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僕が2025年に読んだおすすめ小説ベスト10!

harutoautumn
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このブログは開設から今年で8年が経ちました。

仕事が忙しいせいで片手間感は否めませんが、その一方でブログを書くことで自分がどんな気持ちで本を読んだのかが分かり、自分を見つめ直す上で貴重な瞬間だと感じました。

現在、読み終わった本の記事執筆が追いついておらず、2025年12月26日現在、98冊の本を読みました。

記事にしていない本を含めれると105冊程度なので、100冊/年はかろうじて保っている感じです。

この記事では、その中で2025年に読んでよかった小説ベスト10を紹介しています。

年末年始のお供に、あるいは2026年の読書の参考になれば嬉しいです。

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僕が2025年に読んだおすすめ小説ベスト10

第10位『人間標本』

イヤミスの女王、新たなる覚醒

人間も一番美しい時に標本にできればいいのにな――。ひどく損壊された6人の少年の遺体が発見されると、社会はその事件の異様さに衝撃を受けた。大学の生物学科で蝶の研究をする榊史朗は、蝶の世界を渇望するあまり、息子を含む6人の少年たちを手にかけたと独白する。蝶に魅せられ、禁断の「標本」を作り上げたという男の手記には、理解しがたい欲求が記されていた……。耽美と狂おしさが激しく入り乱れる、慟哭のミステリ。

Amazon商品ページより

湊かなえさんがデビュー十五周年を迎えるにあたり、新たな代表作を生み出しました。

それが本書で、文庫化を機に手にとりました。

人間を美しい状態で標本にするという分かりやすく異常な行為なのですが、そこに至る背景や裏に隠された真実がとにかく読み応え抜群です。

読み進めるにつれて真実がひっくり返る感覚。

それが何度も起こることで本当の真実は何なのか、僕ら読者は疑うことになります。

何度も人間の悪意が凝縮され、これ以上はと思ってもそれ以上の悪意が待っている。

まさにイヤミスの女王が生み出すにふさわしい作品だと思います。

人間標本のタイトルの通り、その描写も残酷ですが美しく、人間を標本にする意義のようなものを見せつけられ、倫理観とそうでないところの狭間を行き来するような感覚も新鮮でした。

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第9位『やみ窓』

2年前に結婚し、夫と死別した柚子は昼間はコールセンターのシフト制で働くフリーターだ。義理の母は柚子に息子を殺されたと罵倒する。柚子が味わった地獄は、別の形となって続いていた。それは何の前触れもなく突然やってくる異界のものたちとの闇の取引だ。いつ蹂躙されるともしれない危険と隣り合わせだが、窓の外の哀れな貧しい物の怪たちの来訪を待ちわびる柚子なのであった……。(「やみ窓」)
 月蝕の夜、「かみさん……」土の匂いのする風が吹き、野分の後のように割れた叢に一人の娘が立っていた。訛りがきつく何をしゃべっているか聞き取れないが、柚子を祈り、崇めていることが分かった。ある夜、娘は手織りの素朴な反物を持ってきた。その反物はネットオークションで高額な値が付き……。そんなとき団地で出会った老婦人の千代は、ネットオークションで売り出した布と同じ柄の着物を持っていた のだ。その織物にはある呪われた伝説があった……。(「やみ織」)
 ほか、亡き夫の死因が徐々に明らかにされ、夢と現の境界があいまいになっていく眩暈を描いた「やみ児」、そして連作中、唯一異界の者の視点で描いた「祠の灯り」でついに物語は大団円に。色気と湿気のある筆致で細部まで幻想と現実のあわいを描き、地獄という恐怖と快楽に迫った傑作。

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アンソロジーなどで篠たまきさんの魅力に目覚め、まず手にしたのが本書です。

独身女性の現実世界に対する疲れと、そこから逃避するように誘われる異世界。

異世界には自宅の窓からいけるのですが、そこは現実世界の常識が通じない場所で、いつ殺されてもおかしくない危険があふれています。

それでも女性は窓の外に魅力を感じ、現実世界では埋められない何かを求め続けます。

幻想的で、色気と湿り気があり、ホラーという一言では片づけられないノスタルジーのようなものが感じられ、とにかく僕の好みドンピシャでした。」

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第8位『夏の名残の薔薇』

この殺人事件は真実なのか、それとも幻か!?
沢渡三姉妹が山奥のホテルで毎秋、開催する豪華なパーティ。
不穏な雰囲気のなか、関係者の変死事件が起きる。はたして犯人は――

沢渡三姉妹が山奥のクラシック・ホテルで毎年秋に開催する、豪華なパーティ。
参加者は、姉妹の甥の嫁で美貌の桜子や、次女の娘で女優の瑞穂など、華やかだが何かと噂のある人物ばかり。
不穏な雰囲気のなか、関係者の変死事件が起きる。
これは真実なのか、それとも幻か!?
巻末には杉江松恋氏による評論とインタビューも収録。

Amazon商品ページより

恩田陸さんの作品はいつもどこか浮世離れしていて、現実を忘れて創作に浸るのにもってこいです。

世界観や登場人物の個性、言い回しなどどれをとっても現実ではあり得さそうなのに、誰もが人間らしい自分勝手さ、醜さを有していて、それが幻想的に描かれるから現実とは切り離して楽しむことができる。

このレベルまで昇華できることこそが、恩田さんのすごさではないかと思っています。

年々の未読の作品が少なくなってきているので悲しくはあるのですが、本書のように読めば心に残ること間違いなしなので、毎年何かしらを新しく読みたいなと思っています。

王道作品とは異なりますが、『ユージニア』のように本当に存在するのか分からないものを追い掛ける幻想感が好きな人には特にオススメです。

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第7位『近畿地方のある場所について』

“新しい”情報をお持ちの方はご連絡ください。

私、小澤雄也は本書の編集を手掛けた人間だ。
収録されているテキストは、様々な媒体から抜粋したものであり、
その全てが「近畿地方のある場所」に関連している。
なぜこのようなものを発表するに至ったのか。
その背景には、私の極私的な事情が絡んでいる。
それをどうかあなたに語らせてほしい。
私はある人物を探している。
その人物についての情報をお持ちの方はご連絡をいただけないだろうか。

※単行本とは内容が異なります。ご了承ください。

Amazon商品ページより

ここ数年ホラー界隈がにぎわっていますが、その筆頭作こそが本書ではないでしょうか。

寄せ集まっただけに見える情報が全て近畿地方のある場所に通じている。

作品が進むにつれて何かが見えてくるのですが、ピントが微妙にずれたまま作品は完結し、読者にはそのピントを完全に合わせる術がないという消化不良感があります。

しかし、だからこそいつまでも不気味さが残る良さがあって、本書は令和のホラーを語る上で外せない一作になったのではないかと思います。

一方で僕はインパクトが強い作品に惹かれる傾向にあり、その意味でもうひと押しだったのでこの順位としました。

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第6位『スタープレイヤー』

路上のくじ引きで一等賞を当て、異世界に飛ばされた斉藤夕月(34歳・無職)。そこで10の願いが叶えられる
「スタープレイヤー」に選ばれ、使途を考えるうち、夕月は自らの暗い欲望や、人の抱える祈りの深さや業を目の当たりにする。
折しも、マキオと名乗るスタープレイヤーの男が訪ねてきて、国家民族間の思惑や争いに否応なく巻き込まれていく。
光と闇、生と死、善と悪、美と醜――無敵の力を手に、比類なき冒険が幕を開ける!
鬼才・恒川光太郎がRPG的興奮と神話世界を融合させ、異世界ファンタジーの地図を塗り替える、未曾有の創世記!

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恒川光太郎さんが異世界ファンタジーを描いたらどうなるのか。

それが本書なわけですが、結論から言うと、めちゃくちゃ面白いです。

望まず異世界に飛ばされた人たちがスタープレイヤーになり、十の願いを叶える力を手に入れます。

はじめはただ思いつくがままに願いを叶えるのですが、次第に発想によって叶えられる願いの範囲を拡大させていき、やがてスタープレイヤー同士の見えない争いに巻き込まれていきます。

恒川さんは人間を冷静に見ているイメージがあって、決して安易なハッピーエンド・バッドエンドを用意しない人だと思っています。

それが本書にも反映されていて、誰でも楽しめるエンタメに仕上がっているのに、簡単に読み流すには難しいほどの引っ掛かりも用意してくれている。

続編もあり、じっくりたっぷり楽しみたい人には絶対読んでほしい作品です。

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第5位『ばくうどの悪夢』

僕の姉は怪談作家だ。本名にちなんだ呻木叫子というふざけた筆名で、専攻していた民俗学でのフィールドワークの経験を生かしたルポルタージュ形式の作品を発表している。ある日姉の自宅を訪ねた僕は、密室の中で両瞼を己の髪で縫い合わされて昏睡する姉を発見する。この常識を超えた怪事件は、彼女が取材中だった旅館〈影踏亭〉に出没する霊と関連しているのか? 姉を救う手掛かりを求めて宿へ調査に出向くことにした僕は、宿泊当夜に密室で起きた殺人事件の容疑者となってしまい……第17回ミステリーズ!新人賞受賞作ほか、全4編を収録。

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比嘉姉妹が出てくる作品がつまらないはずがない。

読む前から期待値はMAXだったのですが、それでも過少評価していたのではと思わされるくらいに面白かったです。

澤村伊智さんといえば、人間の嫌な部分をリアルに描き、それを恐怖に変化させる名手なのですが、本書でもその手腕が遺憾なく発揮されています。

また比嘉家の事情も垣間見ることができ、シリーズを追ってきた人の胸を満たす意味でも名作でした。

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第4位『無限の回廊』

「まだ?」と声が聞こえるたび、佐々木るみはそっと目を開いて、絶望に囚われる――。最強の拝み屋・物部斉清が死んだ。心霊案件を取り扱う事務所の所長である彼女は、不妊に悩む依頼人が連れてきたおぞましい怪異を止めきれず、物部を巻き込んでしまったのだ。頼る者がいない中、るみは自らの中に巣食う獰猛で最凶の敵に立ち向かうことになる。次々と開く扉の中で待ち受けるのは、はてなき悪夢と深淵。シリーズ最大の衝撃作!

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芦花公園さんは絶望を描くのが本当に上手い。

そして目を逸らしたいのに、逸らせない魅力を兼ね備えさせることで、読者を問答無用でその世界に引きずり込みます。

本書は佐々木るみの視点で進行するのですが、終始絶望感がすごく、この先に光はあるのか?と不安になりながら読んだことを今でも鮮明に覚えています。

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第3位『最恐の幽霊屋敷』

転落が止まらない、 ジェットコースター級の事故物件ホラー長篇!

「最恐の幽霊屋敷」という触れ込みで貸し出されている物件がある――。幽霊を信じない探偵・獏田夢久(ばくたゆめひさ)は、屋敷で相次ぐ不審死の調査を頼まれる。さまざまな理由でその家に滞在した者たちは、一様に背筋の凍る怪異に見舞われた上、恐ろしい死に直面する。屋敷における怪異の歴史を綴ったルポ。その中に謎を解く手がかりがあるのだろうか。調査に乗り出す獏田を待ち受ける、意外な真相とは――? 「最恐の幽霊屋敷」はなぜ生まれたのか、そして、何が屋敷を「最恐」にしたのか。恐ろしい真実がいま明かされる。

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ここ最近で僕のお気に入り作家として急上昇したのが大島清昭さんです。

そんな大島さんが『最恐』なんて銘打った作品が面白くないわけがなく、タイトル・表紙・内容と三拍子揃った名作でした。

屋敷で起こる恐怖があり、その理由を解き明かす上でのミステリがあり、ホラーミステリとしてのバランスもさすがです。

ボリュームもかなりあるので、手軽ではありませんが、ホラー好きもミステリ好きも納得できる一冊ではないでしょうか。

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第2位『恐怖とSF』

何度目かのブームを迎えているホラーシーンへのSFからの回答。日本SF作家クラブ会長・井上雅彦が提示する未知なる恐怖21篇。

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恐怖とは何か。SFとは何か。

そこからテーマをもとに二十一の作品が選ばれているのですが、とても一つのテーマで集まったとは思えないほど様々な作品が収録されています。

しかし共通していることはどれも面白く、恐怖とSFについてしっかり描いているということです。

有名な作家さんもいれば、名前を聞いたこともなかった人もいて、本書だけで終わらず、次の読者に繋がるところもグッドでした。

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第1位『さかさ星』

数百年続く、凄惨なる呪いの戦い――。至高の恐怖と異形の謎に挑め。

戦国時代から続く名家・福森家の屋敷で起きた一家惨殺事件。死体はいずれも人間離れした凄惨な手口で破壊されており、屋敷には何かの儀式を行ったかのような痕跡が残されていた。福森家と親戚関係の中村亮太は、ある理由から霊能者の賀茂禮子と共に屋敷を訪れ、事件の調査を行うことになる。賀茂によれば、福森家が収集した名宝・名品の数々が実は恐るべき呪物であり、そのいずれか一つが事件を引き起こしたという。賀茂の話を信じきれない亮太だったが、呪物が巻き起こす超常的な事象を目にしたことで危機を感じ始める。さらに一家の生き残りの子供たちにも呪いの魔の手が……。一家を襲った真の呪物は? そして誰が何のために呪物を仕掛けたのか? 数百年続く「呪い」の恐怖を描く特級長編ホラー。

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2025年1月に読んで、この作品を超える作品が今年出てくるか?と思いながら読んだことを今でも鮮明に覚えています。

貴志祐介さんの作品はスケールはもちろんのこと、こちらのキャパシティを考慮していないような質量を有していて、本書もその一冊です。

人智を超える怖さはもちろんのこと、それに対抗する人間同士でも争いや騙し合いがあり、一時たりとも気は抜けません。

読むだけでこちらも呪われそうな呪物感があり、しかも本書で完結しているわけではなく、続編があるだろうと予想できる終わり方をしています。

完結まで時間がかかりそうですが、それが読めるのであれば二十年は待てるなと思ってしまいました。

それくらいの作品なので、この記事を読んだ人に全員に読んでほしいくらいです。

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おわりに

一年を振り返り、今年もホラーが充実した一年でした。

昨年と比べても自分の読む作品の裾野が広がってきていて、読めば読むほど読み切れないほどの作品が出てくるのだから嬉しい悲鳴です。

あと数年は間違いなく自分の中でこのブームが続くと思うので、後悔のないようきっちりやり切りたいと思います。

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