伊坂幸太郎
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伊坂幸太郎『ラッシュライフ』あらすじとネタバレ感想!四つの物語が絡み合う現代の寓話

harutoautumn
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泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場――。並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがる。

Amazon商品ページより

伊坂幸太郎さんの初期作品の一つである本書。

様々な境遇の登場人物がそれぞれ視点となって多角的に物語が進み、その繋がりがやがて見えてくるという手法をとっていて、今では伊坂さんの魅力の一つとなっています。

最後まで展開が読めないのでやきもきするかもしれませんが、油断していると真実が明らかになってもついていけないので、しっかり最後まで集中して読んでもらえればと思います。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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タイトルの意味

内容に入る前に、タイトルの意味について。

本書において『ラッシュライフ』とは『豊潤な人生』を意味し、物語の最後で明言されています。

タイトルの英語表記だと『a life』となっています。

つい慌ただしいという意味合いの『rush』を連想しがちですが、本書で用いられているのは『lush』で、『豊潤な、ぜいたくな』という意味を持ちます。

物語に入る前に四つの『ラッシュ』の意味が添えられているので、物語を読んではじめて一つの意味に限定できるよう考えられているのかもしれません。

あらすじ

本書には複数の視点が登場し、その中でも以下の四つの視点がメインになっています。

泥棒

泥棒の黒澤のパート。

伊坂ファンであれば、この名前を見て思わずニヤリとしてしまうはず。

黒澤は仙台でターゲットを見定めては盗みを働いていました。

そんなある日、黒澤は盗みに入った家でかつての同級生と再会します。

神への憧れ

河原崎は父親に自殺され、その後から高橋という男の信仰者になります。

三年前、高橋は警察が知らない事件の真相を言い当て、現代のシャーロック・ホームズなどと呼ばれて一気に有名になり、それから信者も爆発的に増えています。

ある日、河原崎は高橋の側近である塚本にとある話を持ち掛けられます。

それは神の解体でした。

塚本たち幹部は高橋が最近変わってしまったことから彼の殺害を決意。

殺害後、死体を調べることで神のようにふるまう高橋の秘密を知ろうとしていました。

なし崩し的にこの計画に参加することになった河原崎は、とんでもない真実を知ることになります。

不倫

女性カウンセラーの京子はサッカー選手の青山と不倫関係にあり、どうやって夫と離婚しようか考えていました。

そうしていたところ、夫から離婚を切り出され、京子は図らずして己の目的を一つ達成することに成功します。

あとは、青山が妻と離婚するだけ。

しかし青山の妻は離婚をするつもりはなく、京子と青山は青山妻を殺害するための計画を実行に移します。

失った男性

豊田は二年前に離婚し、仕事を首になっていました。

再就職しようにも四十社から不採用を言い渡され、将来の先が見えない状況にあります。

そんな時、豊田は駅前で野良犬を見つけ、なぜか連れて帰ることに。

さらに拳銃を手に入れることになります。

無職が犬と拳銃を手に入れて、何が起こるのか。

感想

先の読めない展開

本書はまず、最初の段階で四つの物語の関連性が全く見えていません。

しかも物語一つ一つも興味をそそられる内容で、これで面白くないはずがありません。

中盤から終盤にかけて次第に各物語の繋がりが見えてくるのですが、そう絡めてくるのかと感心せずにはいられませんでした。

自分の視野が狭いというか、とにかくあり得ないことが小説では起こるのだと改めて思いました。

この複雑な構成を全て見抜くのはかなり至難の業ではないでしょうか。

その一方で、物語をしっかり読んでいないと、種明かしされてもいまいち飲み込めない部分が出てきてしまいます。

最後まで読むと何とも言えない爽快感を味わえるので、ぜひ最初から最後まで気を抜かずに読んでみてください。

ユーモアあふれる会話

これは伊坂さんの作品に共通していえることですが、登場人物がとにかく魅力的で、彼らの会話が単純に楽しいです。

さりげないけれど含蓄のある言葉だったり、良いことを言ってそうで大したことがなかったりと、至るところにユーモアが詰め込まれています。

性別や年齢、善も悪も関係なく魅力的というのはかなり珍しいので、それを楽しむためだけに本書を読むのもアリだと思います。

おわりに

初期作とは思えない完成度で、この頃から伊坂さんの魅力は発揮されていたのだと分かります。

他作品と合わせて読むことで伊坂ワールドが広がる仕様になっているので、ぜひ他の作品にも挑戦してみてください。

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