『ファミリーランド』あらすじとネタバレ感想!家族にまつわるホラーが堪能できる短編集
ホラー小説大賞&日本推理作家協会賞受賞作家が、令和元年にお届けする最も恐いSF小説集。スマートデバイスで嫁を監視する姑、高級ブランド化する金髪碧眼のデザイナーズチャイルドと育児ハザード、次世代型婚活サイトとビジネス婚に待ち受ける陥穽、自律型看護ロボットを溺愛する娘と母親の対決…。ホラーとミステリ、両ジャンルの若き旗手たる著者が克明に描く、明るい未来を待ち望むすべての家族に捧げる、素晴らしき悪夢。
「BOOK」データベースより
家族をテーマにした澤村伊智さんの作品。
近未来にあり得るかもしれない、様々な家族の形が描かれています。
フィクションとしての怖さと、起こりえるかもしれないという身近な怖さ。
家族の良さだけでない、負の一面が印象的です。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
コンピューターお義母さん
石嶺恵美は家族に悩みを抱えていました。
それは義母である咲子の存在です。
咲子は介護施設に入所しているので同居しているわけではありませんが、代わりに家中の家電と自身のデバイスをリンクさせ、恵美たちの生活を逐一観察していました。
家事や恵美の息子・健斗の教育のことはもちろんのこと、夫婦の営みさえも把握して口を出してきます。
恵美は咲子の異常性を夫である泰明に訴えても許容してほしいと一点張りで、頼りになりません。
次第にストレスが募る中、恵美はパート先のスーパーの同僚・佐川千春にこのことについて愚痴をこぼすことで気分転換をしていましたが、咲子の魔の手はここにまで伸びてきます。
翼の折れた金魚
この世界では二十年前からコキュニアという物質を投与する新たな生殖方法が主流となっていました。
男女共にコキュニアを投与して性行為を実施することで、生まれてくる子どもの知能が劇的に上がることが分かっています。
コキュニアの効果が出ている証として、生まれてくる子どもは金髪碧眼となり、今や学校の生徒のほとんどがそれでした。
逆に黒髪黒目の子どもは『デキオ・デキコ』と呼ばれ、無計画に子どもを作った親は非難されます。
優秀な子どもが多く生まれて世の中として発展すると思われましたが、そこには新たな問題が発生していました。
マリッジ・サバイバー
俺は三十五歳にして結婚を考えていました。
好きな相手がいるわけではなく、会社で出世して、所帯を持って健康を得たいからでした。
結婚相手を探すために俺が利用したのは、日本最大級のマッチングサイト・エニシでした。
ところが、俺は登録の段階で世間における格差を思い知ります。
エニシでは登録情報によって家族関係に問題を持つ者、ネット環境に慣れ親しんでいないものを弾くようになっていて、俺はなんとか登録できたものの、両親との間に問題を抱えていたため評価は決して高いものではありませんでした。
それでも俺は蒲原静香という女性と出会い、結婚することになりますが、これが思いがけない結果を生み出します。
サヨナキが飛んだ日
土川雪江は娘の瑠奈を殺害して、精神科医との面談に臨んでいました。
その中で雪江は、殺害の動機として自宅介護用小型飛行ロボット『サヨナキ』の存在を挙げます。
サヨナキはその家に住む人間の体調を管理し、必要があれば処置、薬剤を投与して健康に寄与します。
これによって簡単な怪我・病気であれば病院に行かずとも対処できるようになりました。
多くの人間によって利益をもたらしたサヨナキですが、なぜ殺害の動機になってしまったのか。
それが雪江の口から語られます。
今夜宇宙船(ふね)の見える丘に
世間では赤く光りながら飛び回る奇妙な物体が度々目撃されていて、ニュースにもなっています。
そんな中、伸一は父親と二人で暮らしていました。
父親は七十歳を過ぎて譫妄による理解不能な行動を何度も繰り返し、その度に伸一は忍耐強く介護していました。
さらに無職のため収入はなく、頼みの綱だった両親の貯金は早々に尽きてしまいます。
限界を悟った伸一が実行したのは、世間で認められた、けれども非人道的な行為でした。
愛を語るより左記のとおり執り行う
この時代では葬儀という概念が大きく変わり、葬儀場ではなくどこで行っても良いことになっていました。
利便性が大きく向上した一方で、故人を偲ぶという大事な一面は薄れつつありました。
そんな中、映像制作のディレクターを務める和也は思ったような成果を出せず、進退を迫られていました。
和也は辞めるしかない状況に追いやられていましたが、後輩の多田の言葉で伝統的な葬儀を行い、それをドキュメントとして撮影する企画を思いつきます。
すぐに了承され和也は仕事に取り組みますが、伝統的な葬儀は彼の知るものとは大きくかけ離れたものでした。
感想
笑えないリアリティ
本書は家族を題材にしたSF小説ですが、角川ホラー文庫から出ているように、ホラーという一面も強く持っています。
未来になって技術がどれだけ発達しても、家族は変わらない。
それは良くも悪くもで、本書で取り上げられている多くが悪い一面です。
オンラインでどこにいてもその場所の状況が把握できるようになったことで、嫁姑問題が生れる。
薬剤を使った子作りが、実は新たな問題を孕んでいた。
直接的な恐怖ではありませんが、読んでその重大性に気が付くと、背筋が凍るような思いがしました。
しかもフィクションと笑い飛ばそうとしても、今の技術革新のペースからいくと、自分が生きている間にこんな時代が訪れてしまうかもしれない。
そう思うと笑い飛ばすことはできず、さらなる恐怖を味わうことになりました。
考えさせられる未来
一方で、家族の持つ良い面も本書では少なからず描かれています。
特に最後の『愛を語るより左記のとおり執り行う』にそれが表れていて、素晴らしい余韻を残してくれました。
技術の進歩によって利便性のみを追求するのか。
家族のあり方を見つめ直して、必要なものは不便でも本質を大事にして残すのか。
僕らは今、その分岐路に立っているのではと考えずにはいられませんでした。
個人的には家族の形が以前とは変わってきていますが、面倒で手間でもある程度は古き良き形を残してよいのではないかと思います。
その不自由さこそが家族の良さであり、求めていることなのですから。
ただ若い世代の方々の声を聞いているとそうは感じていない人も多くなっている印象があるので、今後も世代を超えて議論していくのも楽しいのではないでしょうか。
おわりに
澤村さんのホラーはやっぱり良い。
それが再確認できる一冊でした。
『ぼぎわんが、来る』が好きで彼を知った人からすると、求めているものと違う印象があるかもしれませんが、そんなことは途中からどうでもよくなるくらい面白いので、ぜひ堪能してください。
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