ホラー
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『漆黒の慕情』あらすじとネタバレ感想!美青年につきまとう心霊現象に迫るシリーズ第二弾

harutoautumn
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塾講師の敏彦は、誰もが認める美青年。ある日を境に、女性ストーカーと異様な現象に悩まされるようになった彼は、佐々木事務所を訪れる。時同じくして、小学生たちの間に奇妙な都市伝説が広がっていた。

Amazon商品ページより

『異端の祝祭』から始まった佐々木事務所シリーズの第二弾である本書。

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前作ではカルト宗教が話の核にありましたが、本書ではストーカーと学校の七不思議が独立して話を膨らませ、やがて繋がりを持ちます。

前作で築いたキャラクターを基礎に置きつつも、新たな面からホラーを描いていて、気が付いたら一気読みでした。

本書に対する芦花公園さんへのインタビューはこちら。

「デビュー前夜」Vol.2  『漆黒の慕情』芦花公園インタビュー

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

ストーカー

片山敏彦は自他共に認める美青年で、男女問わず多くの人間を虜にしてきました。

一か月前、片山は何者かの不快な視線を感じるようになり、同時にその人物が書いたと思われる手紙が届くようになります。

片山は手紙を無視していましたが、やがて手紙の主は文面で感情をあらわにし、明らかに異常であることを見せつけます。

手紙の主は片山の妻であると思い込んでいることから、女性と推測されます。

やがてその人物の攻撃性は片山を狙う女性に向けられ、それをかばった片山は大けがを負ってしまいます。

自分の手に負えないと判断した片山は、高校生時代に出会った佐々木るみを頼ることにします。

学校の七不思議

青山幸喜の実家は教会で、教会の信者の子どもである七菜香から相談を受けます。

七菜香の通う小学校では学校の七不思議が流行っていて、生徒たちの間で噂されていました。

七つ目は特に危険で、ミキという生徒が一部の生徒にその内容を教えます。

七つ目は『ハルコさん』という存在に関係するもので、この話を聞いたら一週間以内に誰かに話さないと、夢の中にハルコさんが現れるのだといいます。

七菜香は誰かを犠牲にしたくなくてこの話をせず、すでに夢の中にハルコさんが現れていました。

依頼

心霊現象を取り扱うるみのもとに、片山と七菜香の相談が同時に舞い込みます。

両者の話を聞くうちに共通点が浮かび上がり、何らかの関連性があることがうかがえます。

るみの対応によって被害はある程度抑えられたように思われましたが、本当の恐怖はこれからでした。

感想

離れない恐怖

ごりごりごり。

本書を読み終えると、この文字面だけで急に怖くなります。

芦花さんはとにかく擬音を使って恐怖を演出するのがうまく、本書でもそれが遺憾なく発揮されています。

心霊現象には人智を超えた部分が多くありますが、それでもルールの下で活動しているので、対処方法はそれなりにあります。

なのでいきなり襲われて、あっという間に命を落とすということはありません。

しかし、人間の隙を狙うかのように常につきまとい、余裕の笑みを見せて人間を恐怖に陥れます。

精神力を少しずつ削られるような焦燥感。

本書を読んで得られるこの感覚はもう最高でした。

秀逸なタイトル

慕情とは、特に異性を慕う気持ちのことをいいます。

基本的に人から慕われて悪い気はしないと思います。

しかし、本書において慕ってくるのは心霊現象であり、歓迎どころか迷惑でしかありません。

だから漆黒がついて、『漆黒の慕情』というタイトルがつけられています。

読み始める前は気にも留めていなかったタイトルですが、読み終わるとまさにその通りだと思える。

そんなタイトルです。

味方も信用できない

本書で怖いのは心霊現象だけではありません。

登場人物のほとんどが異常な部分を持ち、隠しているそれが垣間見える瞬間、その人が別人になってしまったかのような不安に襲われます。

特にるみについて、前作で彼女の生い立ちについてある程度明かされていますが、本書ではさらに新たな事実が発覚します。

味方であることは疑いませんが、それでも青山みたいに全面的に信用することはできない。

こんな期待と不安を抱かせてくれる主人公はこれまでいませんでした。

芦花さんはインタビューで、るみが読者に嫌われないか心配だとコメントされていたので、その意味が本書を読んでよく分かりました。

読んでいる側として心臓に悪いですが、こんなドキドキもたまらないと思う自分がいるので、中毒性は抜群です。

おわりに

多大なる期待をしてしまう芦花さんの作品ですが、本書はそんな期待をいともたやすく超えてくれました。

僕が今最も新作を望むのは芦花さんだな、と本書を読んで確信しました。

次の話はこちら。

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