『空中ブランコ』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!
伊良部総合病院地下の神経科には、跳べなくなったサーカスの空中ブランコ乗り、尖端恐怖症のやくざなど、今日も悩める患者たちが訪れる。だが色白でデブの担当医・伊良部一郎には妙な性癖が…。この男、泣く子も黙るトンデモ精神科医か、はたまた病める者は癒やされる名医か!?直木賞受賞、絶好調の大人気シリーズ第2弾。
「BOOK」データベースより
読むまで全く知らなかったのですが、精神科医・伊良部シリーズの二作目だったんですね。
前の話はこちら。
一作目の『イン・ザ・プール』の前に読んでしまいました。
幸い、一話読み切りの短編で構成されていて、前巻を読んでいなくても十分に楽しめました。
ドラマ化、舞台化、アニメ化など様々なメディアにも進出しているので、知名度もかなり高いのではないでしょうか。
本書に関する奥田さんへのインタビューはこちら。
小説執筆中に巨大な石が動く瞬間 『空中ブランコ』 (奥田英朗 著) | インタビュー・対談 – 本の話
この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
空中ブランコ
山下公平は両親が団員の新日本サーカスで生まれ育ち、空中ブランコ乗りのエースとして活躍していました。
ところが、ある時からミスが目立つようになり、公平はキャッチャーである内田のミスだと決めつけます。
周囲からのアドバイスも耳に入らず、妻のエリなどの勧めにより伊良部総合病院の神経科を受診します。
彼を診るのは伊良部一郎という医師ですが、治療と呼べるようなことは何もされず、
ホットドッグほどの太さの注射器でビタミン注射をされただけ。
看護師のマユミも若くて肉感的で無愛想で、とても看護師には見えません。
こんなことで治るのかと不安になる公平ですが、そんなことはお構いなしに伊良部は翌日、新日本サーカスを訪れます。
伊良部は公平が止めるのも聞かず、子どものように空中ブランコに挑戦。
体重百キロということで運動神経は全くありませんが、怖さを知らないジャンプで団員の心をつかみ、連日のように姿を現すようになります。
一方、公平の演技は悪化するばかりで、周囲との関係もギスギスしていきますが、誰も内田のミスを責めません。
そこで公平は、エリにその瞬間をビデオで隠し撮りしてもらいますが、そこに映っていたのは無様な演技をする公平自身でした。
ミスをしていたのは公平の方だったのです。
結局、公平はその後の演技から外されますが、ダメになってしまった原因が分かってきました。
サーカス団という組織が世間の流れで会社化する中、公平は身内意識が高すぎるあまり、新しい人に対して知らない内にバリアーを張り、勝手に警戒していたのです。
一方、伊良部はたった一週間という期間でサーカス団の人間に気に入られ、ショーで実際に空中ブランコに出ることになります。
迎えた本番。
公平は自分の息子や伊良部の姿を見て、大切なのは相手のことを信じて無心になることであることに気が付きます。
伊良部は本番でも気負いすることはなく、その奇妙な見た目もあって会場を沸かします。
デブがスイングする姿は絵になり、公平まで誇らしい気分になります。
内田もキャッチに成功し、会場には大きな拍手が鳴り響くのでした。
ハリネズミ
猪野誠司は紀尾井一家の若頭として名前を轟かせていましたが、ある時から尖端恐怖症になってしまい、ヤクザとしての示しがつかないことから部下には黙っていました。
内縁の妻である和美の勧めで、誠司は伊良部総合病院を受診。
誠司はヤクザの自分を全く恐れない伊良部とマユミに驚きながらも、伊良部の勧めでサングラスをかけてみることに。
目をガードしたおかげで不安感は軽減されますが、今度はサングラスのつるの部分が怖くなってしまい、仕方なくスキー用のゴーグルをつけることにします。
さすがに部下も違和感を覚えますが、理由を聞ける人間などいません。
伊良部はヤクザ稼業を『ハリネズミ』みたいなものだとして、相手を威嚇することに疲れたのではと分析。
誠司は伊良部相手には否定しますが、後になって腑に落ちる部分もありました。
そんな時、自分たちの組の指示に従わない会社相手に血判状を送ることになり、誠司は伊良部にすがります。
血判状は、組の頭の前で自分で短刀で指を切らないといけないからです。
誠司は数回にわたる注射によって以前よりは症状が改善していたため、異例ではありますが、部下に自分の指を切らせることにします。
しかし、自分で切らないと意味がないといわれ、仕方なく指を歯で噛み切ってその場をやり過ごします。
ほっとする誠司ですが、トラブルはそれだけではありません。
和美が水商売のお店を別の組のテリトリーに出し、そのことを知った吉安は激怒。
誠司も引くわけにはいかず、伊良部を大物のように見せかけて、二人で吉安の指定する喫茶店に乗り込みます。
吉安は短刀を所持していて、誠司は恐怖を覚えますが、伊良部は吉安にチックという神経症の症状が出ていることを見抜きます。
吉安は部下に席を外させると、伊良部は彼がブランケット症候群にかかっていることを話します。
ブランケット症候群とは特定のものがあることではじめて精神が安定する依存症のことで、吉安の場合、短刀がないと不安で仕方ないのです。
事情を知った誠司は気が抜け、自分も尖端恐怖症であることを告白。
今回の一件は二人の間だけの話ということでおさめ、吉安も伊良部のところを受診することにします。
誠司は、頭が亡くなったら引退したらどうかと和美に持ち掛けられ、悪くないと思うようになります。
もう、不安感は一つもありません。
義父のヅラ
麻布学院大学医学部の同窓会に参加した池山達郎。
彼の義父・野村栄介は学部長になり、周囲からは教授を約束されたも同然と思われています。
実は伊良部も同期で、彼に対する扱いは相変わらずです。
同窓会は栄介の学部長就任のお披露目会のようになっていますが、達郎はそれどころではありませんでした。
彼は、栄介の一目でヅラと分かるそれを剥いでしまいたくてたまらないのです。
伊良部はそんな彼の様子に気が付き、自分の病院を受診するよう勧めます。
翌日、達郎はダメ元で伊良部のもとを訪れ、原因を探りますが、さすがにヅラのことは言えず、羽目を外すことが重要だとアドバイスをもらいます。
しかし、大学の講師である達郎がそんな軽はずみな行動にでるわけにはいきません。
それでも、仕事以外でも孫の顔見せなどで栄介とは会わないといけないため、一刻も早く治療しなければ、いつか大惨事になりかねません。
そこで伊良部のアドバイスに従い、『金王神社前』という看板を『金玉』に変えたり、同僚の看護師に対していつもと違ってジョークを振りまくなどしてストレスを発散。
効果はあったように思えました。
しかし、これ以上続けて警察の厄介になるわけにはいかず、さらにジョークなどは奇行と捉えられていて、確実に彼の立場を危ういものにしています。
そこで達郎はついに本当の悩みを話し、伊良部と協力して本当に栄介のヅラを捕ることにします。
翌日、大学に伊良部がやって来ると、中庭で眠っている栄介のヅラをとることに成功し、写真まで撮影します。
そこに同期の倉本が現れて激怒し、慌ててヅラを戻そうとしますが、そのタイミングで栄介が目を覚ましてしまい、絶体絶命のピンチ。
と思われましたが、栄介は伊良部に愛想を振る舞うのに必死で、ヅラのことはすぐに忘れてしまいます。
伊良部の父親の権力の賜物です。
その夜、解放感に包まれた達郎は、堅苦しい生活をやめ、自分らしく振る舞うことを決めます。
すると食事中、テレビでカツラのCMを見た息子の拓也が『ジイジ』と口にし、妻の仁美と共に驚きます。
そして達郎は仁美もヅラのことで悩んでいたことを知り、夫婦の距離まで縮まったような気がしたのでした。
ホットコーナー
ホットコーナーとは、強烈な打球が最も飛んでくる野球の三塁のことです。
プロ野球選手の坂東真一は名三塁手として名を馳せてきましたが、ある日から突然一塁への送球が怖くなってしまい、伊良部のもとを訪れます。
真一が事情を説明すると、自分の体が思ったように動かないイップスだと伊良部は診断します。
一方、ルーキーの鈴木は真一の空けたポストにつき、連日活躍を見せ、真一にプレッシャーがかかります。
真一は親友で打撃投手の福原と練習に励みますが、症状は悪化するばかりで、改善の兆しが見えません。
しかし、周囲には怪我ということで試合を休ませてもらっているため、休むにも限界があります。
そんなある時、鈴木への対抗意識がプレッシャーとなり、自分のプレイがおかしくなっていることに気が付いた真一ですが、鈴木と食事をする機会がありました。
優等生だと思っていた鈴木ですが、意外にも酒豪で、しかも酒癖が悪い。
トラブルに巻きこまれながらも、鈴木の将来性を感じ、今までと違った印象を抱きます。
その後、真一は伊良部の所属する草野球チームの試合に呼ばれます。
勝っても負けても楽しい雰囲気に、野球の楽しさを思い出します。
そんな中、真一は誰かの子どもとキャッチボールをし、しっかりスローイングができていることに気が付きます。
打席には伊良部が立ち、甘い球を二球続けて空振ってやじられていました。
真一も面白がってそれに参加すると、伊良部は次の球を見事に打ち、ボールはフェンスの向こうの川に消えていくのでした。
女流作家
小説家の星山愛子は都会派作家として名を馳せていましたが、ある時から、新作を書いているとすでに使った設定なのではと不安に駆られ、著作を読み返さずにはいられないようになっていました。
心因性嘔吐症もあり、伊良部のもとを訪れます。
しかし、肝心の設定の件については話すを忘れてしまい、後日、なぜか伊良部から小説を書いたと原稿を渡されてしまいます。
挿絵を描いたのはマユミです。
しつこい伊良部に折れ、愛子はその原稿を編集者に渡します。
それから伊良部の指示に従い、書きたい話を書いてみますが、どうもしっくりきません。
愛子はかつて『あした』という自分の中での傑作を生み出し、成功を予感しました。
しかし、『あした』は売れず、そういった本気の話を書くのを怖く感じているのでした。
その後も症状は悪化。
そんな時、編集者の荒井は伊良部に原稿を書籍化してほしいと言い寄られて困り、愛子に助けを求めます。
愛子は断ろうとしますが、誰かを罵倒したい気分になり、出版社に乗り込んで伊良部を叱りつけます。
しかし、逆に居合わせた愛子の友人でフリー編集者の中島さくらに説教されてしまいます。
愛子よりも失敗している人など腐るほどいて、愛子の考えはまだまだ甘ったれているのだと。
後日、伊良部のもとを訪れた愛子。
昨日のさくらの言葉に励まされ、自信を取り戻していました。
その帰り、愛子はマユミに呼び止められ、渡した『あした』を褒められます。
全く愛子の作品に興味を示さなかったマユミからもらった言葉に、愛子は人間の言葉は宝であることを確信します。
そして、その言葉を扱う仕事に就いたことを誇りに思おうと。
おわりに
こんな精神科医に診て欲しい…とは思いませんが、不思議と憎めないキャラなのが伊良部の持ち味ですね。
アニメなど別媒体でも活躍していますので、そちらも見てみたいと思います。
次の話はこちら。
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