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『イン・ザ・プール』あらすじとネタバレ感想!強烈な個性の精神科医・伊良部が活躍するシリーズ第一弾

「いらっしゃーい」。伊良部総合病院地下にある神経科を訪ねた患者たちは、甲高い声に迎えられる。色白で太ったその精神科医の名は伊良部一郎。そしてそこで待ち受ける前代未聞の体験。プール依存症、陰茎強直症、妄想癖…訪れる人々も変だが、治療する医者のほうがもっと変。こいつは利口か、馬鹿か?名医か、ヤブ医者か。

「BOOK」データベースより

『精神科医 伊良部シリーズ』の第一弾となる本書。

表題作含めた五つの短編から構成されています。

2005年には映画化され、2009年には『空中ブランコ』のタイトルでアニメ化され、本書からは『勃ちっ放し』、『フレンズ』、『いてもたっても』、『コンパニオン』が『天才子役』というタイトルでアニメ化されています。

誰にも言えない、理解してもらえない患者が精神科医・伊良部の元を訪れるというのが基本パターンで、伊良部のとんでもぶりに驚かされながらも、実は名医なのでは?と思えてくるところに本書の魅力があります。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

イン・ザ・プール

大森和雄は原因不明の身体の不調に悩まされ、伊良部総合病院を受診。

ところが異常は見つからず、そこで紹介されたのが病院の地下にある神経科でした。

神経科には奇人と呼ぶにふさわしい精神科医・伊良部と、肉感的で怠惰で冷徹な看護師・マユミが待っていて、伊良部は不定愁訴だと診断。

大森はしばらく通うことになり、運動を勧められて水泳を始めます。

何気なく始めた水泳ですが、次第に最近では味わったことのない幸福感に包まれて、仕事そっちのけで水泳にのめり込んでいきます。

勃ちっ放し

伊良部の元を訪れた田口哲夫は、精器の隆起がいつまでも収まらずに困っていました。

外的ショックを与えても治らず、しばらく通院することになりますが、田口には原因に思い当たる節がありました。

弱気な性格で言い返せない自分に代わって、精器が怒りを表しているのではないのかと。

そこに思い当たっても、実行に移せない田口ですが、ある日、それを実行に移す出来事に遭遇します。

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コンパニオン

コンパニオンの安川宏美は常に誰かに見られていることに悩んでいました。

しかしストーカーは一向に見つからず、同僚の勧めで病院を受診。

しばらく伊良部の元に通うことになりますが、症状は悪化するばかり。

宏美はますます疑心暗鬼になり、映画会社主催の女優オーディションに参加してひと悶着起こします。

フレンズ

高校二年生の津田雄太は自分で気が付かないうちに携帯依存症に陥り、携帯を少しの時間でも使えないだけで不安で仕方ありません。

母親の勧めで伊良部の元を訪れることになりますが、津田に治す意思どころか携帯依存症だという認識が全くなく、症状は悪化します。

それでも津田はなんとか携帯にしがみつこうとしますが、やがて自分が無理していることに気が付きます。

いてもたっても

ルポライターの岩村義雄は強迫神経症に悩んでいて、彼の場合はたばこの火の始末が気になり出すと確認せずにはいられないという症状でした。

伊良部の元を受診して改善策を打つものの、思うような効果は得られず、症状は悪化するばかり。

しかし、岩村のこの症状が思わぬ結果を生むことになりました。

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感想

とにかく伊良部の変人ぶりが光る

本書に限らずシリーズ全体を通してですが、最大の見どころは何といっても伊良部の変人ぶりです。

太って色白で、清々しいほど勘違いした自慢やとんでもない行動の数々。

注射するところを見るのが大好きな変態。

適当に見えて、意外と的を得た診断と改善策。

ただの変人なのか、実は名医なのか分からないところに彼の良さがあります。

彼の元を訪れる患者は、皆はじめは伊良部を気味悪がりますが、話を重ねるにつれて何だかんだ彼に心を許すようになり、伊良部には精神科医としての素質があることがうかがえます。

伊良部の助手である看護師のマユミも良いキャラをしていて、無愛想だけれど悪い人でないことが分かると愛着が湧いてきます。

こんな神経科があったら、行きたいような行きたくないような。

読了後もつい悩んでしまいます。

パターン化されて分かりやすい

本書は短編で構成されていますが、どれも話の構成は似ています。

精神的な問題で悩む患者が伊良部の元を訪れ、注射を打たれた上で通うことになる。

次第と症状が悪化するものの、やがて憑き物が落ちたようにすっきりする。

大体がこのパターンで、短編を一つ、二つ読めばすぐに読書のペースが掴めると思います。

そうすると余計なことを考えずに読むことが出来るので、物語やキャラクターを純粋に楽しむ余裕が生まれます。

この気楽さが本書の売りであり、著者の奥田英朗さんの上手さが光るポイントだと思います。

おわりに

短編かついわゆるキャラ物なので、読書が苦手という人でも読みやすい内容になっています。

気に入ったという人はぜひ続編にも挑戦してみてください。

特にシリーズで繋がりはないので、シリーズの途中から読んでも問題はありません。

次の話はこちら。

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