『舟を編む』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!
出版社の営業部員・馬締光也は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部に引き抜かれた。新しい辞書『大渡海』の完成に向け、彼と編集部の面々の長い長い旅が始まる。定年間近のベテラン編集者。日本語研究に人生を捧げる老学者。辞書作りに情熱を持ち始める同僚たち。そして馬締がついに出会った運命の女性。不器用な人々の思いが胸を打つ本屋大賞受賞作!
「BOOK」データベースより
三浦しをんさんの作品の中で最も知名度が高いであろう本書。
アニメ化もされ、読書を普段あまりしない人にまで普及した名作です。
タイトルの舟とは『辞書』のことです。
無数にある言葉はまるで海のようで、その海を何も心配せず渡るためには辞書が必要不可欠であり、本書ではその辞書が出来上がるまでの十数年を描いています。
最近の若い人からすると馴染みがあっても電子辞書で、紙の辞書を引いたことがないという人もいるかもしれませんが、辞書に注がれた情熱は形を変えて受け継がれていますので、ぜひ読んでみてください。
この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
大渡海
荒木公平は幼い頃から辞書の魅力に惹かれ、玄武書房に入社して編集者として辞書作りに携わり、間もなく定年退職を迎えようとしていました。
そんな彼にとって心残りなのは、これまで長年仕事を共にしてきた国語学者の松本と企画した辞書『大渡海』のことでした。
辞書はその特殊性ゆえに、適した人材もかなり限られます。
さらに会社は目先の利益をつい優先してしまうため、辞書編集部は常に人材不足で、今も荒木を除けば、営業向きだけれど辞書には向かない軽薄な西岡と、実務を担当する契約社員の佐々木のみ。
そんな時、辞書作るに打ってつけの人物が営業部にいると西岡が聞きつけ、荒木は早速オファーを出します。
その人物は馬締光也といい、一見冴えない見た目で頼りなく見えますが、その実、言葉に対して鋭い感性を持ち合わせ、こいつだと荒木は確信。
営業部に根回しをして彼を辞書編集部に引き抜きます。
馬締は不器用で変わっていますが、愛嬌もあってすぐに辞書編集部に溶け込みます。
後任を見つけた後も、荒木はお目付け役として大渡海作りに参加し、ようやく辞書作りはスタートするのでした。
恋文
馬締が辞書編集部に異動して三ヶ月。
彼の下宿先である早雲荘に、大家のタケの孫である林香具矢がやってきて、一つ屋根の下で暮らすことになります。
馬締は一目見て香具矢のことが好きになり、しかしこの気持ちをどう伝えていいのか分からず、悶々としていました。
香具矢は板前で、『梅の実』という料理屋で修業をしていて、恋の話を聞きつけた辞書編集部の意向でこのお店を度々訪れることとなります。
香具矢は仕事に夢中であることが一目で分かり、彼女の邪魔をせずに思いを伝えるにはどうしたらいいのだろうと、馬締はさらに悩むこととなります。
そんなある日、馬締と香具矢は休みの日がかぶり、後楽園遊園地に行くことになります。
馬締は香具矢への気持ちを再確認するも、口ではうまく気持ちを伝えられないことを痛感します。
そこで誠心誠意を込めた恋文を書き、香具矢になんとか渡します。
それから一週間。
香具矢からは何の返事もなく、不安になる馬締ですが、不安はそれだけではありません。
西岡がこの春で宣伝広報部に異動になることが決まったのです。
これまで外部との交渉は西岡が一手に引き受けてきたため、馬締がそれらをこなせるのか西岡は不安で仕方ありません。
軽薄だった西岡ですが、いつの間にか馬締のことや辞書作りが好きになっていて、残された時間で辞書作りをサポートします。
一方、返事を待ちきれなくなった馬締は、意を決して香具矢に恋文の返事を聞きます。
すると、彼女はもらった手紙が恋文かどうか確信が持てず、前の恋愛のこともあり臆病になってしまい、ずっと黙っていたのでした。
馬締は改めて好きですと告白をし、香具矢もそれを了承。
こうして二人は結ばれるのでした。
一方、ここで西岡の馬締に対する羨望や嫉妬、尊敬などの気持ちが描かれ、大学時代から腐れ縁となっていた三好麗美へのプロポーズを決意。
その結果は描かれていませんが、後に二人が結婚したことが分かります。
十三年後
大渡海の話が立ち上がってから十三年後。
玄武書房に入社して三年が経つ岸辺みどりは、異動で辞書編集部にやってきます。
彼女は主任となった馬締に会い、この先、自分は大丈夫だろうかと不安に襲われます。
しかし、馬締は来て早々の彼女に対して、辞書作りに向いていると評価していました。
みどりは最初の仕事として、大渡海に使用する紙のサンプルの説明を馬締と一緒に受けます。
あけぼの製紙の担当者・宮本慎一は昨年から大渡海のためだけに特注の紙を作っていて、みどりはサンプルを触って驚きます。
それはとても薄くて軽く、しかも印刷した時が裏に透けて見えません。
さらに温もりが感じられる色合いで、宮本をはじめ製紙会社の熱意が見て取れます。
しかし、馬締は妥協しません。
指に紙が吸いつく『ぬめり感』がないことを指摘し、みどりはまだ要望があるのかと驚きます。
馬締がどれだけの熱意を持って辞書作りをしているのかは分かりましたが、コミュニケーション不足は否めず、大丈夫だろうかとまたしても不安に襲われます。
そんな時、みどりが見つけたのは㊙ファイルで、それは西岡から後任に当てた引継ぎ資料でした。
資料の終わりには西岡のメールアドレスが書かれていて、みどりは早速メールを送ってみます。
すると西岡から返信がきて、書棚のブックエンドを見るよう指示されます。
西岡はこの後もあまり登場しませんが、麗美とは無事に結婚し、今では四児の父であることが明かされます。
調べると、そこには香具矢に宛てた馬締の恋文がありました。
あまりに下手くそな言葉にがっくりしますが、ここでみどりは思い至ります。
馬締は言葉にまつわる不安と希望を実感し、だから言葉が詰まった辞書を熱心に作っているのでは。
それであれば、自分にもできるかもしれない。
みどりは自分の気持ちと馬締の気持ちがそう遠くないことを知り、希望を持って辞書作りに参加します。
心残り
大渡海の発売を来年に控え、大渡海のための紙がついに完成します。
馬締の事情でみどりだけがその紙をチェックしますが、素晴らしいとしか言いようがない出来でした。
これには宮本も満足そうで、二人は完成を祝して二人で食事に行き、やがて付き合うことになります。
一方、馬締は大渡海の完成を控え、言葉を生み出す心は権威や権力とは無縁な自由なものだと松本に諭されて、より一層気を引き締めます。
しかし、数日後に抜けている言葉が見つかり、アルバイトの学生含め大勢の人間によって再度内容のチェックをします。
言葉の海を渡る舟に、穴などあってはいけないからです。
さらに松本が入院してしまいます。
最初は検査入院ということでしたが、やがて食道がんが見つかり、日に日にやせ細っていきます。
松本が生きている間に、なんとしてでも大渡海を完成させて見せたい。
馬締はこの一心で辞書作りに取り組み、ほとんどの日を会社で寝泊まりします。
その甲斐あってなんとか大渡海のページ刷りが始まり、完成はもうすぐそこでした。
しかし、松本は完成を待つことなく亡くなってしまい、馬締は悔しさで涙を流します。
結末~完成~
松本の死後、ついに大渡海が完成。
あとがきには、ちゃんと西岡の名前も入っています。
馬締は今でも松本が生きているうちに完成させられなかったことを後悔していましたが、荒木から松本の遺した手紙を見せてもらいます。
そこには、不安も後悔もない、大渡海編纂に携われたことへの喜びが書いてありました。
馬締は松本の遺した言葉を胸にしまい、その記憶を伝えていくにも言葉は絶対に必要であることを確信します。
荒木はすでに大渡海の改訂作業について考えていました。
そう、辞書は完成したら終わりではありません。
この先何十年も言葉の海を渡るために、時代に合わせた改訂をする必要があり、むしろ始まったばかりなのです。
馬締は荒木の言葉に頷き、完成を祝う今日だけはその喜びに浸るのでした。
おわりに
三浦さんの描くキャラクターには魂が宿ったかのような躍動感があり、まるで目の前でやりとりを見ているような臨場感がありました。
こんな作品を読んだら、言葉をもっと大切に思いたいとつい願ってしまいます。
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