かび上がっていくのでした。
感想
舞台が日本とは思えない緊迫感
世界で起こる爆弾テロがニュースを通して僕らの元に届きますが、どうしても実感がわきづらいと思います。
しかし本書では、そのテロが日本の都市部で起こり、否が応でも残酷な現実を突きつけられます。
『これは、戦争だ』という犯人の声明にもある通り、その矛先は無関係な人たちにも無差別に向けられます。
誰が悪いわけでもないのに、運が悪かっただけで命を落とす。
通常のサスペンスでは味わえない緊迫感が本書にはあります。
視点の切り替えに酔うかも
主要人物の他に、爆発に巻き込まれる人たちの視点にも切り替わります。
ついさっきまで事件とは無関係だった人たちが、一瞬で命を奪われてしまう。
そんな残酷さを見せつける効果がありますが、それにしても渋谷のシーンでは切り替えが激しすぎるなと感じました。
初登場で、数ページで退場するような人が何人も現れ、名前も状況も覚えられないまま退場していく。
映画で見たらまた違った印象になると思いますが、小説という媒体においてこの演出はごちゃごちゃしすぎで、酔う人が出てくるかもしれません。
犯人の動機
最後に犯人の正体、その動機について説明がされますが、これも賛否両論が予想されます。
そもそも犯人の価値観が理解しがたいものなので、納得できない以前によく分からないと感じる人もいると思います。
正直、僕もぽかんとしてしまい、気が付いたら物語が終わっていたという感じでした。
この辺を理解する上で、本書がインスパイアされた楽曲を聴いておくと、理解の手助けになるかもしれません。
おわりに
読んでいてとても映画映えする作品だと思ったので、今から映画が楽しみです。
首をかしげたくなる点があったのも事実ですが、それ以上に他のサスペンスでは味わえない緊迫感だったり、クリスマスという幸せな時間との対比などたくさんの魅力が詰まっていますので、映画を見る前に読んでみてはいかがでしょか。
もちろん映画を見る予定がない人にもおすすめですので、『クリスマス』、『連続テロ』などのワードが琴線に触れる方は要チェックです。
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