宮部みゆき『レベル7』あらすじとネタバレ感想!腕に浮かび上がるLevel7の謎に迫るサスペンス
レベル7まで行ったら戻れない―。謎の言葉を残して失踪した女子高生。記憶を全て失って目覚めた若い男女の腕に浮かび上がった「Level7」の文字。少女の行方を探すカウンセラーと自分たちが何者なのかを調べる二人。二つの追跡行はやがて交錯し、思いもかけない凶悪な殺人事件へと導いていく。ツイストに次ぐツイスト、緊迫の四日間。気鋭のミステリー作家が放つ力作長編。
「BOOK」データベースより
宮部みゆきさんの作品の中でも人気の高い初期長編である本書。
ゲームか何かと思われるタイトルから想像できないようなサスペンス長編で、少しずつ真実に近づくワクワクがたまりませんでした。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
記憶喪失の男女
若い男女は、見知らぬマンションの一室で目を覚まします。
どちらも自分の名前すら覚えていない、いわゆる記憶喪失の状態でした。
日常に登場する固有名詞すら思い出すまでに時間がかかる。
腕には『Level7』から始まる謎の数字と記号。
部屋には大金に拳銃、血液が付着したと思われるタオル。
どれをとっても異常な状況です。
二人は少しずつ行動する中で、隣の部屋に住む三枝にこの状況を伝えることになります。
三枝は報酬を求める代わりに二人に雇われるという形で協力することになり、男女の正体や置かれた状況について調査を始めます。
行方不明の少女
真行寺悦子は夫を亡くした後、『ネバーランド』という電話駆け込み寺のような場所で働いていました。
悦子のもとには様々な年代、性別の人から電話がかかってきますが、その中で貝原みさおという少女と知り合い、友達になります。
ところがみさおは突然行方不明になり、残された彼女の日記には『レベル7』の文字がありました。
誰に聞いてもその言葉の意味を分かる者はいませんが、ある日、みさおから助けを求める電話があり、悦子は誰にも頼らず彼女を助ける決心をします。
レベル7
若い男女、そして悦子の両者を繋ぐのは『レベル7』という謎の言葉です。
両者は別々のアプローチから一つの精神科クリニックに行きつきます。
そこから『幸山荘事件』という世間を賑わせた殺人事件が浮上し、物語は記憶喪失、行方不明からは想像もつかない方向に展開していきます。
やがて若い男女と悦子は交わり、一つの大きな真実に辿り着きます。
感想
予測できない展開の数々
おそらくわざとだと思いますが、本書の文庫は解説込みで777ページと、タイトルにある『7』にちなんだページ数となっています。
ずっしりとした重みに読み始めるまでは、読書に慣れている人でも多少気後れしてしまうかもしれません。
しかし、ご安心ください。
一度読み始めると謎が謎を呼び、先が知りたいとページをめくる手は止まらず、気が付けばあっという間に読み終わっています。
この飽きさせない構成は、さすが宮部さんという感じです。
また視点が主に二つに分かれているので、交わりそうにない二つのグループがいつぶつかるのだろうとワクワクしながら読めます。
『火車』を読んだ時も思いましたが、宮部さんの描くミステリ、サスペンスは面白いだけでなく、二十年以上経っても色あせない魅力があります。
個人的に結末がもう一つ
総合的には大満足の一冊です。
ただ個人的にですが、レベル7という言葉に対して過剰なほどの期待をしていたので、その真相がややあっさりしていたかなという気がします。
導入の引き込み方が素晴らしかっただけに、少しだけ残念でした。
またレベル7に関するところでリアリティに欠ける部分が見られ、そうはならないだろうと時折現実に戻ってしまうことがありました。
評価の分かれる点だと思います。
おわりに
宮部さんの掴んで離さないテクニックは素晴らしく、読み切れるのだろうかと不安に思うことなくあっという間に読めてしまいました。
古くささは全くないので、本書が発売された当時生まれていない人でも間違いなく楽しめます。
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